実践探究メンター紹介:子どもたちと遊ぶことが誰よりも好きな「ゆーせー」編
こんにちは。
実践探究メンターのちひろです。
実践探究では、子どもたち一人ひとりの活動にメンターが伴走をしています。
メンター同士は根底に共通の価値観を共有していますが、
具体的な伴走の仕方はマニュアル化していません。
それは、一人ひとりのメンターが、その人であるからこそ出来る子どもたちへの関わり方を大切にしているからです。
メンターの性質や信念、そして境遇によって子どもたちへの関わり方は少しずつ異なります。
そこに、メンターとしての欠点や美点の両方を含んだ魅力があり、
互いの凸凹を補い合うようにメンターたちが存在しています。
実践探究のメンターってどんな人がやっているんだろう?
子どもからよく名前を聞くメンターってどんな人たちなんだろう?
などなど、気になっている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回はメンターの1人である「ゆーせー」へ行ったインタビューをお届けします。
彼のライフストーリーを通して、実践探究のメンターにはこんな人物がいるということ、メンターがどんなことを考えているのかが伝われば幸いです。
それだけでなく、
彼のライフストーリーが、この記事を読んでいる皆さまご自身の人生や、目に映るお子さんの人生と接点を持ち、
メンターと子どもたち、そして恐らく保護者の皆様にも、ある共通点があることに気づいてもらえたら嬉しいです。
ではでは、ゆーせーのライフストーリーを追っていきましょう。
ゆーせーってどんな人?
今年の春に大学を卒業し、現在は小学校の教員を目指して免許の取得などに励んでいます。
探究学舎には2021年のはじめから関わっており、現在は中高生クラスのグループファシリテーターや実践探究のメンターとして力を添えてくれています。
探究学舎のほかにも、大学1年生の頃からインターナショナルの保育園でのお仕事を続けています。
教室に行くといつも子どもたちの誰かが「ゆーせー!!」と声をかけている様子が見られるほど、あたたかく優しい姿勢で子どもたちからも人気と信頼を集めているメンターです^^
(ちなみに、この記事を執筆している私は、たまたま彼と大学の学部学科の同期なのです!)
実践探究は、1人の人生に向き合う仕事
ーー実践探究はどうですか?
楽しいですね。率直に。
実践探究のこと何もわからないまま始めて、
最初は「子どもと遊ぶだけでお金がもらえるなんて素晴らしいな!」と思ってたくらい…
でも、メンターのみんなを見てるうちに、子どもたちへの接し方とか色んなことを考えるようになってきた。
中高生クラスにはないおもしろさと大変さがあるね。
ーー中高生クラスと、どんなところが違う?
実践探究は、フィルターを介さずに、ありのままの自分で子どもたちに接することができる感じがして、そこが違うかな。メンターである自分自身が無理せずにいられる。実践探究が始まってから、探究学舎での居心地が良くなった。
ーー逆に、大変だなって感じるのはどんなこと?
そもそも探究学舎って私塾っぽくないけど、実践探究はそれ以上に私塾っぽくない、学童のような要素がある場所。
それで、中高生の授業は「興味関心の種をまくこと」が中心にあって、学びをより深められたらOKなんだけど、実践探究は個人に寄り添う事業。
1つの居場所のような側面もあるからこそ、
その子の人生を考えた接し方をしなきゃいけない気がして、常に「その子のためには?」を考えることにおもしろさと大変さを感じるかな。
どの程度子どもたちの意思や自由を尊重したら良いのか、とか、難しいなぁと思うことがいっぱいある。
ーー確かに、中高生って子どもたちと私たちファシリテーターの意志を超えたところに共通の、「興味を持つ」「学びを深める」のような1つの目標があると思うけど、実践探究って一人一人によって目標が全然違うもんね。しかも、今はまだ霧がかかっていて、目標がどこにあるかもわからないことも多いしね。人生に、長期的な寄り添いをしているよね。
そうそうそう。
児童期って本当に、めっちゃ重要な時期だと思うから、テキトーにはできない。
ーー児童期の重要性を感じたのは、教職の勉強などをしている中で?
