見出し画像

呪いの臭み ~ショートショート410字~

前途洋々が折れ曲がり

迷い彷徨さまよいどれほどか

よどんだ長いトンネルを

ようやく抜けてたどり着く

日の目輝くひのきの場所に

しむことなき全霊の

演技が臭いととがめられ

遠因えんいん網羅で突き止める

気負った心はかつてなく

つらぬき通した努力の上に

失敗してはならないと

呪いの如くし掛かり

思い悩んだ日の果てに

再度チャンスが訪れて

過去のおのれ蹴散けちらかし

くだける覚悟を腹に

いどんだ勝負はきちと出て

世に出るいさおを掴み取り

一端いっぱしの役者と認められ

一部の批判は変化なく

毀誉褒貶きよほうへんを浴びながら

くさみのない演技を志し

と或る成功にとらわれず

謙虚な姿勢を保つうち

人らのねたみを垣間かいま見て

己の成長をなきものに

臭いの難癖つけられて

呪いとおぼしき闇を帯び

火のない煙が立ちのぼ

躍起やっきに打ち消す姿をば

みじめと鏡で知らされて

見上みあぐる柳は風を受け

心にめるしなやかさ

強さを次第に会得えとくして

足元を固めて毅然きぜんたる

芝居しばいに打ち込む情熱を

雑音如きに邪魔されず

日々の研鑽けんさんを積み重ね

臭みは転じて味のある

深い役者と名をせて

前途は外国とつくにへ飛躍する


【あとがき】
本稿は、たらはかに様が募集されている「毎週ショートショートnote」に参加する作品です。今週のお題である「呪いの臭み」という奇妙な言葉を表題に据えて、ルビを除く410字(ショートの語呂合わせ)で執筆しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?