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コウモリから見つかった中国のコロナウイルス

週末くらいから国内外でちらほらこのようなニュース。

中国の武漢の研究所のチームがコウモリから HKU5-CoV lineage 2 というコロナウイルスを見つけて、どうやらそのウイルスが細胞に侵入する際、ヒトのACE2を侵入する受容体として利用することがわかった。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)もこのACE2受容体を介してヒトの細胞に侵入して感染する。

こんなニュースでワクチン関連の株価が上がるのはすごい。モデルナ、ファイザーあたりが一時的に上昇したらしい。

元の論文はおそらくこれ Cell
Bat-infecting merbecovirus HKU5-CoV lineage 2 can use human ACE2 as a cell entry receptor

https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(25)00144-8

この論文によるとコウモリから見つかったHKU5-CoVというコロナウイルスに新しい仲間(リネアージ2)がいて、中東呼吸器感染症(MERS)のMERS-CoVと同じグループであるBetacoronavirus(ベータコロナウイルス)属merbecovirusに属するという。
HKU5-CoVというウイルスは以前にアブラコウモリから見つかっている。今回はその新しいリネアージであるHKU5-CoV-2のおはなし。

研究によって、MERS-CoVが使うDPP4レセプタよりも、グループが異なるSARSーCoVやSARS-CoV-2と同じヒトACE2を受容体としてヒト細胞などに感染することがわかった。SARS-CoV-2はBetacoronavirus属sarbecovirusに属するので、Betacoronavirus属でもmerbecovirusとは違うグループ。けれども季節性の風邪を引き起こすHCoV-NL63という既存のヒトコロナウイルスもACE2受容体を介して感染する。
こっちはBetacoronavirus属とはさらに異なるAlphacoronavirus属のSetracovirusという別のグループなので、別のグループのウイルスでも同じ受容体を利用することはある。

Cell(2025)より

HKU5-CoV-2は、新型コロナウイルスやSARSと同じ受容体を利用するので、コウモリを飛び越えてヒトへ感染する可能性もあると結論づけている。

けれども、まだこの段階では実験室(in vitro)の研究結果なので、実際のヒトへの感染リスクがあるとかないとかはなんとも言えない。
今後はヒトの抗体価を測定して過去の感染例があるかを調べたり、マウスやラットなどの実験動物への感染実験をして、感染するかどうかやどのような症状が出るかを調べていくのかなと思います。

今の段階であまり騒がなくてもいいと思います。