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ARC:DOOM TABLETOP RPG

 ホビージャパンさんにご招待いただいて、新作TRPG「ARC:DOOM TABLETOP RPG」(以下「ARC」)を遊んできたので、つらつらと感想なぞ書いてみようと思います。

「ARC」日本語版公式サイト

 「ARC」は、フィリピンのmomatoesさんというクリエイターがKickstarterを利用するなどして制作したインディーTRPGです。先月、ホビージャパンさんから日本語版が発売になりました。まるで画集のような豊富なアートワークとルールの執筆を全て一人で手掛けられたというのだから、驚きです。
 寡聞にしてフィリピンのTRPG事情をほとんど知らなかったので、どんなもんだろうと興味本位で発売日に購入していたのですが、なかなか遊ぶ機会が作れず(pdfデータ販売なので)本棚の肥やしならぬ、iPadの肥やしとなってしまっておりました。今回、ホビージャパンさんで遊ばせていただけるとのことで、これ幸いと、お邪魔させていただきました。

表紙がエキゾチックでドキドキする

▼終末時計と2つの時間

「ARC」最大の特徴は、何と言っても「終末時計」のシステムです。本作のプレイヤーの目的は、基本的に「破滅に向かう未来に抗うこと」になります。破滅の原因は、隕石の衝突か、魔王の復活か、はたまた、野球部の廃部なのか、様々なことが考えられます。……が、それだけでは、他のTRPGと大きく変わりません。
 「ARC」には、ゲーム内の時間の他に、実時間の経過により進んでいく「終末時計」というシステムが存在します。40代以上の皆様には、聖闘士星矢の十二宮編に登場する「火時計」みたいなものだと言えば分かりやすいでしょうか。この「終末時計」、ゲーム内時間の進行とは関係なくリアルな時計に合わせて進んでいき、残り時間が尽きた瞬間、問答無用で設定された破滅が訪れます。何があっても、そこで、ゲームオーバー。さすがインディーTRPG、めちゃくちゃ尖ってます。
 ゲーム内で1000年が経とうが、1分しか経過していなかろうが、実時間の経過に従って週末時計は進んでいきます。2つの時間が存在するなんてややこしいように思えるかもしれませんが、しかし、このルールこそが「ARC」の真髄なのです。

▼ナラティブと時間制限

 「ARC」は、プレイヤーとガイド(GMのこと)が一緒になって自由な物語を作っていく、いわゆる「ナラティブ系」と呼ばれるジャンルのゲームです。システムは、物語のテンポを損なわないように非常にシンプルで、能力と技能を足した数字を目標とした1d6の下方ロールで、あらゆる行動を判定します(簡単版のWoDみたいな感じです)。
 しかし、ナラティブ系のTRPGの弱点として、言ったもの勝ちで設定や登場人物が増えたりするので、盛り上がった時ほど、GMがうまく進行しないと横道に逸れまくってセッションがもたつく、ということがあります。その点「ARC」では、装置として「終末時計」が進むことでプレイヤーに適度なプレッシャーがかかり、脱線しても自然と「そろそろ本筋に戻ろうか」という気持ちになれるのがゲームデザインとして秀逸だなと思いました。ナラティブの弱点であるテンポが悪くなる現象を、終末時計がうまくカバーしている。ナラティブ+時間制限は、とても相性が良いみたいです。

▼ARCを遊んでみよう!

 ご紹介した終末時計以外にも、独特で魅力的なモンスターや、ヘンテコで不思議な魔法など、魅力がたっぷり詰まった「ARC」は、ぜひ一度体験してみて欲しい、新感覚のTRPGでした。
 今回僕たちは、何もないところからメンバー全員で相談して世界観や破滅を設定していく遊び方を選択しましたが、初めて遊ぶ場合は、ある程度ガイドを設けて遊んだほうが遊びやすいかもしれません。公式サイトにはサンプルキャラクターやシナリオも無料で公開されていますので、そういったものを利用してみるのも良いでしょう。最初はあまりひねらず、参加者の馴染みのある世界観で遊んでみるのが良いと思います。
 また、ここはインディーっぽいというか、ナラティブに見えて妙に重たいルールも散見されますので、戦闘はあまりややこしくならないように(ルール処理でもたついて時間切れ、はちょっと興ざめです)イベントや、ゲーム慣れしていないメンバーがいる場合、戦闘の数を絞るか、多少ルールを簡易化して運用してもいいかもしれません。
 フィリピンからやってきた、ブランニューTRPG「ARC」。機会があればぜひ一度チャレンジしてみてください。僕もコンベンションやTRPGカフェで卓を立ててみるつもりですので、見かけたら一緒に遊びましょう!

「ARC」は、現在下記2箇所の販売サイトで買えるみたいです
DLSite
コノス


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丹沢 悠一(黒帯ゲームズ)
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