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リクルート、メルカリを経てコーチングのスタートアップへいくまでに感じてきたことのすべて

はじめに

2019年11月、私は約2年半お世話になったメルカリを退職し、パーソナルコーチングサービス『mento(メント)』にJoinすることにいたしました。

私にとってこれが、2回目の新規事業への挑戦になります。私はこれまで「n年後にどうなっていたいの?」と聞かれれば、「30までに起業がしたい。」と言い続けてきました。それは、新卒1年目のころにリリースした『MINMOO』というサービスで感じたやりがいと悔しさが頭にこびりついて離れなかったからです。

そしていまmentoにJoinして、リクルートで出会った本当に信頼できる仲間と一緒にその目標を叶えようとしています。

いま感じているのは6年前のような「スタートアップに挑戦する」ということへの漲るエネルギーや猛々しさ、焦りではなく、「自分が本当に助けたい人は誰か」という想いと、この最高の事業とチームで私は「上手くいくまで絶対に諦めない」という穏やかな覚悟です。

そして、リクルートとメルカリという日本を代表するIT企業で、新規事業、プロダクト開発、マーケティングと様々な経験をさせてもらったいまの私ならそれができるのではないかという自信もあります。

このnoteを通して、いままでの私のキャリアに関わってくださった全ての皆さまへの感謝と、新たな挑戦への想いが伝われば良いと思っています。

ちなみに、この記事長いです

1:新規事業での大挫折@リクルートホールディングス

リクルートには「RING」と呼ばれる『ゼクシィ』『R25』『スタディサプリ』など数多くの事業を生み出してきた新規事業制度が存在します。そのRINGで内定者として史上初のグランプリを受賞し、その事業責任者として私のキャリアはスタートしました。

ミラクルガールズ

(このときの私はいかに浮かれぽんちであったかということは、写真をご覧いただければご想像に固くないと思います)

リクルートの新卒同期であるメンバーとともに作ったこのサービスは、お祝いシーンをより手軽に、もっと盛り上げたいという意義深いものでしたし、大学生が企画開発をしているというニュース性も相まってリリース半年で数万MAUほどのサービスに成長しました。

しかし、私にできたのはそこまででした。事業計画、目標設定、マーケティングプラン、UIUX、いま思うとどれをとってもズタボロで、サービスの成長もマネタイズの見込みもすぐに頭打ちしました。そして、リリースから1年強でサービスクローズとなります。

このサービスを一緒にやるために集まってくれた大好きなチームも、サービスも、お客様も、自分の力不足で手放すことになり本当にショックでしたし、「いつかかならずもう一度リベンジするんだ」という想いが深くなりました。

2:本物の起業家たちとリクルートのビジネスおばけ@リクルートホールディングス

その後私は、リクルートが協業する海外スタートアップの日本展開推進を行うチームへと異動しました。ここで出会った人たちは、当時の私には怪物のように感じられたのをよく覚えています。

「Udacity」と「99designs」という世界トップクラスのスタートアップのCEOやそこで戦うメンバー達と、リクルートという数兆円規模の企業の次の未来を作る事業を本気で考え抜いているエグゼクティブたちに挟まれ、「これが本当に新しい事業、未来を作ってきた人たちの戦い方なんだ」とレベルの違いに愕然としました。

当時の私はアップセルのための法人営業、CSオペレーションの改善、オンライン集客のためのLPディレクションなどできることはなんでもやっていたのですが、出会う人達の戦略、発言、行動のすべてが私の想定を遥かに超えて私を置いてけぼりにしていく、経験と器の違いに肌がヒリヒリする日々を過ごすことになります。

全社コンペでグランプリを受賞し鳴り物入りで入社した気分だった私が、いわば本物の起業、事業開発を目の当たりにして、ますます夢は大きく、自信は小さくなっていきました。

3:UIUXと大規模スクラムと仮説検証と私@リクルート住まいカンパニー

かくしてかなりイレギュラーな新人時代を過ごした私が、社会人3年目のなかごろになってようやくリクルートの主要事業である『SUUMO』のフロントエンドUIUXの改善を行うチームにやってきます。そこは本当に異世界でした。

SUUMOと言ってしまえばシンプルですが、その中には賃貸、新築マンション、中古戸建て、注文住宅などなど多種多様な領域が存在しており、たくさんの部署と、たくさんの社員が、それぞれの目的を持ってサービス改善を行っていて、私がそれまで過ごしてきたスタートアップ的な文化とは全く異なる環境でした。

