短編小説#6 うどんを食べる話
夏の終わりのこの時期は夕方にはすっかり肌寒くて、僕は仕事終わりの疲れた体に鞭を打って家路についている。こんな夜にはあたたかいものを食べてゆっくり寝るに限るのだ。幸い明日は休みで自宅の冷蔵庫には大好きなビールが待っている。ついでに唐揚げなんかも買って帰ってもいいのかもしれない。そんな思いを膨らませながら薄暗い路地を抜けると、いつも通りかかる小さな店が目に入った。手打ちうどんと大きく書かれた暖簾が目を引くその店は、いかにも昔からその場所にありますと言わんばかりの佇まいで、前から