【読書メモ】 『 HEALTH RULES 』 津川友介
■ はじめに
もし病気になってしまったら、どんなにお金や自由があっても、それらを利活用して幸福を感じることは難しくなってしまう。健康は人生の目的では無いものの、幸福になろうとしたら健康を維持する必要がある。顔や脳梗塞になる確率をゼロにすることはできないものの、日ごろの生活習慣を変えることでリスクを避けることができる。私たちが日々行っている一つ一つの小さな選択を見直すことで、自分の人生をコントロールする力を持ってほしい。
注意しなくてはいけないのは、あなたが意識している知識が本当に信じられるものかと言う点だ。エビデンスにも確かさのレベルがある。本書はエビデンスの確かさに徹底的にこだわった。高度な手法で行われ、査読された論文だけを取り上げている。この本の大きな特徴は「情報の正しさ」にある。
■ RULE 1 睡眠
睡眠時間が足りていないことによって生じている問題を、睡眠の質を改善させることで解消することができない。睡眠に関しては、質より時間の方がはるかに重要である。健康を維持するためには、少なくとも7時間の睡眠時間が必要だ。睡眠の質を考えるのは、まず7時間の睡眠時間を確保してからの話である。
睡眠時間が6時間未満の人は、病気になるリスクが高くなり、睡眠時間が短い人ほど肥満のリスクが高い。また、睡眠不足は仕事の生産性を下げる。睡眠時間が短いほど仕事でのミスが多くなる。自覚している眠気の強さと水の頻度は比例していない。つまり、自分が眠気を自覚しているかどうかは関係なく、睡眠不足は気づかぬうちに私たちの生産性を落としている。対策としてアメリカで高校の授業時間を1時間遅らせたら、生徒の睡眠時間が34分増え成績が平均で4.5%向上した、という研究がある。
■ RULE 2 食事
食の分野における研究の数は多く、エビデンスの層が厚い。健康に悪い(脳卒中・心筋梗塞、・がんなどのリスクを上げる)と考えられている食品は、①赤い肉(牛肉や豚肉) と加工肉(ハムやソーセージなど) ②白い炭水化物 ③バターなどの飽和脂肪酸である。逆に健康に良いと考えられている職員は、①魚 ②野菜と果物(フルーツジュース・じゃがいもは含まない) ③茶色い炭水化物 ④オリーブオイル ⑤ナッツ類の5つである。
赤い肉を食べる場合は高温調理ではない調理法を選択し、また焦げた部分は避けた方が良い。白米の摂取は1日2杯以下にとどめる。日常的に使う油は、バターよりもオリーブオイルなど植物性の油にする。
魚は1日60グラム以上、野菜や果物は1日400グラムぐらい食べた方が良い。1日50グラムの白米を玄米に置き換えることで糖尿病のリスクが下がる。オリーブオイルやナッツ類といった地中海食を積極的に取り入れると良い。
■ RULE 3 運動
1日10,000歩という数字には、実は永らく何の根拠もなかった。最近の研究では、7500歩以上歩くことで健康上のメリットがあり、12,000歩以上は歩いてもメリットは少なそうである。また定期的にランニングしている人は、していない人よりも寿命は約3年長い。
大人は週150〜300分間の中強度の運動(早歩きや階段の上り下りなど)、もしくは週75〜150分間の高強度の有酸素運動(ジョギングなど)をすることが推奨されている。
これに加えて週2回の(体にあるすべての主要な筋肉を使った)筋肉トレーニングをすることで、健康上追加のメリットがある。特に普段運動をほとんどしていない人が、少しだけ運動した場合に得られる健康上のメリットが一番大きい。
■ RULE 4 ダイエット
肥満は、2型糖尿病や脳梗塞・心筋梗塞・ガンなどのリスクを上げる。ダイエットの基本から言うと、摂取したカロリーよりも消費したカロリーの方が多ければ人間は痩せる。シンプルな「引き算」である。体重を減らすのが目的であれば、最も効果的なのは食事を変えることであり、運動はそれと比べると影響は小さい。同じカロリーや同じ糖質量であっても、体重への影響は違う。例えば、野菜や果物の種類によって体重への影響は異なる。澱粉質の多い野菜の摂取量が増えている人は太る傾向にあり、食物繊維が多くグリセミック指数が低いものは痩せる傾向にあることが明らかになった。
