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『論文の書き方』 小熊 英二

読んだ。『論文の書き方』小熊英二

・論文は、相手を説得する技法から発展したものである。主題提起→論証→主題の再確認 という構成が原型となり、現代アメリカでは「序論・本論・結論」という形式の「エッセイ」が教えられている。自然科学など実験を行う研究では、導入(主題提起)→資料と方法(過程の公開)→結果→考察という「IMRAD」と呼ばれる構成が用いられる。

・「主題」は抽象的な問い、「対象」は具体的に調査できるもの。主題を考えるときは、対象とその調査「方法」も考える。主題を決めるには、先行研究を知ることが大切である。主題設定は問いの設定でもあるので、疑問形にして「リサーチ・クエスチョン」として書くとよい。主題は「Why」、対象は「What」、方法は「How」。

・よい先行研究を探すには、大きな図書館(できれば大学図書館)に行き、自分の関心に近そうな研究書や論文を探して、そこに書かれている「先行研究の検討」を読むとよい。また、自分の関心分野の研究にある程度詳しくなったら、ネットで検索すると便利である。
 ①Google Scholar ②CiNii Articles ③Webcat Plus ④NDL Search ⑤J-STAGE

・方法を組み合わせて調査の全体を設計していくことを「方法論」「リサーチ・デザイン」と呼び、これを料理にたとえると「レシピ」にあたる。「仮説検証型(演繹)」「仮説生成型(帰納)」「仮説演繹化型(仮説を作りながら仮説検証を繰り返す)」などのリサーチ・デザインを取る。その中で、探索型・記述型・比較型・因果型 の調査方法を組み合わせることが、よく行われる。また、調査目的によって「サーベイ」と「事例研究」を使い分ける。

・「学」とは、ある「前提」をもとに論理的な認識を行うこと。前提が変わると「学問体系」が変わる。前提の異なる学問体系が多数存在する。数値化や因果推論を重視する学問体系もあれば、社会規範の構築過程の記述を重視する学問体系もある。自分に適した学問体系を考えて、主題を設定するとよい。

・また、画期的な研究は異なる学問体系の統合や越境をした、学際的研究から生まれることが多い。多くの論文では、先行研究や方法論を検討しながら、自分がどの学問体系(理論的フレーム)にもとづいて方法論を組み立てているか、を示している。

・量的調査の方法
 ①計量分析 ②質問紙(調査票)調査 ③実験 ④内容分析(テキストマイニング)

・質的調査の方法
 ①インタビュー ②オーラルヒストリー ③会話分析(言説分析/ナラティブ分析) ④フィールドワーク(参与観察/エスノグラフィー) ⑤アクション・リサーチ

・インタビューには「無作為抽出」と「便宜標本化」がある。また、知りたい内容を得るのに最適だと判断で対象を選ぶ場合は「判断標本化」という。事実に関する情報を取得するには構造化したインタビュ
ーが適しており、当人の印象や見解を知るには非構造化インタビューの方が向いている。

・アクション・リサーチは、調査者が調査対象の状況になんらかの働きかけをして、その反応を記録し分析するものである。関連したものとして、調査者が自分自身の経験を記録する「オートエスノグラフィー」という方法もある。

・研究計画書に盛り込む内容(例)
 ①研究テーマ ②研究内容 ③理論枠組(理論仮設&作業仮説) ④研究対象 ⑤研究方法 ⑥先行研究および関連資料 ⑦研究用機材・研究費用 ⑧研究日程 ⑨本研究の意義 ⑩本研究の限界

・論文では「パラグラフ・ライティング」の考え方が有効。ひとつのパラグラフがひとつの内容を持ち、全体の主題を論証するように構成する。パラグラフの冒頭には、その内容をしめす「トピック・センテンス」を書くのが原則。また論文を書く際には、その学問体系における用語の定義に従うべきである。

・論文の構成表
 ①メインの主題を論証するためのサブ主題を派生させる ②サブ主題の論証を担当する「章」をいくつか発生させる ③それぞれの章に、それを論証するための二次サブ主題をいくつか派生させる ④二次サブ主題の論証を担当する「節」が章の中に派生する ⑤章や節の冒頭には、それぞれのサブ主題を示す「小さな序論」が書かれる ⑥章や節の中の文章は、それぞれのサブ主題の論証のために書かれる ⑦章や節の最後には、「小さな結論」が書かれる。

・論文には必ずレファレンスをつける。これによって追検証が可能になる。記載のやり方は多様であるが、提出先から指定がある場合はそれに従う。
 レファレンスの書き方(例)
 ①著者名・論文名(書名) ②掲載誌名・巻号 または 収録書籍名・編者名 ③出版地・出版社・出版年 ④ページ ⑤(webサイトの場合は)url・アクセス日

・論文の基本的な審査ポイント
 ①主題が明確に提示されている ②論拠をもって論証されている ③結果が新しい貢献であることが示されている

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