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2022年夏、青春18きっぷを使った伏線回収旅 ” 旅先で『日常』を走る ~spin-off⑫~ 後編 "
【前回のあらすじ】
お盆休みを使って、かつて日本海側を旅した際に行きそびれた場所へ足を運ぶ「伏線回収旅」を決行した。ここまで、" 銀山温泉入浴 " と " 万代バスセンターのカレーライス " を回収した。
8/15 終戦記念日に新潟県を横断する
万代バスセンターの立ち食いそば屋で無事にカレーライスのブレックファーストを摂った私は、その後新潟駅に戻り各駅停車で一路長岡駅へと向かった。この区間で上越新幹線を使わなかったのは、この旅では『青春18きっぷ』を使って移動しているからである。
10:09 長岡駅に到着。
駅改札外のトイレで着替え、コインロッカーにキャリーバッグを突っ込んで、私は駅舎の外に出た。曇天模様で辺りには小雨が降りしきっている。
駅前広場には花火の打ち上げ台のモニュメントが飾られていた。
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長岡といえは、まず思い浮かぶのは花火大会だ。毎年8/2・3の2日間に渡り繰り広げられる大花火大会は、その壮大さが日本全国に知れ渡っている。しかし花火大会がこの日程になった原因が長岡空襲にあることは、あまり知られてないようだ。
” 長岡空襲の始まった時刻(8月1日午後10時30分)にあわせて花火を打ち上げます。空襲で亡くなられた方々への慰霊、復興に尽力した先人への感謝、恒久平和への願いを込めて、白一色の尺玉3発を打ち上げるとともに、市内寺院の協力を得て同時刻に慰霊の鐘を鳴らします。”
コロナ禍で昨年一昨年と花火大会は中止になったが、8/1の22:30に打ち上げられる3発の白菊だけは止めることなく続けられた。
今日は8/15、いわずと知れた終戦記念日。
まずは戦災資料館に足を運ぶことにした。
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先客は2名。終戦記念日にしては寂しいと感じたのだが、別にここに来なくても戦争について思いを馳せることはできる。館内の展示物や映像などを鑑賞し、長岡空襲について理解を深めることにした。
新潟市が原爆投下先の最終候補地5ヶ所に選ばれていたことは知っていたが、ギリギリでそこから外れたために長岡が空襲に見舞われたこと、同日に富山・八王子・水戸でも大規模な空襲があったことなどを知ることができた。
外に出たところで、どうやら雨は止んでいるようだ。せっかく長岡で下車したので、ここでも走りたい。路面は濡れているが、足元に気を付けながら軽く走ることにした。
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長岡の駅前は歩道のみ屋根が付いたアーケードになっている。まずはアーケード沿いに1㎞ほど進んで行く。歩道を歩いている人はほとんどいない。市街の中心地がロードサイドに移っているのと、駅ビルと周辺の建物を結ぶペデストリアンデッキ(空中回廊)が縦横無尽に張り巡らされているためであろう。
アーケードを抜け、そのまま幹線道路沿いを直進する。
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右手にサバイバルゲームグッズの専門店を見つけた。かつて戦争によって大きな痛手を負った土地でも戦争ごっこに加担する商売が成り立つことは皮肉ではあるが、一方で健全なことだとも感じた。なんでも「ごっこ遊び」は楽しいのだ。それを楽しむ自由が担保されていること、それこそが平和なのだと思う。
しばらく進んだ後、路地を右に入って行く。
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そのまま、人気のない住宅街を進んで行く。
信濃川の土手に突き当たり、その階段を上がる。右手には、なんか進んでいいのかよくないのかわからない道がある。
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一方、左手の道にはそんな面倒くさいことは一切書かれていない。
左手の道に入るとすぐに、モニュメントがあった。
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『模擬原子爆弾投下地点』
” 原爆の実戦での使用に備えて、原爆投下に専念する部隊が新たにつくられ、アメリカ国内の砂漠などでくり返し投下訓練を行いました。1945年(昭和20年)に部隊はマリアナ諸島のテニアン島へ移動し、日本の地理に慣れ、目標へ確実に投下するため日本の都市に原爆の模擬爆弾(通称「パンプキン」)を投下しました。1945年(昭和20年)7月20日から8月14日までの間に49発が投下され、1,600人以上の死傷者が出ました。”
私は目を閉じ掌を合わせ、この戦争でお亡くなりになった方々のご冥福を祈った。
土手を下り、さらに先に向かう。先ほどまでの風景とは打って変わって、見渡す限りの畑。農道を進んで行く。
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進んで行くと、また土手に突き当たる。上って、土手の道を右に進んで行く。
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そのまま道なりに進み、橋を渡る。周囲が徐々に賑わっていく。市街地の中心に向かっているのだ。
しばらく進むと、立て看板が目に入った。
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ノルディックウォーキング! 私がランニングと同様に愛好している趣味だ。しかし、このために作られているコースを目の当たりにすることはほとんどない。熊本の江津湖で発見して以来2ヶ所目である。
