マルチタスクの罠に気をつけろ!-プログラミング的思考で仕事の生産性UP!#06-
マルチタスクが生産性を上げる?!
マルチタスクという言葉を聞いたことがありますか?
「マルチ」とは、英語の「multiple」(複数の)や「multi-」(多重の)に対応する接頭語で、複数のものが存在することを示します。
そこから「マルチタスク」とは、複数のタスクを同時に処理することを指します。
一度に複数の仕事を片付けるのですから、マルチタスクの能力を身につければ生産性を上げられそうですよね。
生産性とは、いつも書いているようにこちらです。
生産性=成果/時間
よって、生産性を上げる方向性としては大きく2つでした。
①「時間」を減らす
②「成果」を増やす
つまり、マルチタスクで仕事を片付けるというのは、分母を徹底的に減らす、ということです。
しかし、実は「マルチタスクが生産性を上げる」とは言い切れないので注意が必要です。
なぜなら、ある意味では正しいですが、別の確度から見ると間違っているからです。
つまり、マルチタスクには罠があるのです。
マルチタスクには2つの意味がある
実はマルチタスクの意味を正確に理解すると、2つの概念をもっていることがわかります。
1つは、同じ時間に複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと。
例えば、洗濯機をまわしながら掃除機をかけたり、食洗機をかけながら家族との団らんを楽しむ、自分以外のメンバーに仕事を任せて自分は別の仕事をこなす、といったように、もう一方の仕事に自分が関わらなくても勝手に実行されるケースです。
このnoteの執筆もそうです。
前回から引き続き、調べ物をする手間を省くために、chatGPTをフル活用しています。
知りたいことをchatGPTに問い合わせて、その回答を待っている間にnoteに戻って書けるところを書いておきます。
そして、タイミングをみてchatGPTの回答を確認する、といった感じです。
以前は・・・
Googleで検索
↓
結果に表示されたサイトからめぼしいものをピックアップ
↓
個別アクセス
を繰り返し、ほしい情報が手に入ったらnoteの執筆に戻る、という感じでした。
いま思うととても効率が悪く、既にもうその頃には戻れません。
わずか数週間ですが、この変化と進化は、個人的にスマホを手にした以来の衝撃です。
ちなみに、このように同時に1つの仕事しかやらないことを「シングルタスク」と言います。
女性に比べると男性はマルチタスクが不得意・・・なんてことが言わますがどうでしょうか?
家事を旦那さんに任せると、一つずつしかやれなくて時間がかかり奥さんがイライラ・・
しかし、マルチタスクが得意かどうかは性別というより個人差が大きいように思いますね。
ちなみに私はせっかちなので・・・
例えば食器洗いをするときには左手と右手で同時に違う動きをします。多くの人が片方の手を止めがちなところを見ると、わりと特殊なスキルなのかもしれません。
(右手と左手を同時に違う動きをするというのは、ボケ防止になるような気もするのですけどね)
さて話を戻します。
マルチタスクのもう一つの概念は、時間差で複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと。
例えば、朝出勤してメールを処理していると、急に上司から呼ばれて急ぎの仕事をふられ、その仕事を片付けながら合間に緊急メールにも対応していると、今度は電話がかかってきて・・・
なんていう日常が、どこにでもあるのではないでしょうか。
仕事でなくても、お子さんを育てている家庭では、仕事に家事にと毎日がマルチタスクですよね。
ちなみに私もまさに、毎日がそんな日々で目がまわりそうです・・・
このように、2つの概念は違うものなのに、同じマルチタスク、という言葉を使うので時々混乱が生じている気がします。
これが、マルチタスクの罠です。
マルチタスクが生産性を下げるって本当?
同じ時間に複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと
時間差で複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと
2つを比べると、後者はすごくキツそうではありませんか?
