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「私は怪人二十面相」 拝読しました

本日。あなたを、お連れするのは欲望と自意識の世界。「モテたい」「推しがいる」「金持ちになりたい」「有名になりたい」……。
そんな欲があれば素質は十分。
さぁ、あなたも今日から怪人二十面相。

私は怪人二十面相より

ZIPの水卜アナになりきる作者様。「今日も日本中に元気をお届け!」そんな決意をしてスタジをに入る(妄想)。爽やかな笑顔にゲストへの気配り。なめらかな滑舌で番組を進行する。そしてハートを手で描いて無事に本日の放送終了(妄想)。

家に帰ればイケメンの倫也クンが絶品だし巻き卵を用意してまっていてくれる、甘い新婚生活。ああ……最高!(妄想)

そこで鳴る10分を知らせるアラーム。途端に作者様は妄想と現実の境を飛び越え現実へ。ニヤけた顔を引き締め、いつもの自分に戻り、完全犯罪を自覚する。

「誰も私が数分前まで水卜ちゃんだったとは思うまい」


ベテランのプロ妄想家(笑)の作者様が、この妄想の境地に至るまでのエッセイ。しかしこの境地に至るまでには長い道のりがあり、「10分」の妄想限界を自ら設けたのは高2の夏。部活の練習試合で大敗を喫し意気消沈の中、帰りの電車内で妄想を楽しんでいると、お友達に言われたそう。

「ちくわちゃんって、不思議だよね」

そのお友達曰く『常に地面から3センチくらい浮いてる感じがする』『悲しいことが起きた後でも、なんか違う世界線にいる感じ』らしい、良い意味で。そしてその時、自身のプロ意識不足を自覚された作者様は、より短時間で、的確に妄想世界と現実世界を行き来することを目指したそうな。

一見、とても面白おかしいストーリーながら、自分はどうなのか。確かに、妄想していることがある。私の場合はベッドに入って寝るまでのごく短い時間が多いかな。空を飛んだり、物語の主人公になってみたり、またはロックバンドの超絶ギタリストとか……なんだ、作者様と一緒じゃん! プロは目指してないですが(笑)、割とベテランな妄想家なのでした。

人は誰しも妄想するものだと思います。それが実現可能なことなのか、それとも今の自分とは全然違う他の誰かなのか……とにかく、「妄想なんて一度もしたことないよ!」なんて人の方が少ないハズ(いや、いないでしょう、そんな人)

思うに、妄想は軽い現実逃避の手段であり、心の栄養や癒やしであり、活力でもあると思うのです。大体小説なんて、妄想の賜物ですからね! 「妄想する間もないぐらい忙しい、元気がない」と言う人は、どこか肉体的にも精神的にも余裕を失っているのかも。

妄想ばかりしているのもどうかとは思いますが、作者様の様に時間を決めて、スパッと妄想と現実を行き来できる「プロ」を目指してみるのも面白いかも知れません。

さあ、あなたも今日から「怪人二十面相」。