糖質制限ダイエットについては、体重を減らすという目的は達成できるかもしれないが、死亡率が高くなるなど健康を害してしまうリスクが報告されている。また最新の科学では、炭水化物をうまく選んで味方につけることで、空腹を我慢するなどのストレスを感じることなく健康になり、痩せることができると考えられている。炭水化物の摂取量が多すぎても少なすぎても不健康になってしまう。
食事制限をせずに運動のみで体重を減らす事は難しい。消費カロリーの大部分は基礎代謝であるため、身体活動量を増やしても消費カロリーはあまり増えない。また運動をすることで、基礎代謝が落ちてそれ以上エネルギーがマイナスの状態にならないようにストップするメカニズムが働く。運動のみで痩せようとするならば1日60分以上の運動が必要である可能性がある。
■ RULE 5 お酒・タバコ
脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化で血管が詰まる病気に関しては、アルコールは少量であればリスクはむしろ下がる。その一方でガンに関しては、アルコールは少量であってもリスクは上がる。遺伝的にリスクの低い人であれば1日1〜2杯のお酒を嗜むように飲むことは問題ないが、がんのリスクが高めの人はアルコールの摂取量を最低限に抑えることをお勧めする。
煙草が体に悪いことは自明である。喫煙よって肺がんや慢性閉塞性肺疾患のリスクが高くなることが証明されている。主流煙による健康被害があることは、もはや議論の余地はない。また受動喫煙によって、日本では毎年15,000人もの人が命を落としている。加熱式煙草の蒸気に含まれるホルムアルデヒドの量は紙巻きタバコの74%であった。また加熱式タバコの副流煙は見えないしわかりにくいため、妊婦や子供が知らないうちに喫煙してしまっている可能性もある。喫煙者は他人に迷惑をかけない形でタバコ吸う行為は認められるべきだが、受動喫煙は他者危害の問題なのできちんと規制されるべきである。
■ RULE 6 入浴
日本人のお風呂好きは有名である。週2回以上浴槽入浴する欧米人が3割以下のに対して、日本人は平均週5回も浴槽入浴を行っている。安土桃山時代の終わりに銭湯が出現し、江戸時代初期には、肩まで浸かれる深い浴槽が登場した。
入浴には健康上のメリットがある可能性を示唆されている。浴槽入浴することで痛みが緩和される。また浴槽入浴やサウナ浴は、血管が拡張し血圧が下がることによって脳卒中や心筋梗塞などの脳や心臓の病気のリスクが下がる。サウナ浴は、心臓疾患による突然死のリスクも下げると報告されている。一方で不安定狭心症などの心臓の病気、コントロールされていない高血圧症などがある人では、これらの病気を悪化させるリスクがある。また乾燥肌で痒みがある人の場合、熱すぎるお風呂に長時間つかることで症状が悪化する可能性もある。
■ RULE 7 ストレス
ストレスとは「外からかかる力によって物質に生じる歪み」という意味を持つ。現代人は生命の危機によってではなく、人間関係や悩みなどよってストレスを感じるようになった。そのようにして過剰分泌されたストレスホルモンが、我々の健康や体調に様々な悪影響を与えている。ストレスを感じている人ほど脳卒中や心筋梗塞のリスクが高い。さらに、これらの疾患のリスク上昇は女性の方がより高い。一方いずれの種類のガンに関しても、仕事のストレスとガンのリスクの間には関係性が認められなかった。もっとも、既にがんを発症している人においては、ストレスがガンを悪化させやすくなることが報告されている。また、ストレスはうつ病などの精神疾患、胃潰瘍などの消化器疾患、不眠症、免疫機能にも影響を与える可能性が示唆されている。
ストレスの解消方法としては、運動や、家族や友人との会話、瞑想のような健康的なものが推奨される。ストレスはその他の生活習慣とも絡み合っているので、健康を維持するためには全てをバランスよく改善させる必要がある。
■ RULE 8 アレルギー・花粉症
免疫とは、人間の身体を異物から守るための機能のことである。しかし、私たちの身体にとって無害であるはずの食物や花粉などが体内に侵入したときに、免疫機能が過剰に反応してしまい、その結果として様々な症状を発症してしまうことがある。この現象をアレルギーと呼ぶ。異物に免疫担当細胞が反応し、アレルギーを起こす状態になる。これを「経皮感作」と呼ぶ。肌を健康に保ちバリア機能を維持することで、アトピー性皮膚炎の発症を抑えることができる。また、異物を口から摂取することで、アレルギーを予防する可能性がある。より早期にアレルゲンを経口摂取する事は、アレルギー発症の予防に有効である。