などと感動しているうちに、花火大会の観覧スペースにたどり着いた。
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祭りの後の静けさよ。
その先で右に舵を切って、私は長岡駅に戻った。
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今度は、ぜひ8/1に来て3発の白菊をこの目で見てみたい。
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続いてはJR信越本線で直江津駅まで出て、そこから第三セクターの『妙高はねうまライン』で高田駅まで移動。
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ここから次の目的地に向かって、テクテクと歩きだした。駅前商店街を抜け、住宅が並ぶ路地を進んで行く。
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和洋折衷の教会などを横目に進むと、川面一面に蓮が植えられている光景が目に入った。
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この橋を渡った先にあるのが、高田城だ。
” 高田城址公園は、徳川家康の六男、松平忠輝公の居城として築城された高田城の跡に造られた公園で、全体が新潟県の史跡に指定されています。(中略)公園の面積は約50ヘクタールあり、市街地の中心部に位置する公園としては、全国的にも有数の規模を誇っています。”
どうやら今渡った橋は外濠にあたり、その内部が高田城址公園として整備されているようだ。
さっそく、内濠ごしに三重櫓を写真に収める。
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ここ高田城は、桜の名所として有名だ。
じつは、私が所属するランニング部で『城ラン』という各自が城まで走って写真を撮りメンバーの投票で優勝者を決めるイベントが春先に開かれた。優勝者は、この高田城を撮影したクイーンだった。
そしてなぜかこのイベントには、私が現地まで赴くという優勝特典が付与されており、律儀な私は、このように旅の途中に無理をして高田城に寄り道したという経緯なのだ。
ちなみにクイーンと同点優勝したN瀬さんは、パリのノートルダム大聖堂で撮った写真をアップしていた。彼女はフランスの三ツ星レストランのソムリエなのでさもありなあんだが、さすがに渡仏するにはいろいろと障害がある。来訪は、またの機会にしよう。
電車の時間が迫って来たので、滞在5分ではあるが高田城を後にする。
高田駅から、まずは直江津駅まで戻った。
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北陸新幹線のルートからは外れてしまったが、それでも変わらずに直江津は交通の要衝だ。やはり線路の本数は半端ない。
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駅を出て、お目当ての店まで急ぐ。なにしろ乗り継ぎ時間は45分くらいしかないのだ。
道なりにしばらく進んで行くと、突然日本海が眼前に広がった。
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遠すぎてその姿を確認することはできないが、この対岸にロシアや北朝鮮があるのだ。
海岸沿いに進むと、お目当ての店『かけそば つかだ』に到着した。駐車場に地元のタクシーが停まっている。タクシーの運ちゃんが利用する店にハズレはない。高まる期待を胸に、のれんをくぐった。
券売機で注文したメニューはコチラ。
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『天玉中華』。おそらく330円くらいだった。
この店では普通の蕎麦も置いてあるのだが、蕎麦の代わりに中華麺を使ったメニューも当たり前のように存在している。ランチを摂りそびれてしまった私が車中でこの近辺のお店を調べた中で、圧倒的に評判がよかったのがここだったのだ。実際に食べてみると、そばつゆやかき揚げとの相性が抜群でまったく違和感がない。この旅一番の新発見だ。
電車の時間が迫ってるので、食後はそのまま駅に戻り糸魚川駅行きに乗り込んだ。
小一時間で糸魚川駅に到着し、ここからはふたたびJRに乗り換えて大糸線で進んでいく。
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大糸線は松本と糸魚川を結ぶ路線だが、南小谷駅を境にJR東日本と西日本で管轄が分かれている。開通以来一貫して乗客が少ない糸魚川→南小谷間を廃線にする方針が、先日JR西日本から発表された。
通勤や通学客がメインとなる地方路線だが、特に目立った産業もなく山々に阻まれ県境も越えていくこの区間を、日常的に行き来する人はほとんどいないだろう。実際、今この車両に乗車しているのは私のような18キッパーばかりだ。
南小谷駅で信濃大町駅行きに乗り継いだ。
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18時過ぎに、今日の宿泊地である白馬駅に到着した。
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白馬は最近では軽井沢に次ぐ別荘地として脚光を浴びていると長野県出身の知り合いに聞いていたのだが、駅周辺は昭和のリゾート地そのままの趣きだ。スキー客が押し掛ける冬季の方が賑わうのだろうが、それにしても開いている店は少なく、閑散としている。
しばらく山側に進んで行く。道路沿いにパタゴニアのアウトレット店舗を見つけた。バスターミナルにはモンベルの店舗もあるらしい。昭和の時代から街の中心は移動しているということなのだろう。
