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メメント・モリ 〜ポンペイ展に行ってきた〜

炭化したパンがみたくて、ポンペイ展に飛び込んできました。

私自身、そこまで歴史に詳しいわけではなく、薄ぼんやりとした知識しかないものの、このような展示を見るのが楽しいため、よく足を運びます。
そして、遥か昔に生きた人々の軌跡を見て、今が過去の地続きであることを感じるのがとても好きです。

というわけで、それぞれの展示の細かい話とか、解説などはしない、展示の中で印象深かったものをただつらつら綴ります。
※今回の展示は、全作品を写真を撮ることができたのでちょいちょいとそれらも載せての感想となります。

●炭化したパン

これが
こうなる

「パンのある静物」というフレスコ(上の図)をめっちゃ美味しそうじゃん!と思いながら鑑賞し、くるっと振り返ったらこれ(下の図)がありました。何だお前、そこにいたのか。

フレスコのパンは見覚えのある色をしているのに、これは真っ黒。そりゃそうだ。ポンペイは火山灰と火山れきに飲み込まれてしまったんだもの。
仮に、ポンペイが火山灰に埋もれなかったら、私の目の前にこれはない。だってこれ食べ物だもん。流石に腐ってなくなるわ。
この手の展示で食べ物を見たことがあまりないせいか、とても不思議な気持ちになりました。

ちなみに、炭化したパンの手前に「炭化したキビ」があったんですが、私の目には石のかけらにしか見えなかった。キビを発掘した時、ちゃんと食べ物だと認識した人たちは本当に凄いな、と感心してしまった。

●ネコとイヌ

これはモザイク
こっちもモザイク

モザイクやフレスコには、上の図のネコやイヌのみならず、カモなどの鳥やワニ、イセエビとタコといった魚介類など、多くの動物が描かれていました。

個人的に特に気に入ったのが、モザイクの中に描かれた動物たちです。どれも甲乙つけがたいので、今回はその中でも一等好きな二つをチョイスしました。色とりどりの小さいガラス片で動物の生き生きとした様子を緻密に表現しているモザイク。これは見事としか言いようがない。

それにしても、この時代にも動物たちが確かに生きていて、ポンペイに生きる人々の目に映っていたんだ、と思うと非常に感慨深く、同時に不思議な気持ちになりました。
あそこに描かれた動物たちはすでに死んでいるけど、存在していたことを知ることができる。なんともすごいことです。
(なお、ブロンズでできた動物たちの像もあり、これもすごかった。躍動感という言葉がぴったりでした。)

なお、このイヌのモザイクは「番犬がいますよ」ということを示すための看板的なものだったらしく。こういうの、今でも玄関先にあったら可愛いなぁとにこにこしてしまった。

●大理石の像

エウマキア像。神々しく撮れました。

はっとしたんですが、ポンペイがやいややいやしている時代、日本って弥生時代なんですよね。
この地球という狭い星の中で、地域によって文化レベル、文明のレベルがこんなにも違うのか、とこの像を見ながら震えました。

日本が弥生時代の時、ポンペイでは格差はあるものの実力次第で奴隷も身分を超えることができ、女性が実業家になれたのか。
そしてこの緻密で写実的な像。これを作っていたのか。(この像の後に、ブロンズでできた水道管やら医療器具をみてさらにクラクラしました。)

もしも、このポンペイという都市が火山灰に埋もれなかったら、歴史はどんな変化をしていたのかな、と思わず考えてしまいました。

●メメント・モリ(死を忘れるな)

骸骨が猿っぽいなと思った

完全に油断してたんですが、まさかこの展示でこの言葉に出会うと思わなかったです。

すごく興味深いなと感じたのは、ローマの社会において「死」とは平等であるという意識がどの社会階層にもあったという点。
上流階級の人たち、永遠の命は欲しくなかったのかね、とちょっとだけ思ったものの、死生観が違うからそうは思わなかったのかもだな、とすぐ思い直しました。
この時代、よく考えなくてもキリスト教が浸透する前だから考え方違うよな。(像や絵を見れば多神教だとわかる時代)

気を引き締める意味でのメメント・モリ。そして今を生き、楽しめという意味でもメメント・モリ。
この展示の入り口にいた女性犠牲者の石膏像の人も、そんな死生観だったのかな。(この石膏像、とてもリアルでした)

しんみりするようやタッチのモザイクではなく、むしろ事実を突きつけられるような、だけれども決して虚ろな気持ちにはならない良いモザイクでした。

欲しかったお土産を買えました

上記以外にも多数のフラスコやモザイク、石像
装飾品、ガラス製品などといった展示があり、その一つひとつに圧倒されました。
とても、とても楽しかった。

今回、展示に感動したものの、思考がまとまらないので感想という名の雑記を書きましたが、それでも「あれをもう少しじっくり見たかった」「あれってどんな色、形をしていたっけ?」となっており、なんだかんだでもう一度見に行くと思います。

古代のことを知り、実際に目にするのは面白くも不思議ですね。私が今こうやって生きているのも、この先の未来の布石なんだろうなぁ。なんて真面目なことを考えましたが、眠くなったので寝ます。

次回の特別展「空也上人と六波羅蜜寺」も楽しみだなあ。長らく京都に行っていないので、楽しみ。

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