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MMTへの誤解と財政破綻論の嘘 その5

その5

というか、まつわること。
金利について。

 自分のFacebookに書いた、経済学101の翻訳記事へのコメントの転載です。

https://www.facebook.com/100002534089583/posts/3546417768785991/?d=n

 引用はこちらの記事から。

https://econ101.jp/%e3%83%8e%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%82%b9%e3%83%9f%e3%82%b9%e3%80%8c%e6%96%b0%e3%81%97%e3%81%84%e3%83%9e%e3%82%af%e3%83%ad%e7%b5%8c%e6%b8%88%e5%ad%a6%ef%bc%9a%e3%80%8c%e3%81%bf%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ab/?fbclid=IwAR3H9LKaTv5r7_6kXTTgbHXd40ttmvcqaaDm6R1xFVNCyMUL2RGNP68Hnrk

MMT懐疑派の自嘲

>この前 Twitter でジョークをつぶやいた.この10年でマクロ経済学がどう変わったかってネタだ
・2010年のマクロ経済学: 「確率的均衡を定義する要因は右のとおりである―――消費経路(…),物価(…),賃金(…),政策の各種変数(…).政策変数には次のようなものがある(以下略)」
・2020年のマクロ経済学: 「みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお」

 身も蓋もねえ、、、
 外聞かなぐり捨てて、小僧でも言える事しか言えずに給料貰って、未だ何故金利が下落傾向なのかすら理解せんとは、気の毒過ぎて、とてもつっこめねえよ、、、(某格闘漫画の親父風。ちなみに、ノア・スミスはMMTにはまだ批判的。批判の内容はお粗末だったが、そんな彼でもこき下ろすのが主流経済学。)

 しかし悲しいかな、これが今の主流の現状の様で。
 これじゃあんまりなので、本当の最先端の一端と私が思う所を後で述べるが、それよりまず衝撃なのは、、、

> 「パンデミック対策で週600ドルの基礎所得給付プログラムで失業率が上がった」なんて主張を試みてはいる(あれで失業率は上がってないよ)

 え、週600ドルって、月2400ドル以上?月25万円以上ですか!?
 何だろうね、この日本とアメリカの落差は。
 さて、、、

金利は上がる?上げる?

> 圧倒的多数の共通見解は,「金利は低いし,しばらくの間ずっと下落傾向が続いているから,いまのところはもっと借り入れても安全だ」というところにおさまっている.将来になって金利が上がるかもしれない可能性については少しばかり懸念が言われているけれど,いつ・どんな理由で金利上昇が起こりうるのかって問いに関して理論がもちだされてはいない.

 MMTer ( #MMT #現代貨幣理論 の賛同者)にとっては自明だが、金利は中央銀行が差配出来るし、現にしている。
 その為のツールの一つが国債である。

もう少し丁寧に

 ここを書いてると長くなったので、下にずらして、金利の調整ツールの話の前に、まず最先端の話。

 主流派の、「みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお」まで退行した(それはそれで正しいのだが、雑すぎて弊害が大きい)話では、次の様な問題が出る。

 みんなに配られたお金で、買う物があるのか(インフレ率)。

 物があったとして、支払われたお金は、既にある格差を生み出す仕組みに絡め取られ、皆んなに配られた分のお金が、最終的に一握りの人々の懐に集まる(労働分配率の低下と、資本家のロイヤリティや株主配当などの不労所得での格差拡大)。

 欲望を刺激して、遠からずゴミになるものを買わせ、作らせ、環境に負荷を蓄積させる(環境破壊)。等等。

賢い支出

 なので、単に赤字支出を増やせ、と言うのではなく、何に振り向けるかが大事。

 国民の生命と財産を守り(社会保障・安全保障)供給能力の維持拡大(インフラ整備・教育投資)に資すると共に、環境への負荷を減らす仕組みづくり(#グリーンニューディール )に支出しなければならない。
 特に、社会保障への支出は #ケアニューディール と私が勝手に呼んでいるが、ケア労働という生命再生産などの、比較的資源を用いないサービスへの価値の見直しは、物や数字の蒐集を生産と結び付ける現代社会の悪癖から人々を解き、格差の是正にもなる。

介護保険のブラック

 社会保険制度の、特に介護保険はどうも黒字運用らしいが、制度を利用する人がいないのではなく、利用したいのにヘルパーが足りないから使えてないだけである。
 ヘルパーが足りないのは公定価格(介護報酬)の低さ故なので、あえて安くして人が集まらないようにして、使えない様にして、保険支払いを免れているわけだ。
 それで幸せになる人はおらず、むしろ不幸を再生産する。
 政府の支出は、こういう所へ向けられなければならない。

 単に財政拡大すれば良い。というものではないのだ。

 当然、累進強化や分離課税廃止も進めなければならない。

 こんな場末の高卒ヘルパーに分かる話が分からない訳でもなかろうし、分かってないのに急に掌を返すのも変なので、本当は分かってるんだろうけどな。
 小難しくネジ繰り回して、いつまでも正解を出さないでおくと、いつまでもそれで食っていけるからだろうか。
もし本当に、分からないなら、その場を引いた方が世の為だろう。