そこで私が実現しようとしたのは「SUUMOアプリのTOPとナビゲーションをごっそりリニューアルする」でした。今思うと異動早々本当に恐ろしいことを言い出したと思うのですが、当時のSUUMOアプリのUIがこちらです。

当時のUI (SUUMO for Android)

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家探しは意外と長期戦で、その間ずっと伴走し続けるはずのアプリが思いっきりドリルダウンで、毎度領域を選択する必要があり、使っても使っても自分の家さがしに寄り添うことがない、という状況を変えたかったのです。

簡単に言うと「パーソナライズTOPページ」の実現を目指しました。結果は是非SUUMOアプリをDLしてみていただきたいのですが(笑)、この取組は「仮説検証PJ」と呼ばれ、まずは検証のための小さなプロトタイピングチームを立ち上げるところから始まり、本当にたくさんの方にご尽力いただきながら実現していきました。その後も素晴らしいメンバーによって改善が重ねられた結果今があります。

アフリカのことわざに「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。」というものがありますが、SUUMOでの体験は本当にこの通りだと感じます。

私一人では本当に何もできないですし、それまで「0→1」「10→100」ばかりをやっていた私にとって「100→???」の戦い方、UIUXとプロダクトグロースを学ぶことができました。

4:本気のマーケティング×プロダクトがあれば世界は変わると思った@メルカリ

マーケティングに出会うまでの自分は、「イケてるプロダクト教」にどっぷりつかっており、お客様のことを「サービスを使っている人」「使っていない人」に分類して考えていました。

「サービスを使っている人」だけに向き合い続けて、改善を続けていけば勝手にグロースしていくと思っていました。なんならマーケティング・広告は「お金を使ってユーザーを騙して連れてくる悪いもの」と思って苦手意識すらありました

だからこそやってみようと思い、2017年の中頃、全くの未経験でマーケティングメンバーとしてメルカリへと転職します。

私がメルカリのマーケティングチームで感じたことは、マーケティングがいかにドラスティックに事業を伸ばすことができるかということと、ITサービスであってもマーケティング×プロダクトの断絶をなくす本気のマーケティングが求められているということでした。

当時のマーケティングチームは、マネージャーを入れて10名弱でTVCM、リアルイベント、運用型広告、その他プロモーション施策、アプリ内キャンペーンやインセンティブ施策の全てを担当していて一般的に広告宣伝費と呼ばれるものは全て担当していました。

このあたりの信念や哲学については当時マネージャーだった山代さんのmercan記事の方が詳細かと思いますが、プロダクト開発にどっぷり浸かっていた私にとって、マーケティングの領域がこんなに深くて熱いものであり、こんなにもドラスティックに事業KPIを伸ばすことができるということ自体がとても新鮮な気づきでした。

また、メルカリのマーケティンググループにはそれを実現できるプロフェッショナルが揃っていたのでその中で働くことができたのも大きな喜びでした。

そして、「サービスを使っている人」にしか興味がなかった私が「サービスの外にいる人」に本気で向き合うことの面白さに気づいたのはメルカリの2018年11月CMクリエイティブを担当したときでした。

サービスブランディングや世の中での認知が重要なのは頭ではわかっているつもりでした。ただ、お客様がサービスをどのように認識しているか、世の中にとってそのサービスにどんな意義があるのか、お客様の認識をどのように変えていきたいのか、お客様の知らないサービス価値を「いかにだれにでも伝わるクリエイティブに落とし込んで広げることができるか」についてこのときは心の底から本気で考え抜く必要がありました。

また、自分の実力にはとても見合わないくらい優秀で尊敬できる代理店チームの皆さまとOne Teamになる機会がもらえたことも、自分の人生にとってとても尊い出来事でした。

こちらの過程については下記記事に詳細がまとまっていますが、電通社でもプロ中のプロである皆さまがここまで頭を捻って一緒にメルカリの今と未来について考え抜いてくださったこと、想いを共有できたこと、結果素晴らしい施策にできたことが本当に嬉しかったです。

柳下:社会のプラットフォームになる、という方向はいいんです。でも、それがメッセージの中心になるタイミングじゃない。新しい消費行動を、当たり前に選択肢に変えていく長い物語のはじまりなんですよ。なんだよそれ〜難しいよ〜とか言いながら、考えていました(笑)
 東畑:そしてたどり着いた、今向き合うべき表現の鍵が、銀座中央通りのような「人がたくさん行き交うにぎわいを可視化する」ということでした。
 東畑:完璧にロジカルな人を好きになれるわけじゃないように、隙が見えるところに人のチャーミングさがある。広告だけに限らず、表現を作る上では無駄や余白をどう上手につくっていくかが、とても大事なんです。

