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フグタ社長業務日誌『ご挨拶の猛特訓』

このシリーズは2007年9月~2008年9月まで1年にわたる、福田康夫総理の「首相動静」を基にしたフィクション(パロディ)です。※巻4は自2008年1月1日~至1月31日。

フグタ社長業務日誌(巻4-2):1月7日(月)

 新年会のパーティーが重なる。あっちへ出てこっちは出ない・・というわけにもいかないので、掛け持ちで走り回ることになる。

 午後1時50分、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ着。午後2時、ホテルニューオータニ内の宴会場「鶴の間」へ。同2分から同25分まで、経済3団体主催の新年祝賀パーティーに出席。非常に晴れやかである。知った顔も多い。もう少しゆっくりしていたいが、そうもいかない。

 一旦会社に帰って、今度は違う業界団体の新年会へ顔出し。4時過ぎに会社を出る。車は赤坂でも銀座方面でもなく、北へと向かう。上野を過ぎ、気づけばあたりは、どことなくうら寂しい。
 日暮里駅前のホテルラングウッド着。聞いたこともないホテルの宴会場で、そそくさと挨拶を済ませる。売れない演歌歌手のキャンペーン気分である。10分ほどで退席。

 会社に戻ればもう5時半だ。口直しにどこか飯を食いに行きたいのだが、恐い顔で秘書が立ち塞がっている。
 来週、会合でスピーチをするので、今夜はそのための「勉強会」をすることになっているのだ。
 台本は土曜日に社長室のニハシ課長が届けてくれて、ほぼ九分どおり出来上がっている。それを読みながら、手直しをして完成に持っていく。いわゆる、通しリハ。
 午後6時54分、社長会議室へ監禁される。鍵がかけられ、秘書がディレクター役となりマンツーマンでリハーサル開始。

 ・・・・う〜ん、ちょっとそこ噛みました、口もぐもぐしないで! もう一度
 ・・・・下向いちゃダメです、原稿棒読みしない! しっかり前向いて!
 ・・・・そこはもう少しゆっくりいきましょう、感情込めて、滑舌に気をつけて
 ・・・・時々テレビカメラ見ましょうね、赤いランプついてるとこ、  はい、目線こっち!
 ・・・・「とうやこ」です、洞爺湖にルビふっておきましょうか? 読めますか?
 ・・・・全体で2分押しです、少し巻いていきましょう

 秘書から再三ダメ出しされる。日ごろの鬱憤を晴らそうとでもいうのか・・。午後10時6分、疲れ果てて「勉強会」ようやく終了。隠し芸大会の堺正章さんのご苦労がよくわかる・・。

 ほっとしたところに、秘書が言う。
 「明日、午前中、総務の担当も交えておさらいしますから、ちゃんと覚えてきてくださいね」

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注:
日暮里駅前の「ホテルラングウッド」はもともと労働者福祉を目的に中央労働福祉センター(旧労働4団体:総評・全労・新産別・中立労連)が所有・運営していたホテル。経営が困難となり現在ではアートホテルの系列になっている。
来週の会合とは「国会」である。漢字の読み間違いが命取りとなるため首相の所信表明演説の猛特訓が行われたと思われる。
「隠し芸大会の堺正章」とは1964年から2010年までお正月に放送されていたフジテレビ系の大型バラエティ番組で、タレントの堺正章が毎年見事なかくし芸を披露して話題となっていたことを指す。
※『フグタ社長業務日誌:ご挨拶の猛特訓』は、ブログ『tanpopost』に2008年1月9日 付けで掲載したものです。


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