好奇心旺盛な息子とどう向き合う?三国志を愛すレイくん一家の日常
探究学舎には、探究したい対象が明確で、そこに没頭している一途な子もいる一方で、興味が移り変わる子どもたちも沢山います。
そんなお子さんがいる親御さんの中には、興味の対象が定まらず、あちこちへ興味が移っていく我が子に不安を感じる方もいらっしゃいます。
今回は、そんな方にとってのヒントになればと、三国志を愛しつつも、その他のことへの好奇心が止まらないレイくんと、その親御さんの関わり方についてインタビューを実施いたしました。
もともと戦国武将が好きだったレイくんは、探究学舎の「戦国英雄編」と「戦国合戦編」を受講し、さらに歴史の楽しさに魅了されたそう。
「明治維新編」受講後は、家族で「長州藩・吉田松陰先生の一生を巡る旅」「土佐藩・坂本龍馬さんの軌跡を辿る旅」「日野市・新撰組に触れる旅」などをして楽しんだこともあったそうです。
(長州藩・吉田松陰先生の一生を巡る旅)
三国志や歴史にとどまらず、スポーツやYouTubeなど興味の対象がとても広いレイくんですが、彼のお姉ちゃんは歴史一筋。そんな対照的な兄弟に、親御さんはどのように向き合っているのか、インタビューを通して迫ります。
記事執筆に際しての、親御さんからのメッセージもぜひご覧ください。
探究学舎で多くの人と関わる中で、色々な子育て(子どもの特性、親の関わり方)があるなー、と思いました。自分の子どもと同じようなタイプはいるか、その子はどんな探究をやっているか、そして、親はどんな伴走をしているのか。一つの事例として受け取り、「ここの部分ならできる、参考にしたい」と思っていただける部分があったら嬉しいです。
<以下インタビュー>
ーレイくんのマイ探究
探究学舎(以下、探):今日はよろしくお願いします!早速ですが、最近力を入れて取り組んでいるマイ探究(自分なりの問いを持って取り組む探究活動)があると聞いたのですが、それについて教えてもらえますか?
レイくん(以下、レ):YouTubeに歴史に関する動画をアップしています。動画の内容は、三国志に関するクイズが中心です。
チャンネル名は、「龍」という字が好きなので「龍チャンネル」にしました。
三国志では、民を愛した「劉備玄徳」、義を重んじる最強の「関羽雲長」、天才軍師の「諸葛亮孔明」が好きです。龍チャンネルでは、孔明から一文字もらい、「龍明」と名乗っています。
三国志の魅力は、三国が義を貫きながら、戦うところです。三国志検定に合格したいと思い、皆と一緒に勉強できるようクイズを作ることにしました。是非、チャレンジしてみてください。
探:なるほど、では早速1問クイズを出してください!
レ:赤壁の戦いで周瑜が使った策とは?
探:あ、それレッドクリフっていう映画で見た記憶がある。。火のついた船を相手の陣に放ったりしていなかったっけ??
レ:答えは火攻めです!
探:え、これ正解??
レ:正解です!
探:おぉ!やった!シンプルに嬉しい笑 とまぁ本題にいきたいのですが、マイ探究を始めたきっかけなどがあれば教えてもらえますか??
レ:小学三年生の三学期にYouTubeが好きになって、将来の夢がユーチューバーになりました。そこで自分の好きなものと掛け合わせて夢への第一歩として何かを始めようと思いました。歴史が好きなのですが、中でも横山さんの三国志の漫画が好きだったので、三国志チャンネルにしようと最初から考えてました。
(レイくんおすすめの三国志のマンガ)
探:将来は歴史系ユーチューバーとして活躍していきたいの?
レ:いや、将来はフィッシャーズみたいにアスレチックとかを紹介するユーチューバーになりたいなと思ってます。
父:まずはYouTubeの仕組みを学ぼうと思ったんじゃないの?
レ:そうそう、だからまずはきっかけを見つけて、動画を撮影してみようと思ったんだ。
母:詳しくお伝えすると、今年の春ごろから息子の「三国志」ブームが始まりました。そんな中、『三国志検定』があるのを知り、息子が「受けたい」と言い出したのですが、2008年に第一回、2012年に第二回が実施されて以降、次の検定日は決まっておらず、検定用のテキストもありませんでした。
(棚には刀や三国志の漫画がぎっしり)
そこで、私とパパも案を出して、三国志検定を目指す子どもたちに向けて三国志×YouTubeでやってみよう!となったんです。「PCを使いこなしたい」という思いも強くなり、毎朝、タイピングの練習も始めました。
子どもの「知りたい!」「やってみたい!」が確実に増え、世界が広がっているのを実感しています。「これをやっている時は楽しい!」と夢中になっている我が子の姿は、親として最高のギフトです。
探:ご両親のサポートやアイデアも素敵ですね。レイくんは撮影の際に苦労したことはある?
レ:最初のエピソード1は慣れていなくて動画編集がすごく難しかったけど、二回目からは、だんだんできるようになってきた。
探:全部自分でやっていたの??