そして、プロダクトとマーケティングに垣根なんてない。どちらもHowは違うけれど本気でサービスとお客様のことを考えていて、それは会社の垣根さえも超えると思いました。

この両輪が回りだしたときに、本当に良いものが世の中に生み出せるのだという想いを強くしました。私は、「今は流行っているフリマアプリ」から「メルカリが世の中の当たり前になる」、この時期のメルカリでマーケティングができたことを、本当に良かったと思っています。

5:メルカリPMレベル高杉だし最高杉だった話@メルカリ

マーケティングチームを経て、私は再度PMとして出品をグロースするチームで働くことになりました。やはりメルカリの根幹はプロダクトであり、それをこの目で見たいと思ったからです。PM職は慣れたものだと思っていましたが、メルカリのプロダクトチームではまた新しい景色が私を待っていました。

まず驚いたのはメルカリのPMはまじで垣根なく何でもやれるということ。噂には聞いていたのですが本当にここまでとは....。

リクルートではプロダクトマネジメント、プロダクトデザイン、開発ディレクションなどはある程度部署を分けて進めており、それはそれでメリットもたくさんあるのですが、メルカリではその全てを案件担当のPMが推進していました。

事業企画にもUIUXにもデザインにもエンジニアリングにも精通していて、SQLも当たり前に書いて分析するし、開発メンバーの多くはEnglish Speakerなので英語でドキュメントを書いて調整し、本当にたくさんの関係者を巻き込みながら、よりよいプロダクトを最速でお客様に届ける、それがメルカリで活躍するPMでした。(メルカリPMの目指すところについてはメルペイの辰巳さんの記事がすばらしかったのでこれも貼っておきます)

そして私にとって特に思い出深い案件は、出品者向けホーム画面実装です。メルカリのコア価値の一つでもあり、リリースされてから6年間大きくは変えてこなかった「出品画面」への体験をまるっと変えてしまおうというものでした。

「売りたいものがすぐ売れる」から「売りたいものが分かる、見つかる」へ。まずはメルカリの出品をより多くのお客様に届けていくための第一歩として推進しました。

プロダクトチームへの着任まもなくこのような案件を任せてくれるメルカリの懐の深さに驚きつつ、その責任の重さにリリース日は生きた心地がしませんでした。

3つのスクラムチームと多くの関係者に甚大なサポートをいただきながら進めたこの案件は2019年6月に無事リリースすることができ、そしてありがたいことにGo Bold賞という全社表彰までいただくことができました

私はこの案件を通してメルカリメンバーのそれぞれのGo Bold、All for One 、Be a Proを何度も垣間見ることができ、ときに迷惑をかけ、押し流されそうになりながらもなんとかリリースまでさせていただけたことを、本当に感謝しています。

6:6年間、私を苦しめ続けた呪いについて

改めて思い返せば、大きな機会と優秀な仲間に恵まれた6年間でした。

新規事業立ち上げ、海外事業の日本展開、プロダクトグロース、マーケティングなど様々な領域でたくさんの景色を見ることができましたし、学べることも多く、平均以上に評価もしてもらえた認識もあります。

そして何より「丹下さんと働けて良かった」という言葉を何度かもらうことができて、私はそれが何より嬉しかったです。

それでも私は、このキャリアのなかで幸せを感じられない瞬間の方が多かったのです。

誤解のないようにお伝えしたいのは、これは明らかに私自身のものの捉え方に問題があり、特定の人物、出来事によってそうなってきたわけではありません。

仕事のストレスでメンタルクリニックに行ったことは2回、自宅で泣き過ぎて角膜に白い傷ができたことも2回ありますし(ちなみに治らないらしいです)、会社に行きたくなくて眠れないことや、緊張とストレスで息が肺の深くまで吸えない感覚が長く続いたことはザラでした。

「メンタルが弱い」「人の言動を気にしすぎる」「完璧主義もほどほどに」

そう行ってしまえば簡単なのかもしれません。やめられるものならすぐにでもやめたいです。でもこれが私の心の天然パーマであり、自分の意志とは関係なく無意識にそうなってしまうのです。

「自己肯定感が低い」という言葉がありますが、私は親にも愛されて育ちましたし、友人関係も良好で、大好きな旦那さんもいます。持って生まれた自己肯定感だけでは説明のつかない何かが私の人生の大事なところで邪魔をしている感覚が確かにあって、私はそれと戦い続けてきました。

「もっと頑張れたんじゃないか」「また失敗した」「なんで私はいつもこうなんだろう」「あの人に迷惑をかけたんじゃないか」「あの人ならもっとうまくやれる」「私じゃなくて本当はあの人がやったほうが良い」「あの人はきっといま私に怒っている」