脳みそや身体に負担がかかりそうです。これでは、生産性が上がるどころか逆に下るのではないかと心配するのも無理はありません。
実際に、その懸念はあたっています。
時間差で複数のタスクをこなすには、タスクの切り替えにかかる時間や、タスクを完了するために必要な注意力や集中力が分散されてしまいます。
だから、頑張るほどに楽になるどころかストレスや疲れが増加する可能性があるのです。
休憩するとか、優先度の高いものから着手する、といったノウハウもあるにはあるのですが、そもそも人間の脳は、同時にいくつものタスクをこなすことに向いていません。
過度なタスクの処理はストレスや疲労を引き起こすので、自分の限界をしっかり把握しておかなければいけないのです。
コンピュータはどうやってマルチタスクをしているのか?
ところでコンピュータにも、マルチタスクの考えが取り入れられています。
メール、ブラウザ、チャット、Officeなどなど、いくつものアプリケーションを同時に立ち上げてもちゃんと動くのは、コンピュータが短い時間間隔でタスクを切り替え、複数のタスクを同時に処理することができるからです。
少し専門的になりますが、コンピュータがマルチタスクを実現する方法は2つあります。
①マルチプロセッシング
CPU(中央処理装置)という人間の脳みそのようなものを、複数もつコンピュータは、タスクをそれぞれのCPUに割り当てて同時に処理します。CPUは高価なのでコストがかかりますが、高速処理を必要とする場合にはこの方法を使います。
②マルチスレッディング
タスクを実行する処理のことをプロセスと呼びますが、このプロセスをスレッドというさらに細かい単位に分け、同時に複数のスレッドを実行します。これにより、複数のタスクを同時に実行できます。私たちが普段PCやスマホでいくつものアプリケーションを同時に動かしているのは、このマルチスレッディングのおかげです。
先ほどの同じ時間に複数の仕事(タスク)を同時にこなすことと、は①
時間差で複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと、は②と同じです。
コンピュータは人間と違って疲れないから、②のようなマルチタスクが実現できるってことですね。
これを人間に適用しようとしてはいけないのです。
プロジェクトマネージャーを見習え
では、人間がマルチタスクのメリットだけを手に入れて生産性を上げるにはどうしたら良いでしょうか?
そのヒントは、プロジェクトマネージャーの仕事にあります。
プロジェクトマネージャーというのは、プロジェクトのゴールを達成するために、限られた予算とリソース(人員や使う資産など)を駆使して、最大限に品質を高めるためることがミッションです。
IT業界に限らず、いわゆるプロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーは、マルチタスクが得意なはずです。
なぜなら、何をどうすれば効率よく成果を上げられるか?ということを日々考えているからです。
ここからはお金や品質の話を混ぜるとややこしくなるので、純粋にリソース(人員)のことだけに絞ります。
例えばあるプロジェクトに3名のメンバーがいるとします。
通常はメンバーごとにパフォーマンスや得意分野が違ったりするのですが、複雑にすると難しくなるのでここでは3名とも同じレベルだとします。
プロジェクトにはたくさんの仕事(タスク)があるので、決められた期限内に終わらせるには、いつ、誰が、何をやるべきか真剣に考えなければいけません。
実施するタイミングや順番を間違えると、手戻りが発生したり待ち時間が発生したりするのでムダが生じてしまうからです。
そこで、いつ、誰が、何をやるべきかを考えるために、プロジェクトマネージャーはWBSという方法を使います。
WBSでタスクを分ける
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクトを管理するための手法です。
プロジェクトのタスクを網羅的に分解して構造的に整理することで、プロジェクトの計画を立て、関係者と調整し、監視やコントロールがしやすくなります。
WBSなんて初めて聞いたという方も、構造化という言葉は聞いたことがあると思います。
自分で自分の仕事を管理するために、影響のある仕事を把握したり、優先順位をつけたりすると思いますが、それと同じです。
ちなみに構造化について学びたい人は、この本が詳しいです。
プロジェクトのように大きな仕事は、まず小さなタスクに分解することで、扱いやすくします。そして、上から下へいくに従って詳細します。