長く続けている保育園のバイトで、幼児期に人格の基礎って形成されるんだなぁって思う経験が多くて。
だから、俺は小学校の教員を目指してるけど、それも人間的な部分に関われたらと思ってのことなんだよね。
ーー小学校の教員を目指していたんだね。人間的な部分の涵養に教師が関わるには、他の課程よりも初等教育課程が良いって思ったの?
極論、幼稚園の先生でも良いとは思うんだけど、学校って1日の半分以上を過ごす場だから。小学校でどういう教育を受けるかがめちゃくちゃ重要だって考えてるんだよね。
紆余曲折あった将来の仕事探しーパッと思い浮かんだ、子どもたちと一緒に遊んでいる風景
ーーいつから教員を目指し始めたの?
最初から教員を目指してたわけじゃないんだよね。
教員を目指すまでに「挑戦してみよう」って思ったことが2つあった。
ーーそうなんだ!どんなことだったの?
1つは役者。個性派俳優に憧れていて、他の人になりきって演技をするってすごい面白いなぁと思って、養成スクールに通ってたんだ。作品にも出演したし、すごく楽しくて面白かった。
ーー全然知らなかった!楽しいけど、続けて行きたいとは思わなかったんだね。
自分の中に「その時やっていることには全力を出さなければならない」って考えがあって。
例えば、役者を目指すってなったら映画をめちゃくちゃ観るなり、映画監督がよくいくと言われている居酒屋に行って学べるチャンスを覗ったり…本気で役者を目指す人はそういうことをやるって思っていて。
ただ、そこまでして頑張れない自分がいて。
遊ぶにもバイトするにも「今これしてて良いのかな」って思っちゃった時期があったんだよね。
「一回決めたからにはやり切らなきゃ!」って思ってたけど、もう一回考え直してみようと一旦お休みしてみたら、めちゃくちゃ楽になったんだよね。
それが新しい道を色々考えるきっかけになった。
ーーそうだったんだね。そして、2つ目の挑戦に?
2つ目がアパレル業界。これは何か具体的に行動に移したわけじゃないんだけど、色々調べてた。幼い頃からファッションがすごく好きだったから。でも就職のことを考えると、なんか違う、ファッションは仕事ではなく趣味だなと思ってやめた。
ーーそうだったのか〜。それで、ついに教育に?
そう。それで、「人生どうしよう?自分は何をしていたら楽しく働けるかなぁ」って自分の将来を想像したときに、子どもたちと校庭で遊んでいるシーンがパって浮かんできたんだよね。
「そっか、子どもと関わることなんだろうな」って腑に落ちて、そこから小学校の先生を目指すようになった。
それで、「やばい!免許持ってない!」って思って免許の取得を目指したり、親から探究学舎を教えてもらったりして今に至ります。
ーーパッと浮かんできたっていうのが素敵だね。
そういう過程で無意識に、子どもの個性を尊重して、好きとか得意を見つけて伸ばしてあげたいって教育観が芽生えてきた。
子どもの居場所となって、誰でも自己肯定感を感じられるような場所づくりをしたいって思うようになってきた。
きっとどんだけ自信がない子にも、好きなこと得意なことって何かしらあると思っていて。それを見つけて伸ばすことに力を入れたいって考えてる。
探究学舎に来て気づいた、自分の「好き」「得意」ー子どもたちと関わること
ーー紆余曲折ありつつも、もう3年ほど教育に邁進してるよね。
そう!やればやるほど、やってみたいことが増えるのが今までと違うかな。
子どもたちと遊ぶのがめちゃくちゃ好きで、大学で軽く喋るくらいの友だちと遊ぶくらいなら、子どもたちと遊んだ方が楽しい(笑)
母親に昔、「ゆうせいは教員に向いてるよ」って言われてたんだけど、反抗心があったし、なんとなくお金持ちになりたかったから最初から除外してたんだよね。
でも、他の分野と比べてよく考えた時に、子どもと関わることが好きで得意だし活かしたいと思った。
保育園のバイトも何も考えずはじめて、もう5年近く経った。園長先生の次に長い古株になっちゃった(笑)
ーーお金持ちになれるかどうかは気にしなくなったんだね(笑)
今は全く気にしないわけではないけど、それ以上に自分の好きなこと得意なことをやりたいなって気持ちが大きくなってきた。
一度きりだからなぁ人生。楽しいことやろうって思うようになってきた。
ーー素敵だね。そういう風に思えるようになったきっかけってある?