などと思いを馳せながら進んでいるうちに、目的地に到着した。
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白馬八方温泉『みみずくの湯』。
ここで長旅の疲れを癒すことにしたのだ。
入浴料とタオル代で750円ほどをフロントで支払い、木造で天井が高い浴場に足を踏み入れる。地元の人らしき面子でかなりの賑わいを見せている。大きな木製の浴槽がひとつ。足を存分に伸ばしてくつろいだ。
風呂上りは夕涼みを兼ねて、すっかり暗くなった細道をGoogleの案内を頼りに進んで行く。なんの目印もない道を10分ほど歩き、今日の宿に到着した。
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時刻は19:30。周囲には別荘が点在している他はなにもなく、木々が生い茂り虫たちが競いあって声を張り上げている。街頭もろくになく、宿の中から漏れてくる灯りが暖かく感じられた。
玄関の無人チェックイン機を操作しているとこのゲストハウスのオーナーが通りかかり、私の代わりにテキパキとチェックインを進めてくれた。その後貯まった洗濯物をランドリーで洗濯している私に親切に操作説明をしてくれたり、1.5km先のコンビニに買い物に行く際には自転車を貸していただいた。親切だ。
ところが貸してもらった自転車は後輪がパンクしていたり、またライトが電池切れで頻繁に消灯してしまうなどかずかずのトラップが仕掛けられていた。
買い物を済ませ這う這うの体で宿の近くまで戻ると、オーナーは宿の玄関の外に立ち懐中電灯で道を照らしながら待っていてくれた。気を配るポイントが若干ずれているぞ! と心の中でツッコミを入れつつも、その親切さをありがたく感じた。
*
8/16 去年立ち入れなかった黒部ダムにリベンジする
一夜明け、8/16 朝6:30。目覚めると、視界に広がる風景は朝靄に包まれた白馬の森。
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朝寝坊を好む私でさえ魅了されてしまうほどの、すがすがしい朝だ。
手早く着替えを済ませチェックアウトして、外に出る。もう少し早起きしてこの一帯を軽く走ればよかった。そう思ってしまう。
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しかし、後悔先に立たずだ。諦めて次の目的地に向かおう。
白馬駅から各駅停車で信濃大町駅に移動し、バスで扇沢に移動した。
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すでにこの時点で周囲を囲む山々の絶景にすっかり魅了されてしまった。この地は、これから進んでいく黒部アルペンルートの玄関口なのだ。
まずは、あらかじめ購入しておいた切符を発券した。発車まで30分ほどあるので、駅舎2階にあるレストランでブレックファーストを摂ることにした。
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ジャジャーン! これが黒部名物『ダムカレー』だ。ライスが黒部ダムの形状を模しているという、それだけが特徴のごく一般的なカレーだった。ちなみに店内では『プロジェクトX』の神回と定評のある、黒部ダムの回が流されていた。風の中の昂、砂の中の銀河。
食後は電気バスの乗車口に向かう。ギリギリお盆明けの今日ではあるが、まだまだ結構な混雑ぶりである。
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立山連峰の山を貫いた長いトンネルを通行するため排気ガスをまき散らすわけにはいかずつい最近まではトロリーバスを運行していたが、代替わりして電気ガスが新登場したという次第だ。
バスは無事に黒部ダム駅に到着した。そこから200段以上の階段を上がり屋外に出た。さらにそこから、今度は同じくらいの数の階段を下っていくと、眼前に黒部ダムの雄姿が飛び込んで来た。
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数年前にブラタモリを観るまでまったく興味がなかった黒部ダム。去年のお盆に来訪を試みたが大雨で立ち入り禁止になっていたため、足を踏み入れることができなかった黒部ダム。さらに、全線運休となった信濃大町駅で足止めをくらい、タクシーで松本まで移動した忌々しい思い出が蘇る。
二年越しのリベンジ達成だ。感無量……
さらに階段を下って、観光放水を観賞する。
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勢いが派手な割に、下に流れている川の水流は緩やかだ。放水がかなりの量に見えるのもミストのマジックなのだろうか。
続いては、黒部ダム建設に至るまでの壮絶なエピソードを学ぶ。
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石原裕次郎が私財を投じてさらに多額の借金を背負ってまでも映画化した『黒部の太陽』。その製作秘話も存分に展示されていた。
黒部湖駅まで移動し、今度はケーブルカーに乗車する。
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5分ほどで黒部平駅に到着した。
展望台から、この先の道のりを眺める。
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ここからはロープウェイで先を目指すのだ。
始点と終点の間に一本も支柱がないという世にも珍しいロープウェイに7分揺られ、大観峰に到着した。
黒部ダムを見下ろす。
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この先はトロリーバスで室堂に向かう。
バスの上にパンタグラフが付いており、そこから電源を取ってすすむ、電車とバスのハイブリッドのような乗り物だ。