花粉症は日本人の4人に1人がかかっている。対策として最も効果的なのは、原因となる花粉にできるだけ曝露しないことである。医学的な介入としては、症状をコントロールする対症療法と、根本的に花粉症直す根治療法がある。対症療法としては、抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン薬や鼻噴霧用ステロイド薬がよい適応となる。根治療法としては、アレルゲン免疫療法が取り入れられる。減感作療法と、舌下免疫療法がある。
■ RULE 9 サプリメント
日本の健康食品・サプリメントの市場規模は約1兆4000億円である。様々な研究が行われているが、その大多数が期待されたような効果を得られていない。サプリメントは健康に有害な成分を含むことがあり、薬や他のサプリメントと一緒に摂取すると健康に有害な作用を及ぼす可能性がある。サプリメントに対する規制は弱く、安全性や有効性に関する国の機関による評価はほとんどされていない。バランスのとれた食事によって、多くの場合健康維持するのに必要なビタミンや栄養素は充分摂取できる。一方、妊娠する計画がある女性や骨粗しょう歴がある人など、サプリメントを取る必要がある人もいる。
■ RULE 10 新型コロナ・かぜ・インフルエンザ
コロナウィルスは風邪の原因ウイルスの1つだ。新型コロナウィルス感染症の症状は風邪やインフルエンザと近く、初期の症状では鑑別することがしばしば困難である。実際に約8割の患者は初期は風邪のような症状で、重症化することなく1週間ほどで自然治癒する。重症化する新型コロナウィルス感染症では、まず風邪のような症状が1週間続き、その後に咳・痰・呼吸困難などの症状が出現する。嗅覚障害・味覚障害は約3割の患者に認められ、若者と女性に多く見られる。風邪は、安静・水分・栄養補給により自然に手する病気であり、ウィルスに効果のない抗生物質は不要である。インフルエンザも同様である。抗ウィルス薬はあるものの、症状を半日から1日ほど短くする位の効果しかない。健康な人であれば、自宅で寝ているだけでインフルエンザは治る。ただしインフルエンザが重症化するリスクが高い人は、抗ウィルス薬を服用する必要がある。
感染経路は3つの疾患とも同じで、飛沫感染と接触感染の2つがある。飛沫が届く範囲はおおよそ2メートル。ウィルスは手からは感染しないが、ウィルスが付着した手で粘膜に触れることで感染する。新型コロナウィルス感染症の場合では症状が出る前でも感染力があるため、元気な人でもマスクをつけるのは重要である。感染を避けるためには、密閉空間・密集場所・密接場面を避ける事が大切である。
■ RULE 11 ワクチン
ワクチンとは、細菌やウィルスなどの病原体から作られたかあるいは昔特化された貢献のことである。病原体を弱毒化して摂取することによって作られる。日本は国と比べてワクチンに対する信頼度が低く、「自分の子供にワクチンを摂取している」と答えた人の割合も低い。新3種混合ワクチンの副反応が引き金となり1994年に予防接種法が改正され、すべてのワクチンは義務規定から勧奨規定に緩和され、また集団接種から個別接種に変更された。
インフルエンザワクチンの集団接種を中止した頃から日本でインフルエンザや肺炎による主に高齢者の死亡が増加したとされており、小中学生にワクチンを接種することで高齢者がインフルエンザから守られていたことがわかった。インフルエンザワクチンの集団接種により年間37,000から49,000の命が救われると設計される。性交渉の経験のある人の約80%はHPVにー感染している。子宮頸がんの95%以上はHPV感染が原因であるが、これらはHPVワクチンよって予防することができる。また、これによって子宮頸がん自体のデスクを検証させることもわかっている。しかし日本ではHPVワクチンの積極的な接種鑑賞は何年も中止されていたため、子宮頸がんによる死亡者数は増えている。ワクチンは健康な人に投与するものであるが、「ワクチンを接種しないことをリスク」は極めて高い。
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