視点を変えるまで その3
もう1つ目からウロコの経験をしました。長女が小学4年の時建築士をしている父親が研修旅行でヨーロッパに行き、すごく感銘を受けて帰ってきて、ふた言目には「百聞は一見にしかず」と言うようになったのです。現地で自分の目で見たり経験することの大切さを実感したようです。その経験から翌年私と小学5年の長女にヨーロッパ旅行をさせてくれました。その時のヨーロッパでの長女のイキイキとした様子が忘れられません。長女自身もあの経験は自分の宝だと今でも言います。
その旅行中にフランスで勉強したことのある妹の友人で学校の先生をしている方とお会いした時のことです。その時、当時フランスでも公立の学校より私立に入れようとする人が増えていたという話から色々と聞いてみました。
「じゃあ、中学入試のための勉強は大変でしょう? 塾のようなものはあるのですか?」
[いいえ、入試はしません]
「えっ?じゃあ誰を入れるかはどうして決めるのですか?」
「希望者は全員はいれます」
「でもそうしたら教室や先生の数がたりなくなるでしょう?」
「教室が足りなければ作ればいいのです。先生が足りなければ雇えばいいのです。」
済ました顔で先生はおっしゃいました。1980年後半のフランスでの話です。当事フランスの国の経済状態が良かったのか悪かったのかわかりません。希望者全員を入れるということが今でも行われているかもわかりません。しかし妹によると授業料に関しては今でも大学までほとんど無料だそうです。入試が無くて、希望者は全員受け入れるという発想には本当にびっくりしました。
まず先進国といわれる国々ではほとんど高校までが義務教育です。つまり入試も無く、授業料が要らないのです。国によっては16歳(高校1,2年)までが義務教育だったり、その後は行きたければ大学に入る前の18歳まで授業料は要らない国、大学まで無料のドイツの話は最近よく聞きます。それに比べて日本の義務教育は中学までです。そのせいで、基本的な部分の教育にさえ重きを置いていないと感じる親は大変な思いをして家計のやりくりをし、子供を塾に行かせる為に仕事に出ているのではないでしょうか。
私も自分が親に自腹を切らせる仕事(英語塾教師)をしているのでこの矛盾した状況にずっと悩んできました。だから学校でできないこと、親にできないことを習いに来てる子達にしてあげなければと心を砕いてきました。これらの経験から、私は自分の子供たちには、何が良いかと考えて、せめて普通のこれといって取り柄もない我が家の娘たちに合うだけでなく我が家の収入でまかなえる教育環境を探し続けました。国内だけでなく海外も。そしてたどり着いたのが母娘3人でアメリカで勉強するという選択でした。