探究学舎かなぁ。ここに来た最初の頃は、周りのスタッフを見て、優秀でよく出来る人が多いなぁと感じたんだよね。だから、教育の分野で俺やっていけるかなぁ?実力が必要だよなぁって不安に思った。
でも、探究学舎で時間を過ごす中で、段々と「俺ほど子どもと同じ目線で遊べる人いないだろ!」って得意なこと活かせれば良いんじゃないかなと思うようになってきたんだよね。
やりたいことがいっぱいの人生ーまずは「先生に話したい!」と思ってもらえる先生に
ーーそういえば、教育系で起業したいって言ってたよね?
学校を作りたいっていうデッカい夢がある。
妄想が好きで、老後までプランが決まってるから(笑)
ーー人生に対して前向きで積極的で、人生100年時代が似合う人だね。
ポジティブに考えるの得意かも。
生きられるなら150まで生きたい!ってくらい長生きしたいし、色んな妄想しちゃう。
ーーじゃあ、教員もそんなに長くは考えてない?
先生として働くのは10年未満かなと思ってる。
学校で働いた上で、もう一回探究学舎に関わりたいとも、留学したいとも思ってるし。
それに、学校を作るならおじいちゃんになってから作っても意味ないし…
来年から先生として働き始めれば、本格的に動いていくと思う。
ーー留学は何を学びたいの?
北欧の教育を学びたいって思ってる。
まぁ。全部ただの夢物語ですけどね(笑)
親からは、考えてばかりいないで行動しろ!って言われるけど、良い方向にやりたいことがどんどん膨らむから楽しい。
ようやく教育っていうやりたいことと、やるべきことが明確になって来たから、あとはやるだけ。
ーーまず次のステップは先生だね。どんな先生になりたいの?
学校では探究学舎と同じように子どもたちに接することはできないけど、
学校には沢山の友だちもいるから、あまり積極的に関わりすぎないべきだと思ってる。
でも、何か楽しい嬉しいことがあった時に「先生に話したい!」って思われる先生になりたい。しょうもないことでも。
編集後記
今でこそ、教育の領域でやりたいことがいっぱいだと目を輝かせ、教員を目指して邁進しているゆーせー。しかし、自分のやりたいことが教育だと気づくまでには、寄り道も葛藤もありました。このことは、自分の「好き」「得意」「やりたい」に気づくまでの道が、必ずしも一直線ではないのだということを示唆しているように思います。
そして、「実践探究が始まってから、探究学舎での居心地が良くなった」のは、ゆーせーが実践探究でメンターを務めることを通して「自分は子どもたちと関わることが好きで得意」ということに気づいたからなのではないでしょうか。
人がいつどんなタイミングで自分の「好き」や「得意」、そして「やりたい」に気づくのかは誰にもわかりません。大人にも子どもにも、他者にも自分にも。気づくこともあれば、気づかされることもあり、両者は一本の線で切り分けられるものではないようです。ゆーせーは子どもたちに伴走しながら、逆に子どもたちに伴走してもらっていたのかもしれません。
「好き」「得意」「やりたい」が明確な子どもたちに勢いある伴走をするだけでなく、それらがまだ心の内側に眠っている子どもたちと、共にゆっくり歩んでいきたいと思う次第です。
企画・編集・執筆:ちひろ
今は実践探究でメンターをしたり、文章を書いたりしています。
感動したことや葛藤したこと。感じたことを言葉にすることで認識できる自分の世界は広がると信じて、子どもたちの心の中を言葉にするお手伝いに努めています。
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子どもたちの「好き!」「やってみたい!」は千差万別です。
何が正解なのか、成功なのかは誰にもわかりません。
子どもたちとご家族とメンターが、関わりの中で一歩ずつステップを上り、積み上げ、作っていく。そのプロセスが豊かで、尊いものであるということこそ、わたしたちが「実践探究」を通して伝えていきたいことです。
実践探究は現在試行錯誤しながら、探究学舎三鷹教室にて運営しています。
ご入会を検討されている方、どんなプログラムなのか詳しく知りたいという方は、以下のメールまでお気軽にご連絡ください。
practice@tanqgakusha.jp(担当:宮脇)
※実践探究は2023年8月をもってサービスを終了いたしました。今までありがとうございました。
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