レ:いや、動画編集とか音声をくっつけるのはパパがやってました。
(動画撮影セットもご家族で購入したとのこと)
母:まだまだ学ぶことは一杯あるけど、それも含めてマイ探究だよね。
ーご家族の伴走
探:なるほど、家族で協力しながら取り組んでいたんだね。その中で嬉しかったことなどはある?
レ:YouTubeを始めて、学校ですごく有名になった。
探:有名になったの!?すごいね!
母:実はお姉ちゃんが自慢げに友達に拡散したそうです。それがきっかけでどんどん広まっていきました笑
探:なるほど、そうだったのですね。お姉ちゃんは拡散の協力をしていたとのことですが、ご両親の関わり方はどのようなものでしたか?
母:クイズを作った時に、それがあってるかどうか、史実に忠実かどうかを事細かにチェックしています。しっかりとした情報を載せることが大事だと思っているので。
探:今、どれくらいの数の動画があるのですか?
母:エピソード7までできてますね。それぞれのエピソードにつき3問くらいを上限として、5分から6分くらいで長くなりすぎないように気をつけています。最近は、本人もプチ情報とかトリビアとかを入れるように工夫をしているようです。
父:クイズだけでは、三国志を知らない人が楽しめないので、事前に予備知識を紹介してからクイズを出したり、クイズを出した後に補足情報を入れるなど、一緒に工夫してますね。あとは編集する中で、画像を差し込んで、見た目もユニークになるようにサポートしています。
ーマイ探究を通した成長
探:なるほど、色々な面で一緒になって取り組んでいらっしゃるのですね。マイ探究を経て、本人やご家族にどのような成長がありましたか。
父:人前で話をする自信はついたなと見ていて感じています。YouTubeで自分の動画を出すということは、多くの人に見られてコメントをもらうということ。オンラインの世界で人前に立つ経験を経て、人前で話をするスキルの向上を感じています。
探:不安になったり、ためらったりすることは無かったのですか?
父:そこはあまりなかったですね。むしろ、今まで以上に自信をつけているのを身近で見ていて感じます。
母:最初は緊張してましたが、カメラの前に立つ姿が、どんどん自然になってきたように感じます。
父:以前は何度も撮り直していたんですが、最近はワンテインクで撮影できるようになってきました。そこで自信と噛まないスキルを身につけたみたいですね笑
探:ワンテイクはすごいですね!当社の講師でも、動画撮影でたまに噛むことはありますよ笑
母:カンペを使ったりするのですが、それを意識させないような視線の動かし方も身につけてきました。
父:レイが最終的に目指している人たちは、やはり話術が巧みですよね。
探:今後どのようなことをしていきたいかなど、目標はありますか?
レ:もう少し大きくなって、社会が落ち着いたら中国に行って、曹操のお墓とか、三国志に関係するものを色々見てみたいなと思っています。
母:赤壁とか行きたいね!三国志ゆかりの場所だし。
レ:諸葛亮孔明の扇子を友達が中国で買ってきてくれて、家にも飾ってあります。いつかは、自分の足でその場所を訪れてみたいなと思います。
(お家にはその他にも歴史関連のグッズが沢山)
ー家庭での我が子との関わり方
探:三国志以外にも興味の幅が広いレイくんですが、レイくんらしさの表れた、ご家庭での印象的なシーンなどあれば教えてください!
母:例えば、デンマークに旅行に行った方のお話を聞く機会があったのですが、その時すぐに地球儀を持ってきて場所を調べたり、疑問に思ったことを調べ始めたりした時は嬉しかったですね。親が調べてみなよって言う前に、自ら調べ始める。些細なことだけれど、とても嬉しいですね。探究学舎に通い始めてからその変化をすごく感じています。自ら探究する習慣が身につきつつあるのではないかなって思えて母親としてはとても嬉しいです。
探:インタビュー前にも、僕の出身地を地図で調べているのを拝見したので、本当に日常から起きている光景なのだなと感じました。お家の壁にも戦国時代の地図が貼ってあったり、興味を持たせるしかけが多いですよね。
母:最近私は、質問を思いつくことも才能だと常々伝えています。疑問を持ち、それを解消するための質問を用意すること。質問力も探究する上での大事な要素ではないかなと思います。
探:インタビューにおける質問もまさにそうですね。
母:あとは、探究学舎で出会った仲間は大事にしてほしいなと思いますね。継続的に深く付き合える人間関係を築いてほしいので、そういったコミュニティは大切にしてほしいです。そして相手のことをより深く知る上でも、質問力は大切だなと感じています。
探:ご家庭でのアプローチが、質問力を育んでいるようにも感じます。
(家の壁に貼られた戦国時代の地図やマイ探究)
ー大切にして欲しいこと
母:あとは「ごめんなさい」と「ありがとう」は生活していく上での潤滑油だと伝えてます。言葉はケチらず惜しみなく注ぎなさいと。
探:なんだか凄く含蓄があります。。兄弟2人とも、いつも感謝を忘れず、とても素直だなと思っていたのですが、ご両親が普段から言葉を届けているからこそなのかなと思いました。
父:質問力については、親目線でも伸びてきているなと感じています。お願い事をする時などに非常に上手い質問をしてくるので、思わず可愛くなってプレゼントを買ってしまったりしましたね笑
母:普段のコミュニケーションを通して、子どもたちの成長が実感できたり、自分の子どもに対する接し方を見直すことができているので、今後も続けていきたいなと感じます。
探:日常の対話が、物事を探究していく土台を作っているのですね。親御さんからの愛と承認が惜しみなく注がれているなと、お二方の一挙手一投足から感じます。
母:そして一番は、「Are you happy?」と聞かれて「Happy」と答えられる子どもたちに育って欲しいなと感じています。自分の人生にとっての幸せをたくさん見つけて欲しいですね。お風呂場で歌を歌っている時もそうだし、マイ探究をしている時もそう。どんな些細なことでもいいんです。
父:全部が幸せということ、毎日が幸せしかないということは人生においてないとは思います。不幸なことだって時には起こるし、悲しいことに向き合わなければいけない時もあります。でも2人にとって、毎日のほんの一瞬でも、幸せだなと感じる瞬間が増えればいいですし、自分でそのきっかけを作り出せる人になって欲しいなと思ってます。誰かに幸せを運んでもらうことを期待するのではなく、自分で生み出していく。そうすれば幸せな人生を送れるのではないかなと考えています。
探:非常に深く、示唆に富んでいますね。日常の関わり方にも参考になる部分が多々あり、対話の方法や質問力なども大変勉強になりました。インタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました!
