BIプロダクト立ち上げの裏側
こんにちは。STORES 株式会社でプロダクトマネージャーをしておりますtanukinです。
この形式ばった挨拶をヤメにしたいなと思いつつ、個人ブログとして好き放題書くわけにもいかないので(この記事もプロダクトマネージャーの採用を推進したいという会社として意向をそれなりに組んだものです)、それなりのかしこまりを見せて行きたいと思います。
ここ最近何をしていたのかという話ですが、BI(Business Intelligence)プロダクトの立ち上げから成長させるフェーズ(←イマココ)をやっておりました。この記事は主に立ち上げ周りのことを書く予定です。
BIプロダクトとは
BIプロダクトというと仰々しい名前ですが、要はSTORESにおけるデータ分析のための機能・プロダクトです。
現状プロダクトとして切り出しているわけではなく、一機能として提供しています。「データ分析β」という機能名です。
特徴的なのはプロダクトを横断したデータ分析が出来ることです。
リリース当初は STORES ネットショップと STORES レジを、今は STORES 予約の売上データも混ぜ合わせて集計・ビジュアライズ出来るようになっており、複数のプロダクトをご利用いただく事業者様から事業全体の状況がわかりやすくなって助かるというお声をいただいています。
立ち上げの背景
CPOのideさんのブログでも出てきておりますが、元からデータ分析機能を提供しようとして始まった話ではありませんでした。既存のプロダクト群を活かしてオーナーさんの役にたつもの、オーナーさんの経営を支援する、リモコンツールのようなスマホアプリを提供しようというプロジェクト(Kit)が先に立ち上げられます。
このプロジェクトは最終的に一時凍結となるのですが、その過程で分かってきたことは「そもそも我々は適切にデータを統合・提供出来ていなさすぎる」ということでした。十分に価値のある支援を行うにはデータがいる。でもそのデータが用意されていない。だったらまずそこから手をつけようじゃないか、ということでKitプロジェクトからピボットする形で、まずはちゃんとデータを整え、分析として提供するためのデータ分析βへと舵が切り替わっていきます。(自分はこのあたりでチームにJOINすることになります。)
STORESにおけるデータ分析βの役割
立ち上げの背景的には上記のようなものですが、STORESにおけるデータ分析βの役割を整理するには別の文脈の話が混じってきます。それはSTORESがコンパウンドなサービス提供を志向するようになったというものです。
弊社取締役のnaokoさんが記事にしている通り、「STORESはECの会社、ではない」というのが最近の実情です。EC以外にも5種類プロダクトとしては展開しており、会社全体に占める売上規模も同等程度に成長してきています。
そうした中で我々は今後どうしていくのかというところですが、いわゆるマルチプロダクト戦略ではなく、コンパウンド戦略を進めていこうという考えです。
それぞれのプロダクト・事業を独立的に展開するのではなく、複数のプロダクト群を相互に連携させながら、1事業者の経営支援を多様な側面から行なっていくこと・サポートの範囲を広げていくことを志向しています。
複数プロダクトを用いて総合的な経営サポートを提供していこうとする中で、各プロダクトに閉じない、横断的なデータモニタリング・分析の仕組みは当たり前のように求められてきております。方々で生成された購買データや顧客接点データがプロダクトを超えた形で適切に集計・表現されて欲しいという要求です。シンプルな話ですが、ネットショップと実店舗を両方運営した場合、ネットショップの売上と実店舗(レジ)の売上が統合した状態で表現されて欲しいですよね。
そのような状況下、STORESにおける統合的なデータモニタリング・分析のサポートを提供することが、データ分析βの役割となっています。
プラットフォームのありがたみ
改めて立ち上げ期に話を戻して…
立ち上げの裏側ということで何が特徴的だったかというと、一番特徴的だったのは色んなところの作り込みを端折ることが出来た部分ではないかと思います。
改めて過去ログを振り返るとKitからの方向転換・再出発が4月末ごろで、最初のリリースが9月初旬なのでおおよそ4ヶ月ちょっとでのリリースになります。諸説ありますが随分早い展開だったと感じています。
これはメンバーが大変強かったというのもありますが、もう少し再現性のある話をすると STORES が整備を続けてきた開発基盤にガッツリ乗っかれたというのが大きいという印象です。
データ分析βを提供するにあたって各プロダクトからどうやってデータを収集してくるのかとか、ユーザーの認証をどうするのかとか、新規プロダクトで時間を取られがちないくつかの考慮事項が既存の仕組みに乗っかることでそのまますっ飛ばせたのは大きかったかなと思います。
これから様々なサービスを立ち上げていこうとしている矢先、STORES はちゃんとこういう土台を用意しているんだよというのは実感としても助かりましたし、結構良いアピールポイントなのではないかと思います。
