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「死悔いのソアレ」 拝読しました

長い戦争が終わったファンタジー世界……。

死体漁りをしていた生意気な子どもソルが出会ったのは、豪快な女ソアレだった。

ソルは沢山の死が溢れる世界で、帰ってこなかった死体や遺品を、願った人に届ける回収屋の仕事をしているソアレの行動に疑問を抱く。

しかし、そんなソアレこそ30年前の戦争を勝利に導いた英雄――死んでも尚、生きた人間として生き続ける特異な存在だった……。

死と向き合う事をやめ、生きる事を選んだソルと
生きる事をやめ、死と向き合う事を選んだソアレが出会う時。

新たな扉が開き始める。

これは生と死と、命に向き合う物語……。

回収屋ファンタジーここに開幕!

死悔いのソアレより

ハートの軍勢とクラブの軍勢による戦い。その戦いを終わらせたのはハートの軍勢のある兵士でした。陽光のような長い金髪、生気漲る肌に胸元にハートのマークが刻まれた鎧を着た女性。彼女は人の背程もある大剣を右肩に担いだまま、右耳につけた三日月のイヤリングを風になびかせ突き進んでいく……彼女の名はソアレ・ツバキ。

戦いの集結から随分と時間が経った森の中。鎧を着た兵士が何人も倒れているその森で、亡骸を漁るボロ布を纏った人物。ブツブツ呟きながら金品を漁るその人物がふと気がつくと周りを狼たちに取り囲まれていたのでした。全体絶命のピンチ! その時助けに入ったのは、陽光のような長い金髪に、胸元に穴が空いた鎧。腰の2本の鞘に小振りの剣を戻した彼女の耳には、三日月のイヤリングを着けた女性。彼女の肌は異常なほどに白く、そして生気がありませんでした。

復讐のために死体を漁る子供、ソル・イリノが回収屋(サルベージ)を名乗る女性、ソアレ・ツバキが出会い、最初は仕方なく同行しますが、やがて少しずつ二人の心の距離は縮まって行きます。やがてソアレがアンデッドであることを知ったソル。彼女(彼?)がソアレと接すことで何を感じ、何を学んでいくのか……荒廃した世界で「生きる」ことの意味や重みを問うファンタジー。


大きな人の背丈程もある剣を振るうソアレがまず格好良くて、所々に描写される彼女の圧倒的な戦闘能力にゾクゾクしました。しかし彼女はアンデッド。物語の中で時々描かれる過去のシーンが、ソルやソアレに関する真実を少しずつ明かしてくれます。

そして時々読者に問いかけられる「生とは何なのか」「死とは何なのか」と言う疑問。復讐のために生きてきたソルは、その復讐を果たしたことと、アンデッドであるソアレを通して徐々に「生きること」を意識し始めます。そしてソアレもまたソルと共に行動することで、何かを感じている様子。

ソアレがどうしてアンデッドになったのか、強力な兵士であるにも関わらずどうして回収屋をしているのか、そしてこの後二人はどうなっていくのか。今回は3話までだったので物語の核心は語られないままですが、この3話だけでも世界観は十分伝わってきました。

二人がソアレの味方であるはずのハートの兵士たちに捕まってしまうところで終わってしまい、また3話の登場人物である貴族令嬢の問題も未解決。4話目以降が非常に気になります! メインテーマが「生と死」なので非常に壮大な物語になりそうですが、続きがあれば是非読みたくなる、そんなストーリーでした。

異世界転生ものではなく、正統派なファンタジーが好きな方には特にオススメ♪