令和4年度予備試験論文再現答案(労働法)

たぬきでありながら弁護士を目指しているめいりです。R4予備試験、最終合格できたので、論文の再現答案全部公開しちゃいますぽん〜

10個目ラストは労働法(A評価)!



1.Xは、裁判所に対し、Y社との労働契約上の地位の確認請求をすると考えられる。

2.Xは、労働契約法19条によってXの労働契約の更新の申込みに対するYの承諾が擬制される結果、労働契約が更新されていると主張する。

(1)まず、同条1号に該当するか。

 この点、期間の定めのある労働契約でも更新手続きが形骸化し、実質的に期間の定めのない労働契約となっている場合をいう。

 本件では、契約期間が1年と定められ、契約更新の際には勤務態度等の評価によって年棒が決定され、新たに労働契約書に署名・押印させていたから、更新手続きが形骸化していない。

 よって、1号に該当しない。

(2)次に、同条2号に該当するか。「期待することについて合理的な理由」があると言えるか検討する。

 契約更新は売上成績やなどを考慮して決定されるところ、Xの売上成績は3年以上トップの成績であった。また、令和2年、3年の契約更新の際は、勤務態度を改善すべきことを指摘されたものの、不更新の可能性は指摘されていない。しかも、Xの勤務態度が悪くても店長Bはむしろ他の従業員を我慢させたり、異動させたりしていたから、かかる店長の態度はXの勤務態度を容認するものであった。そうだとすれば、契約が更新されることに対する期待には合理的理由が存在する。

 よって、2号に該当する。

(3)そこで、不更新が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない」場合には、承諾が擬制されることになる(19条柱書)。

ア 同条の趣旨は、繰り返し労働契約が更新されることが期待される場合には、その不更新は実質的に解雇であるから、雇止めにも解雇権濫用法理を及ぼすものである。そして、解雇は労働者の生計に重大な影響を与えることから、慎重に判断されなければならない。そこで、①勤務態度の悪さの重大性、②職務の性質、③改善措置、④改善可能性を考慮して判断する。

イ Xは、本来自分でやるべき配送手配や代金受領の手続を同僚に押し付けていた。確かにXは売上トップの成績であったから、接客に付随する手続きは他の従業員よりも多くなる。しかし、他の従業員もXに仕事を押し付けられなければその間接客ができるのだから、押し付ける行為を正当化できない。また、在庫不足のミスを同僚のせいにするなど責任転嫁したり、引き継ぎをしないまま勝手に休憩に入ってしまうなど、業務の円滑や従業員同士のコミュニケーションの円滑を害している。そして、A店全体の職場環境の悪化を引き起こし、新人従業員が2人も退職するなど、実害が生じている。そうだとすると、Aの勤務態度の悪さは重大である。

ウ そして、女性服小売店の接客業においては、従業員同士の不和は店の雰囲気に影響し、訪れる客の購買意欲に影響する。また、スムーズな配送や代金の受領もサービスとして重要である。

エ 一方で、店長Bは契約更新の際に勤務態度の改善を指摘するものの、契約不更新の可能性は示唆されておらず、勤務態度の悪さの重大性が伝わっていない。また、勤務態度を指導することがあっても、同僚とのトラブルがあった場合には同僚の側を我慢させたり、他店に異動させたりしていたから、Xの勤務態度を事実上容認していた。そうだとすれば、店長Bは適切な改善措置をとっていない。

オ また、確かにXの勤務態度は3年以上改善していないが、適切な改善措置がとられていなかった以上、契約付更新を示唆した上で強く指導したり、Xを他店に異動させるこのにより、Xが心機一転して勤務態度の改善に努める可能性は否定できない。

カ 以上の事情を総合的に考慮すれば、契約不更新は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」。

(4)よって、Xは労働契約の存続を主張するから、労働契約の申込みがあり、これに対してY社の承諾が擬制される。

(5)以上より、Xの請求は認められる。

以上

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