分析という領域の難しさ
組織的な話ではなく領域的な話をすると、分析という領域の特徴・難しさがあるなぁと感じています。
分析を提供するために多くの事業者の方々にお話を伺う機会がありますが、分析に対してやりたいこと・やるべきことを明確にお持ちの方は多くないように感じます。多くの方が”データ”に興味を持たれている一方で、そのデータをどのように活用するか、どのようなアクションに変えていくか、というところには悩まれている方が多い印象です。
欲しいと言われるデータも事業者によってバラバラで、言われるままに全部作ってたらキリがなく、事業者が共通的に得たい示唆・インサイトは何なのか、それを得るために必要なデータとは具体的に何かを考えないといけません。
これまでは事業者の意見ややっていることを聞いて「あーこういうことがしたいんだな」と感じたこと、なんとなく事業者が思い浮かべている最終的なイメージを察知し、それの提供に向けて論点を整え、情報を整理し…と進めてくる感じでした。
分析の領域だと、最初の「こういうことがしたい・するべき」が事業者から降りてくるんじゃなくて、こっちから定めていかないといけない感じで、ちゃんとドメインに入り込まないとわからない、決められないなとひしひしと感じています。
ドメイン理解のために過去の商談やインタビューログをガーッと読み込んだり、実際の事業者にインタビューしに行ったり、同ドメインの上場企業の決算資料を見に行ったり、そのドメインで展開されてる他社サービスを調べにいったり...やってることに特別なことがあるわけではないですが、そうやってドメインを理解した上で「じゃあここで必要な分析ってなんだろう」を考える必要があります。面白いなと思う一方で、こりゃ大変だとも思うところです。
横断プロダクト故の難しさ
もう一つ立ち上げ期に癖がある(今もある)と感じたのは、プロダクト横断なサービスであることの難しさでしょうか。
データ分析βは前述の通り、複数のプロダクトをご利用いただいてるお客様にも統合的な分析のサポートを提供することが役割となっています。
運営してみて思うことは、プロダクト横断で提供することが、そのまま各プロダクトが相対してきたドメインを横断して提供することに繋がっており、それが運営上の難しさを生んでいると言うことです。
指標一つとってみても、その名称や定義、計算式などをどのドメインにも通用するように作らないといけなません。ドメイン間で生じる微妙なニュアンス・思想・常識の違いを吸収していく必要があります。
それぞれのドメインで一般的にはどのような指標が求められているか、扱われているかを知る必要があります。そのためにはドメインに入り込む必要がありますが、一方で意思決定としては個別のドメインにどっぷり浸った状態ではなく、複数のドメインの事情を横並びにして、一歩引いた立ち位置で決めないといけません。結構脳みそがパンクしそうだなと感じることが多いです。
とはいえ、じゃあこの大変さが無意味だと思っているかというとそうでもなくて、ここで一定中央集権的に、プロダクト・ドメイン横断で用いる指標の定義を定めていくことにはheadless BI的な価値を感じています。今はデータ分析βしかアウトプット先がありませんが、後々広範なプロダクト群にデータ提供を行なっていく際にはかなり使えるものになっていくだろうという予測です。
今後の展望
データ分析βが今後どうなっていきたいかというと、やりたいことは結構いっぱいありまして、まず扱えるデータを増やしていきたいですね。今のところSTORES ネットショップ / レジ / 予約 の売上データを扱えるようになってきてますが、他STORESプロダクト群のデータや他社サービスのデータも取り込めるようにして提供出来る価値を広げていきたいです。
インプットを広げると同時にアウトプットも広げたくて、今の表+グラフだけの表現ではすぐに限界がくる(既にきている)と感じていて、適切な場面に適切な形でデータが表現出来るように表現の仕組みそのものを変えていかなきゃなぁとは思っています。
そういうベーシックな進化と並行していい加減真面目に考えないといけないなと思うのはAIベースな分析ってなんだろうということですね。根本的に体験を変えるものになりそうな気もしており、通常通りの進化なんかやってていいのかという不安もあります。
求むプロダクトマネージャー
BIだけでもまぁまぁ大変感があるのですが、それ以外も死ぬほどやることがありまして...
前述した通り、STORESはコンパウンドなサービスの提供、複数プロダクトを通して事業者の多様な経営課題を統括的にサポートしていくという話がありました。これを実現していくためには今のプロダクト群では全然足りなくてもっとたくさんのプロダクト群・もっと多様な側面をサポートしていく必要があります。
やりたいことに対して、全然プロダクトマネージャーが足りません。(エンジニアも足りてない)
一応この記事の本懐であるところのプロダクトマネージャーの採用に向けて、ちょっとでも面白いと思っていただけたなら是非ともカジュアル面談にお越しください。
なにか役に立ちそうなことを書いていきたい