情報Ⅰ試作問題を分析!子どもたちに求められる本当の思考力とは?②
寒くなったり暑さが戻ったり、を繰り返しているうちに、気づけば11月も終わろうとしています。
12月に突入すると、一気に受験シーズンへ突入なので、受験生のいる家庭は落ち着かない毎日ですね。
さて注目している大学入学共通テストの情報Iについて最近、いくつかのオンラインセミナーで情報共有がありました。
大学、高校、予備校といった各現場にいる先生たちから、情報Iという科目の位置づけ、大学入学共通テストに情報Iを加える目的、先日の試作問題の解説と今後への対策、情報Iの授業の組み立て方、など盛りだくさんの情報が共有されました。
情報Iは現時点で配点が100となっており、大学によって重み付けは違うにせよ、重要度は概ね他科目と大きく違わないだろう、と予想されています。
そうなのでしょうが、これ受験生にとっては一大事です。
実績がないから対策を立てづらい。
練習に練習を重ねて、本番で着実に点をとりたい受験生にとっては、辛いですよね。
そう思いながら聴いていたら、何人かの方が、こんな内容のコメントをしていました。
高等学校学習指導要領 情報1には、以下のように目標が記載されています。
「問題の発見・解決」という目的を達成すること、その手段として情報と情報技術を活用すること、そのための力をつけることが情報Iの目標である、と書かれています。
セミナーの中では、こんなコメントもありました。
2023年春には、多くの大学にデータサイエンスや情報系の学部や学科が新設されるそうです。
国内で最初に設置した滋賀大学をはじめ、既に多くの大学にデータサイエンスを学べる学部や学科がありますね。
私が本業として籍をおいているコンサルティング業界でも、いまデータ活用という分野がとても注目されています。
データサイエンティストという事象から数理モデルを使る人たちだけでなく、データを解析して真実を見つけるデータアナリスト、そういった人たちにビジネス現場のニーズを伝える翻訳者であるビジネストランスレーター、はたまたデータそのものを整備するデータエンジニアなどなど。
どれも私が就職活動をしていた時代にはなかった職種です。
そうした現状を目の当たりにしているので、世の中で求めている人材を育てる大学、大学が求める人材を育てる高校、という形で繋がっていることや、それが正しい動きであることを、現場にいる一人の人間として実感しています。
しかし、です。
受験生にとってはまず、目の前の点数が一番ダイジなはず。
セミナーの中でも語られていましたが、授業時間が少ない(1年生時に2コマのみ)ので、数学や地理などの科目に応用して活用経験を積むことが重要になりそうです。
探プロとしては、日常で使う機会を増やすことを勧めます。
しかも、高校で勉強してから使ってみる、ではなく、できれば中学校、小学校、入学前の段階から、少しずつその練習を積めると良いです。
そこでこのnoteでは、情報Iの授業がどうあるべきか?大学入試の試験対策として何をすべきか?という話ではなく、情報Iで求められているチカラを身近な日常の中で身につける方法を探ることにします。
さっそく試作問題をみてみます。
大学入試センターで公開している、11月に行われた大学入学共通テストの情報I試作問題はこちらです。
そして、学習指導要領に示されている4つのテーマとの関連は以下の通りです。
第1問と第2問は、情報リテラシーを問う問題だったり、知識がなくても問題が理解できれば解けるので、ここではより思考力を求められる問題に絞って見てみます。
まずは第3問。
こちらは、買い物で代金を支払う際の「上手な払い方」とは何かを考える問題です。
問題文の最初に例としてあるように、460円の商品を買うのに510円を支払って50円玉をお釣りでもらうようなケースを、アルゴリズムを組んで考えるものです。
この問題で私が注目するのは、問題文の最初にあるこの部分です。
上手な払い方のアルゴリズムとは具体的に何か??という点については、実際の問題文や解説を読んで頂くとして、ここではこの1行に着目します。
なお、解答はこちらにあります。
冒頭で情報Iは、「問題の発見・解決」という目的を達成すること、を目標にしていると書きました。
この1行は、その『問題の発見」をする上で非常に重要な1行です。
そもそも問題とは何でしょうか?
私が参考している実教出版の情報I教科書では、以下のように定義されています。
そして、このギャップを解消することが問題解決である、と書かれています。
教科書ではこのあと、問題を明確化するためには目標を設定すること、と続くのですが、その際に非常に重要な確認作業があります。
それは
誰の問題を解決しようとしているのか?
を明らかにすることです。
例えば、試作問題にあるようなケースだと、代金を支払う際の「上手な払い方」が問題解決の手段だとして、それは誰にとってのどのような問題を解決しようとしているのか?ということを最初に考えることがとても重要なのです。
数年前に小学校でのプログラミング教育が流行っていた頃、いろんなところでアルゴリズムやプログラミングを学ぶワークショップや授業が行われていました。
でもそれらのほとんどが、既に問題は明らかになっており、解決手段を考えるところからスタートしていたので、非常にもったいないと思いながら見ていました。
問題を発見することの方がもっともっと面白くて、価値のあることなのに、と。
問題発見において、「誰の?」を考えることはとりわけ重要です。
なぜなら、そこを間違えると全く違う方向で問題解決をすることになってしまうからです。
例えば先の「上手な払い方」の話でいえば、支払うAさんにとって重要なことは、小銭のたくさん入った財布を軽くすることなのでしょう。
でもお金を受け取る店員Bさんにとって重要なことは、引き算しやすい金額で払ってもらうこと、かもしれません。
店員Bさんの問題を解決するならば、この問題の答えは460円ぴったりで支払うか、500円、1000円といったキリの良い金額で支払うことです。
でもAさんの問題を解決する場合には、最終的に手持ちの小銭がたくさん減ることが「上手な払い方」となります。
ちなみに、この問題文にはまだ続きがあります。
単に受け取る枚数をへらす、だけでなく、支払う枚数と受け取る枚数の合計が最小になることを「上手な払い方」と定義しています。
小銭を減らすつもりで払うのなら、支払う枚数は最大で釣り銭の枚数を最小に、というアルゴリズムですよね。
となると、この問題の当事者はできるだけ小銭を触りたくない人??
何れにせよ、はじめに、解くべき問題は何か?を捉えることは非常に重要です。
そして、上手な払い方とは何か?をちゃんと定義すること。
これらが、問題解決を始める前にすべき大切な考え方です。
社会で向き合うことになる「問題」は本当に様々で複雑ですから、そもそも解くべき問題は何か?を捉えることが非常に難しくなっています。
問題解決の手前で躓いたり、頓挫したり、諦めたりすることが実際にはとてもたくさんあります。
そもそも問題に気づかないケースはもっとたくさんありますし。
学校の現場だけを見ていると、そうした実態がなかなか伝わらないのではないか?という点が気がかりです。
解くべき問題さえ決まってしまえば、あとはスキルとツールを駆使して解決に勤しめば良いのですが、難しいのはその手前であって、そこの難しさに大人たちは日々、苦悩しながらも知恵を振り絞っているわけです。
そういった生々しい話なんかを、本当はもっと伝えられると良いのではないかな、と思ったりもします。
次に、問題を発見するチカラを日常の中で身につけ、鍛えていくには何をすれば良いのか?ということを考えてみたいと思います。
次回は、過去に小学校の授業で実施させてもらったワークショップを紹介します。
ではまた。