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日本人の友人たち

ある日、文法のクラスの初日に日本人のYさんに声を掛けられました。彼女は日本の有名大学を卒業して来ていました。彼女は友達は自分から選ぶポリシーで私に声をかけてくれたのです。年がだいぶ上だったので私を過大評価していたのかもしれませんが、それはハズレ。英語も私より数段うまく、情報をたくさん持っていて色々な面で私の方がお世話になりました。今でもお付き合いをさせてもらっています。

今もお付き合いが続いている友人のもう一人は夏の講座の後半から入ってきたMさんです。彼女はお父さんが外資系の会社で働いていらしたので、彼が英字新聞を読むひざの上で遊んでいたという英才教育(?)のせいかリーディングがとてもよくできました。読みが深いのです。二人とも私よりひとまわりも下なのに私が教わることが多く滞在中も帰国してからもとてもお世話になっています。

せっかくアメリカにいるのに日本人と付き合うのでは意味がないという考えもあります。海外で勉強する時日本人のいないと所がいいと希望する人は多いです。今はそんなところはほとんどないくらいどこに行っても日本人がいま。しかし日本人と付き合うメリットもあります。特に滞在許可証の問題などは現地の人は知らないので日本人に聞くのが一番です。ここで気をつけなければいけないのは嘘の情報とまでは言わないけれど法の網をうまくくぐる方法を教える人がいることです。そんな情報は魅力的に見えますが後々必ずトラブルになります。

私たちがお世話になったエージェントは手続き費用を私達母娘3人で60万請求してきたと以前書きました。私達の場合は、渡米するまでのビザの取り方を教えた後は現地駐在員Y子さん(日本人とアメリカ人のご夫婦)を紹介してくれ語学学校の手続きだけでなく、娘二人(中学校と小学校)の入学手続き、アパート探し、渡米してからの日用品の買い物や銀行口座開設などの諸手続き、車の見立てまでやってもらったのでそれで納得しました。しかし同じエージェントを通してアメリカに渡った人たちと会う機会があってわかったことですが、人によって請求金額が違っていたようで一人で120万も請求されたお金持ちの子供もいました。日米教育委員会で手続きをして来た人などは1万円位ですんだそうです。情報は金だと思った経験でした。

Y子さんご夫婦はご自分のお子さんはいないのに日本からの留学生の諸手続きだけでなく、ホストファミリーでろくな食事を出されていない子達のためにバーベキューをしたり食事を出してくれたりしていました。ホームシック、ホストの食事が悪いなどの理由で困っているときは日本人同士で集まって色々な悩みを話したり日本食を食べたりすることは悪いことではないと思います。それが度を越さない限り。

私たちが落ち着いて1ヶ月した頃に同じエージェントを通して同じアパートの別の棟に日本人の家族が来ました。方言丸出しのとても元気で明るい家族です。塾の先生をしていたごつい面立ちのK氏と年上の明るくてさっぱりした性格の女性Aさんは事実婚の家族でした。Aさんの二人の娘さんをK氏は親身になって世話し、勉強も見ていてくれていました。上の娘さんは長女より一つ上、下の娘さんは次女より一つ下だったので学年は違いますが上は同じ中学校に、下も同じ小学校に通うことになりました。

K氏は日本では大学をすぐにやめて塾を経営していました。そのかたわら独学でフランス語とスペイン語を身につけたそうです。英語はTOEFLも最高点を取るくらいのレベルでしたが、アメリカでの生活を体験したくて来たそうです。もちろん娘さんたちへの英語教育も兼ねてのことです。

彼はとても努力家でフランス語もスペイン語もペラペラらしいですが、アメリカに来て初めてそれを母国語とする人達と話したそうです。アメリカにいるときも寒い中ベランダで毛布にくるまりながら毎日短波放送のフランス語とスペイン語のニュースなどを聞いていました。今のようにTVやインターネットで簡単にあらゆる国の言葉が聞ける時代ではなかったのです。

彼らはアメリカに4、5年いました。K氏はコミュニティカレッジの単位を取り終えて4年制大学の3年に編入できるようになってもそのままコミュニティカレッジにとどまり自分の好奇心を満足させる単位を取りながら本当に楽しんで勉強していました。AさんもESLでマイペースで英語を身につけていました。

日本に帰国後、K氏は大阪の外語大に入り、卒業後アイヌ語の文法を勉強するために北海道に住んだり、地元に帰って塾を再開したり色々なアジアの国の人々と交流したりして、いまだに自由にやりたいことをやっているようです。帰国後Aさんは一時娘さん達の学校のためK氏と離れて暮らしていましたが、その後は一緒に北海道に行ったり地元に帰ったりして彼女も見事に母親業とK氏との生活を両立させながら楽しく暮らしています。彼らの生き方の制限のなさには大いに刺激を受けました。
 

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