改めて、金利の事

 で、なぜ金利が上がらないか。

 そもそも金利というのは、日銀があずかる準備預金へ付ける金利と、準備預金を銀行間で貸し借りする時の金利と、国債の金利と、銀行預金の貸出し金利と、段階がある。

 日銀の準備預金への付利も、準備預金が三層に分かれていて、それぞれに違う利率を当てている。
 今はプラスとゼロとマイナスがその三層にそれぞれ当てられている。

 金利の水準はこの様にして準備預金への付利でも十分に操作できる。

 例えば、超過準備預金の付利が1%の時(なお、今は0.1%)それを国債を買うなり、他行に貸すなりする時は、1%以上の金利を取らないと損になる。
 A銀行が、1.1%の金利でB銀行から準備預金を借りた場合(借りると言うのは、つまり準備率に足りなくなりそうだから借りるのだが)、A銀行が新たに顧客に貸付をするには、1.1%より大きい、例えば1.2%とか1.3%とかで貸さないと、儲けにならないし、貸し倒れるリスクの費用にもならない。

 そもそも、銀行預金を貸す場合、借り手はその借りた預金を振り込みや引き出しして、支払いに使うのだ。
 振込先が他行の場合もある。
 他行に振り込むと、振り込んだ銀行預金(自行負債)と同額の準備預金(自行資産)が流出する。
 引き出しの場合は、必ず銀行預金と準備預金は同額減る。

 なので、せっかく借りた準備預金が無くなるのだ。金利が上がるのは当然。

 ところが、である。

 国債は元本割れはなく、日銀が買いオペする時は、実際の金利より高く買う。
 なので、国債金利は、預金貸し出しの金利よりは低くなる。

 更に更に、、、

 政府が国債を発行すると、銀行の保有する準備預金は一旦減り、代わりに保有する国債が増える。
政府は準備預金を国庫に得て、これが政府預金になるが、そもそも国債を発行するのは支出する為であるので、政府預金を支出する。

 支出先は、実は銀行の日銀当座であるので、これは銀行に準備預金が戻ってくることになる(銀行は政府から来た準備預金と同額の銀行預金を、政府の指示する口座に発行する。例えば給付金とか、事業費とか)。
 その上、先に買った国債は持ったままで、金利が付く。

 更に更に更に、、、

 ここで日銀が買いオペで銀行保有の国債を買い取り、代わりに新たな日銀当座預金を銀行の日銀当座に発行すると、準備預金は最初よりも、国債の分だけ、増えるのだ!

 さて、、、

 先に説明した通り、銀行間の準備預金の貸し出し金利は、そもそも準備預金が足りなくなるから値が付くのだが、こうして国債発行と買いオペで準備預金が増えると、貸し借りの需要が減るので、そんなに金利は高く付かないのだ。

 しかも、日銀が元々の準備預金への付利を低くするなら、そこに上乗せされる金利も、土台が低くなった分、やはり引きずられて下がる。
 国債の金利も同じく下がる。

 なお、いくら国債や準備預金の金利が下がろうが、民間企業が設備投資のためなどで、銀行預金を借りようとしない限り、銀行預金の金利も上がりようがない。

上がるのでなく、上げる

 さて、こうして国債発行と買いオペで金利は下がるのだが(国債発行を伴わない政府の赤字支出でもそうなる)、金利を上げるには(そう、どうして上がるのか、ではなく、どうやって上げるのか、なのだ)どうすれば良いか?

 まず、日銀が準備預金への付利を高くするのが一つ。これで全体の土台、水準が決まる。
 ここを底辺として、国債金利が決まる。
 国債発行は、それ自体では銀行の準備預金を一旦減らしてもすぐに戻すので、超過準備が潤沢な状況下では、金利もあまり動かない。

 そこで、日銀が保有している国債で銀行に売りオペをする。

 銀行は準備預金で国債を買うが、日銀に払う準備預金は、日銀の仕訳では、保有国債と準備預金の相殺となるので、銀行には買った分の準備預金は戻らない。

 すると準備預金は減るので、銀行間の貸し借りも起こり、金利が上がる。

 この様に日銀は、準備預金への付利や、国債の売り買いで、金利を調節する。

 しかしその調節に使う国債は、日銀が発行することはできず、政府が発行しなければならない。

 という事で、国債は金利の調整ツールなのです。

 なので、金利がどうなるか懸念すると言うのは、まあ、ご苦労様、としか。。。

何故上げるのか?

 もちろん、銀行預金の貸出し金利は、民間の企業活動や投資が活発になれば上がる。

 ただ、その上がる際の土台は、準備預金への日銀の付利が底を決める。

 投資が投機に走り出して、経済が過熱しだすと、金利や準備率でブレーキをかける事もできる。

 やり過ぎてバブル崩壊させたりもできるし、させない事も可能。

 で、今はバブル崩壊の危険はないのかというと、政府の支出が家計より企業や投資家に向かい、税制が個人消費を痛めさせ、資本家や投資家投機家に甘めで資金が滞留する構造なので、危機は高まっています。

 しかしそれは財政赤字の問題では無く、その振り向け方が、実体経済という身体を貧弱にして、資産や金融市場という頭だけアンバランスに肥大させて、暴走し、転けやすくなっている、という事です。

 なので、単にみんなにお金を配れと言うだけでは学者として不誠実で(予測できないから配るなと言う方が不誠実だが)、その振り向け方(どこに分配するか)と、税制の内容(累進性の強化と再分配)を語らなければならない。

 突っ込むのが気の毒と言いつつ、やはり突っ込まざるを得ない。

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