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「象とまつ毛」出演者紹介(長津結一郎・研究者)

こんにちは。TAPや取手市との関係を教えてください

高校卒業後、東京藝術大学の音楽環境創造科に進学したんですが、当時はキャンパスが取手だったので、4年間、取手に住んでいました。アートマネジメントに興味があってTAPに通うようになり、小山田徹さんが手がけた「取手蛍輪」、藤浩志さんや野村誠さんのプロジェクト、児童画展などに参加しました。北千住に音楽環境創造科のキャンパスが移ってからもちょくちょくTAPには関わっていました。今回、演劇公演に関わることになって、15年ぶりくらいに昔のことを思い出しています。

今回の演劇作品の中で長津さんが作っているシーンのことを教えてください。

作品を作る人(アーティスト)と一緒に仕事をすることはあるけれど、自分はアーティストではないので、シーンを作るにはどうしたら良いかと考え続けています。VIVAがあるアトレの4階は、ボックスヒルだった時には島村楽器があって、お店自体にもそこにあったスタジオにも通っていました。そして今回の公演はその跡地に出来たVIVAで行うので、学生時代の楽しかった歴史と必然的に向き合わざるを得なくなり、楽しいことだけじゃなく、しんどかったことや、いろんなことを思い出すようになりました。TAPに関わっていた時は、誰かの意志が強く働きづらい瞬間とそうでない瞬間が入り混じっていて、そんな複雑な合意形成を通じて物事が進んでいく傾向があると感じていましたし、それに居心地の悪さを感じた時もありました。そういった二面性があることの豊かさや面白さをシーンとして取り入れられないかと考えています。阿部健一さんや齋藤優衣さんたちが丁寧にTAPのこれまでの歴史を関係者の人たちから聞き取っていて、その話を教えてもらう中で感じ取ったものが、全国のアートプロジェクト界隈に通底する部分もあると感じていて、そういう気持ちも何か自分の立ち位置で引き取れないかなと考えています。

稽古場の雰囲気はいかがですか?

出演する側として演劇に関わるのは初めてですが、こんなにも、役割が違うと、こんなにもどかしい気持ちになるんだと感じました。今回の演劇の作り方はわりと特殊で、脚本という脚本はないし、演出のようなものも決まっていない。あるのは膨大なTAPの25年間の歴史で、それに向き合いながら作品を作っています。だから、もっと早く形に出来ないんだろうかという思いと、このプロセスを大事にしたい、という気持ちがせめぎあっています。鮮明に覚えているのは、夏の集中合宿の時に遠藤由子さんがラジオのシーンを作りたいと言って、色々と試すんだけど、じゃあこういうシーンにしましょう、という結論は出なかったんです。その時に遠藤由子さんがすごく憮然とした顔をしていたことです。このあとまとまった時間で稽古をするのは3月まで予定していなかったので、遠藤さんは当然、今回で何かが「決まる」と思っていたんだろうと。演出家という役割の人を敢えて決めていないし、集団創作だから、遠藤さんもそりゃ戸惑うよな、とその時は思いました。でも3月に入ったら、がっつりと創作をする期間が設けられているので、なんとかまとまるだろうと今は思っています。

タイトルはどうやって決まったんですか?

昨年の秋にクリエーションメンバーのうち、何人かで集まってタイトルについて話す機会があり、そのときの案をもとに全員で決めたものです。さっきもお話しましたが、今回の演劇作品はちょっと特殊な創り方をしているので、はっきりとした「タイトル」を作ることと、クリエーションメンバーがちょっとずつ太い丸太を掘り込むように稽古を進める行為自体は、真逆な訳です。だからタイトルを決めると、それを前提としたものを作らなければならなくなるのが、すごく悩ましかったです。しかしながら、宣伝をするためには、タイトルを決めなければならず、その時点までのことを言い当てたのが「象とまつ毛」でした。一つの目標に向かってまとまる演劇作品になるとは思えなかったし、見る人によっても見え方が違う、やる人によっても違う。そんな作品になりそうだなと思って、このタイトルになったと思っています。

最後にお客さんに向けてメッセージをお願いします。

アートプロジェクトが全国各地に起こり始めてからずいぶん時がたち、継承をあれこれ考えるプロジェクトもあれば、店じまいしたプロジェクトもたくさんあります。現在のTAPはわかりやすく展覧会やイベントを仕掛けるというよりは、日々の生活の中でプロジェクトを実践し続けています。25周年記念演劇をつくるなかでは、その特性からか、近すぎて見えないTAPと、遠すぎて見えないTAPの、両方に直面しました。なので、いろいろな方法を使ってそれを見ようとしてみる時間になりそうだと思います。アートプロジェクトのこれからを考えるうえで、答えは見つからない代わりに、なにかしらの謎が投げかけられる演劇の時間になると思います。

(インタビュー:奥村)


【開催概要】
公演名:取手アートプロジェクト25周年記念公演「象とまつ毛」
日時:
3月20日(木祝) ①12時30分 ②17時30分     
3月21日(金) ③13時30分 ④18時30分     
3月22日(土) ⑤12時30分 ⑥17時30分
3月23日(日) ⑦14時(公演後トーク&バータイムあり)
会場:たいけん美じゅつ場VIVA(取手市中央町2-5 アトレ取手4階)
上演時間:90分(予定)
出演者:秋田貴雄 阿部健一 遠藤由子 大内伸輔 小林えつ 齋藤優衣
富塚絵美 長津結一郎 伸恵 羽原康恵 羊屋白玉 リンノスケ(五十音順)
主催:取手アートプロジェクト実行委員会/特定非営利活動法人取手アートプロジェクトオフィス
【チケット情報】全席自由
料金:
一般前売り 3,000円 
当日 3,300円    
取手市在住・在学・在勤 2,000円
U25または大学生 1,500円(大学院生含む)
U18 500円
(中学生以下は無料ですが、席の予約は必要です。)
<購入方法>
○直接購入: たいけん美じゅつ場VIVA
(午前11時から午後6時 休み:水・第一日曜)
○オンライン予約: 以下カンフェティのURLから予約(当日精算)
https://torioki.confetti-web.com/form/3654


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