自分を責める声がとめどなく自分の中に流れ続けて自分を苦しめ、気づけば仕事の生産性を下げたり、人の粗探しをさせたり、やりたいと思っていたことを途中でやめさせたりするのです。そんな私をさらに私が責めます。

この問題の厄介なところは、「人に相談するほどじゃない」と思ってしまうことです。私はモヤモヤしているけど、私はずっと傷ついているけれど、人に相談して解決できるほど顕在化した課題ではない。何なら相談することで余計に自分を嫌いになってしまう、そう思って我慢するうちに、気づけば深刻化して会社にいけなくなっているのです。

新卒2年目の終わり、リクルートで海外投資の部署を異動する際、本当にお世話になった上司に心からの感謝と何も役に立てなかったことへの不甲斐なさを伝えました。すると、

「丹下が積んでるエンジンには、だれにでも分かるような名前がない。でもいつか大きなものを動かすから頑張ってね」

と言われたことが、いまでもお守りのように心に残っています。私はこの「名前がないエンジン」の存在を今も信じきれていないし、どうか本当であってほしいとも願っています。

そして、私が積んでいるエンジンに名前がないことも自分にとっては辛いことのひとつです。新規事業と、プロダクトと、マーケティングを転々と。私は私のやりたいようにやっているだけなのに、「あなたは何屋なのか」と聞かれるたび、好奇心のまま走ってきた私は言い淀み、責められているように感じました。

7:結局、いまやりたいと思っていること。

本当に様々な経験を経て自分がやりたいのは「挑戦したいのに、心がうまく扱えなくて苦しむ人を助けたい」「世界中の『名前がないエンジン』を動かしたい」ということです。

私達が身を置く環境は本当にたくさんの理不尽と変化があります。だから、状況が見えていて真面目な人ほど考えすぎてしまいます。周りの痛みが分かる優しい人ほど傷つきます。とても高いゴールを目指している優秀な人ほど自分を許せないことがあります。

私が働いてきて、好きだなあと思う人達はみんな「悩むひと」でした。自分のこと、サービスのこと、チームのこと、事業のこと、本当に真剣に悩んでいて、ときには損をするような人たちでした。

彼らが悩みながらも、自分の心の天然パーマとうまく付き合い、どん底までへこたれてしまうことのないよう、幸せを感じながら本当にやりたいことを形にする世界にしたい。自分のエンジンを愛し、動かせる世界にしたい。大げさに言えばそれが社会をもっと輝かせると信じています。

その手がかりが、木村に、コーチングにあると感じたから私は『mento(メント)』にJoinすることを決めました。

8:mentoで何をやるのか

mentoは元々、私のリクルート同期の木村が昨年9月にリクルートを退職し、たった一人で積み上げてきたサービスです。そこに2人目のメンバーで取締役COOとして参加することになりました。(木村の立ち上げ経緯はこちら↓↓)

私は木村がこのサービスをやっていることを、もちろんもっと前から知っていましたが、コーチングも、スタートアップにJoinすることも、自分には関係のないものだと思っていました。

コーチングとはもっと海外のエグゼクティブや、一流アスリートのように元々強い人がより高みを目指すためにあるのであって、自分のようなメンタル激弱勢のためのものではないと思っていたからです。

「私が救いたい人は違う」それが率直な感想でした。また、もう一度新規事業に挑戦するときは、自分が旗を立てるものだと思い込んでいたのです。

しかし久しぶりに木村に会い話しているうちに、私はコーチングに対して誤解があったこと、私のような人こそコーチングが役立つこと、コーチング業界に対して木村がやろうとしていることは本当に素晴らしく、自分のやりたいことともぴったり重なるのではないかという想いに至りました。

木村もまた「悩むひと」です。社長なのによく不安そうにしたり、お腹を壊したりしています(お腹壊すのは多分体質ですが)。でもだからこそついていきたいと、素直に思うことができました。私と同日入社で同じく同期の松山もCTOとしてJoinすることが決まりました。

「最高のチームと、本当にやりたい事業が目の前にあるのに挑戦しなかったら一生後悔する」と思ってからは、全く迷いませんでした。

正直自分が何をできるのかはわかりません。それでも「ナンバー2」という役割は、新規事業、プロダクト、マーケ、法人営業、CSなんでもやってきた私に自信と居場所をくれました。

これまで私に関わってくださった全ての皆さま、本当にありがとうございます。

私はこの『名前がないエンジン』で、行けるところまで行ってみようと思います。

そして、皆さまどうぞ末永くよろしくお願いします。

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