タスクを分ける、という視点で書かれた本はたくさんありますが、この本がとても参考になります。
タスクを細かく分けて構造化したら、次にどうすればマルチタスクで実行できるかを考えます。
ここで使うのは、マルチタスクの1つ目の概念、同じ時間に複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと、です。
つまり、複数のメンバーがそれぞれのタスクを同時こなせるように、ムダのない組み合わせ方を考えるのです。
ムダ・ムリ・ムラのない完璧なWBSをもとに、スケジュールを立て、プロジェクトをマネジメントする姿は美しいです。
えぇ、理想だけでいえば・・・
(実際にはなかなか難しく、だからこそ面白いとも言えます)
マルチタスクの概念は、先ほど2つあると書きました。
同じ時間に複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと
時間差で複数の仕事(タスク)を同時にこなすこと
このうち、プロジェクトマネージャーがやっているのは前者のマルチタスクだけです。
ただ、プロジェクトが逼迫してくると一人がいくつものタスクを並行してこなさなければいけない事態になることもよくあります。
これはまさに、時間差で複数の仕事を同時にこなしていることに他なりません。
いかに大変なことかは既に書きましたので、、、勧めない理由がお分かり頂けるでしょうか。
最後に、これらを私たちの仕事に活かす具体的な方法を考えてみます。
①自動化する
数年前に小学生向けに実施したお弁当づくりのワークショップを紹介します。
料理の話ですが、ご自身の仕事に置き換えながら読んでみてください。
料理をしたことがある人は分かると思いますが、料理は手際良く進めることが重要です。
同時に何品も作るために、頭の中で、何をどの順番で、どう進めればムダがないか??ということを必死に考えていると思います。
(料理の手際が良い人はマルチタスクが得意のはず)
おにぎり、ゆで卵、たこさんウィンナーにデザートのオレンジ。
1品ずつ作ると合計22分かかるお弁当を、マルチタスクの考え方を使って半分の時間で作るにはどうしたら良いでしょう??
というのがお題です。
まず、それぞれの調理を細かく分解します。
こんな感じで、一つ一つの作業と所要時間を書きました。
このお弁当づくりには、1つ大きな制約があります。
それは、コンロが1つしか使えないということです。先ほどのコンピュータの話でいえば、CPU(頭脳)が1つしかないということですね。
なので、タコさんウインナーを焼くことと、ゆで卵を作ることは、同時には実行できません。
でも、おにぎりを作りながらゆで卵を作ることはできます。
(ご飯は炊きあがっている前提)
という感じで、どのタスクを同時に実行することができるのかを見極めることができれば、何を、いつ実行すればよいかも見えてきます。
ちなみに、小学生たちは高学年ともなると、あーでもないこーでもないと悩みながらも10分ほどで回答にたどり着くことができました。
仕事も同じです。
自分一人でたくさんの仕事をこなさなければいけないときは、無理にあれもこれもと手掛けるのではなく、手を離しても勝手に実行されるタスクを作るのがコツです。
朝のうちに上司に稟議の承認を依頼しておけば、帰るまでには完了している、などもそうです。
いわゆる「段取り」が仕事においては重要、と言われる理由がここにあります。
chatGPTのようなAIを活用することも、今後はマルチタスクで生産性を上げる手段になりそうですね。
②自分以外の人に任せる
先ほどのお弁当づくりですが、もっと短い時間で済ませるにはどうしたら良いでしょうか?
そうです。CPUであるコンロを増やせばよいのです!
そうすれば、焼いたり茹でたりが同時にできますよね。
これを仕事に置き換えると、自分の代わりに仕事をしてくれる人を作る、ということになります。
優秀な部下や手伝ってくれる人ををたくさん抱えることができれば、自分の生産性も上がります。
自分ひとりがあれもこれもと頑張ってたくさんの仕事をやるよりも、手伝ってくれる人に任せた方が楽になる、ということです。
そうはいっても・・と言っている限り、マルチタスクの罠に陥って疲弊するばかりです。
ここは一つ、CPUを増やすことに労力をかけることとしましょう。
それが、自分自身の生産性だけでなく、チーム全体の生産性を正しく上げることにも繋がります。
さて、次回のテーマは「デバッグ(不具合を取り除くこと)」と生産性です。
ではまた。