令和4年度予備試験論文再現答案(刑訴法)

たぬきでありながら弁護士を目指しているめいりです。R4予備試験、最終合格できたので、論文の再現答案全部公開しちゃいますぽん〜

7つ目は刑訴法(E評価)!



第1 行為①について

1.Pは甲の承諾を得ることなくキャリーケースの中を捜索しているところ、Aの被疑事件に関する捜索差押令状の効力として許されるか(218条1項)。

(1)この点について、同条の令状主義の趣旨は、憲法35条の「正当な理由」につき裁判官による実質的な認定の機会を確保する点にある。そして、「正当な理由」とは捜査の理由と必要性であり、証拠確保の必要性が考慮されるところ、第三者の携帯物には証拠存在の蓋然性がない。また、裁判官の認定は管理権単位でなされるところ、第三者の管理権に属する物は、実質的な認定の機会を経ていない。そこで、第三者の携帯物には原則として令状の効力は及ばない。

 もっとも、令状執行の実効性を確保するために必要な措置は令状の効力として許される。222条1項・111条1項の「必要な処分」はそのことを確認する規定である。そこで、目的物を隠匿したと疑うにたる相当な状況では、必要かつ相当な範囲で、捜索を行うことが許されると解する。

(2)まず、甲は外出できる格好でキャリーケースを持っていたから、覚醒剤密売に関する物を持ち出す可能性があり、再三にわたりPは甲に中を見せるように求めていたのに、合理的理由もなく拒否していたから、キャリーケースの中に差押対象物たる覚せい剤等を隠匿していると疑うにたる相当な状況である。

(3)次に、覚醒剤は容易に証拠隠滅が可能であり、証拠確保の緊急性は高い。また、覚醒剤の密売は覚醒剤使用者を拡大させ、1年以上10年以下の懲役が定められた重大な犯罪である。そして、再三にわたって説得を続けているから、任意の提出を期待できる状況ではない。さらにAとは夫婦という身分関係があり、証拠を隠滅するインセンティブもある。よって、必要性は高い。

 そして、キャリーケースを甲が所持しているかその場所に置かれているかは偶然の事情にすぎず、キャリーケースを捜索されることによる甲のプライバシー侵害の程度は令状において予定された限度にとどまっている。よって、手段としても相当である。

2.以上より、①行為は適法である。

第2 行為②について

1.Pらが乙を羽交締めにしてボストンバッグの中を捜索した行為は、上記令状の効力として許されるか。上述の基準で判断する。

(1)まず、ボストンバッグの中に差押対象物が隠されている可能性は、キャリーケース同様に高く、覚せい剤等を隠匿したと疑うにたる相当な状況である。

(2)次に、証拠確保の必要性も同様である。

 また、ボストンバッグの中身に対するプライバーの侵害の程度も令状において予定された限度である。

(3)もっとも、Pらが乙を羽交締めにしている行為は、新たに乙の身体活動の自由を奪っており、令状において予定された利益ではないため、なお令状の効力として許されるか。

 この点について、確かに身体活動の自由は場所に対する利益に包摂されない。しかし、上述の111条1項の趣旨から、令状執行の実効性を確保するために最小限度の有形力行使も許されると解する。

 本件では、Pらがボストンバッグの中を見せるように言っても、乙はボストンバッグを両腕で抱えて、これを拒否しているから、Pらがボストンバッグの中を捜索するためにはこれを排除しなければならない。そうだとすると、乙を羽交締めにした行為もやむを得ない限度にとどまっている。

 よって、許される。

2.以上より、行為②も適法である。

以上

 

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