日本の伝統的死生観の尊重に基づいた終末期患者心理の弁証法的分解とその応用可能性
I. はじめに − 生死二元論と弁証法的死生観 「生きている」という状態は我々が主体として存在している限りにおいて自明のことであり、自らの「死」にまつわるクエスチョンが日常において意識下に現れる機会は非常に少ない。ごく稀に、自らの臨死体験や身近な者の死、もしくはそうした場を喚起させるような何かしらの起因に触れることによって、我々は当然のように生きている自分の中にも不可避的に「死」に向かうベクトルが存在することを再認識するのである。時にそれは映画や小説などの作品に触れることによ