ー後日談
自分の興味のあることに積極的に挑戦してみるレイくんは、お子さんのために動画編集を学ぶお父様や、日々我が子の成長を喜び、楽しみながら伴走するお母様に囲まれながら、興味の芽を広げていました。
ご家族の雰囲気や、子育てにおける考え方や声かけなど、参考になる面も多々あるのではないでしょうか。
しかし、そんなレイくんのYouTube チャンネルは、実は10回で止まっており、おそらく、今後の更新もないようです。この点についても包み隠さず書いてくださいとメッセージをいただきました。
本来であれば、興味を持って続けて欲しいという願いもありそうなところですが、ご家族なりの考え方があり、それも合わせて伝えて欲しいとのこと。
ということで、最後に親御さんからのメッセージをご紹介して、本記事を締めくくれればと思います。
やっちゃん(代表:宝槻)も言っていますが、探究に通う子どもたちは皆、それぞれです。さかなクンのように一つのことを突き詰めるタイプもいれば、我が子のように広く浅く色んなことに興味を持っちゃうタイプなど、いろいろです。
3年前、初めて探究の保護者会に参加した時、講師の方が「僕が『関ケ原へ行きたい』と言った時、母親が連れて行ってくれて。それが嬉しくて、今の歴史愛につながっている」と話してくれたんです。その時に、私の子どもたちへの伴走方法が決まったような気がします。
家族で一緒に日野へ何度も行き、レイが「Youtuber になりたい」と言えば編集を学び、「釣りがやりたい」と言えば一緒に釣りへ行き、「岐阜城へ行きたい」と言えば行きました。時には一緒にサッカーまでやってます(笑)
すぐに結果が出なくてもいい。ひとつに定まらず、いろんなことに手を出してもいい。その時、その時が真剣だったら。すべて将来につながるから大丈夫!と信じています。
とはいえ私も、ギフティッドのお子さんが多い探究で、「学校が楽しい!」と普通に登校している我が子は逆に大丈夫?と不安になることもありました。(何が普通か、は置いておいて)
ちょっと声をかければ、自分でどんどんやっていく子どももいれば、ママと一緒でないと出来ない子もいる。一口食べて大好物になる子もいれば、いろいろ食べてもまだまだ本当の大好物に出会えてない子もいる。レイと同じようなタイプの子どもたち(とその保護者さんたち)が、記事を読んで「わかる、わかる!」となってくれたら嬉しいです。
先日、レイのクラスで「一冊の本から~ビブリオバトル~」が開催されました。お気に入りの本を紹介し、どの本が読みたいか?を決めるのですが、予選を勝ち進み、本選でもしっかりプレゼンし、なんと「チャンプ本」に選ばれました。彼が選んだ本は「弱すぎ古生物」でした(笑)
選書もプレゼン力も探究学舎で出会い、育ててもらったレイの大切な強みとなっています。探究学舎は、そのまんまを受け入れてくれる安心の居場所ですが、その次のステージとして、子どもたちが「自分の強み(自信)」を育む場所なのかな?と勝手にイメージしています。
広く浅く興味を持つ我が子を受け入れ、その時その時が真剣であればいいと見守るご家族のみなさま。真剣に楽しんでいれば、いつかその経験が活きる時が来るという言葉がとても印象に残りました。
多様な個性を認め、誰かと比較するのではなく、その子の中から湧き上がるものを大切にするご家族のあり方は、幸せそうな笑顔と相まって、とても素敵に映りました。
レイくんのご家族が伝えてくださったように、本記事が多くの保護者の皆さまに届き、参考になったり、共感につながれば嬉しいなと思います。
(ライター:ホッシー)