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10分ほどで室堂に着いた。
" 富山県東部,立山西山腹にある溶岩台地。海抜2450メートル。立山信仰登山の基地。トンネルで黒部ダムと通じ,飛驒山脈の観光地。室堂平。"
ハイカーたちに大人気の、立山屈指の散策スポットだ。私も早速散策したいところだが、山の天気は移ろいやすく室堂は雨模様のようだ。
しかし、ここで狼狽えるわけにはいかない。私は売店で野沢菜のおやきを購入し軽めのランチを摂りつつ、作戦を考えた。
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「せっかくここまで来たのだから、行けるところまで行こう」
そう決意し、売店でレインコートを購入して外に出た。
一面に広がる絶景。など悪天候のため存在せず、足元はぬかるみ、雨脚は強くなる一方で、わざわざ山に登って滝行を受けているような状態に陥ってしまった。
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「勇気ある撤退。もしくは転進。」
私は心の中でそう唱えて、滞在5分で元来たルートを戻ることにした。
私と同じ考えに至ったとおぼしき方々で大混雑のトロリーバスに30分待ちで乗り、その先はロープウェイで下っていく。
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さらにケーブルカーで黒部ダムまで戻った。
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もう外に出ていられないほどに雨脚が強まっていた。
もうあきらめて帰るしかない。売店で土産をいくつか買い、最後に思い出作りのためにもう一度レストランに向かった。
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グリーンカレーをベースにしたダムカレー。こちらはカツが黒部ダムの形状を担保している。なかなか本格的な味だった。ちなみに信濃大町あたりではインド料理屋がけっこう多いようだ。謎の移住ラッシュが起こっているのだろうか?
バスで信濃大町駅に戻り。今夜の宿に向かう。
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一時間弱で松本駅に到着した。
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去年訪れた際に宿泊したカプセルホテルで旅の疲れをいやし、明日に備えるとしよう。
*
8/17 諏訪湖で、去年キャンセルになったカヤックに興じる
8/17、この旅最終日。朝早く松本を出発し、7:40 頃に上諏訪駅に到着した。
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今日はここでカヤックに乗る予定だ。実は去年のお盆にも予約していたのだが、大雨の影響でキャンセルとなってしまったのだ。今回のリベンジ旅、ここが最後の伏線回収となる。
駅から10分ほど歩き、諏訪湖に到着した。スワンボートが並んでいる一角、あそこがカヤック乗り場のようだ。行ってみよう。
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8:00のスタート10分前に到着した。受付は若い女性の方だ。健康的に真っ黒に日焼けしている。どうやら他に参加者はいないようだ。
もろももの手続きを済ませ、今か今かと出発を待ち構えていると、男性スタッフから「もう一組来ますので、少々お待ちください」と声を掛けられた。
少しすると一台の車が停車し、そこから7人くらいの大家族がぞろぞろと降り立ってきた。「1vs7か。不利な戦いになりそうだ。」 私は臨戦態勢に入る。常在戦場。
女性スタッフと大家族はしばらく話していたが、「小雨が降っているので、明日も諏訪に滞在しているなら明日に振り替えた方がよい。」という話になり、彼らは明日再来することになった。よし!
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結局私と若い女性インストラクターの1on1となり、準備運動と操作のレクチャーを受けた後、いよいよ入水となった。
湖は流れが穏やかで、安心して漕ぎだすことができる。インストラクターの方から諏訪湖の歴史やら伝説やらフォッサマグナについての話やら、彼女の学生時代の話やら、ひたすら言葉のシャワーを浴びながら漕ぎ進んでいく。
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どうやら昨日までは連日の満員御礼で休む間もない大忙しだったそうだ。彼女も疲れ切っているのではないか?と思い、申し訳なくなった。
とはいえ、彼女はそんな素振りはみじんも見せず、変わらず元気に話し続けている。そして、湖に浮かぶ人工島に上陸した。
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あの有名な諏訪湖の花火大会。多くはここから打ち上げられるそうだ。コロナ禍で3年連続で中止となっているが、来年こそはと熱く語る彼女だった。地元愛がすごい。ちなみに大学は岐阜で、就職してしばらく京都に住んでいたそうだ。職がないという理由で若者が流出していく現状で、このような観光業はUターンを期待できる貴重な産業なのだろう。
その後は、なにしろ1on1でちょっと時間があまったので、一旦岸に上がり足湯に浸かった。
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2時間にわたるカヤック体験はつつがなく終了し、この後は諏訪湖一周ランをすることにした。
雨は上がっていたので、レインコートをリュックにしまい、スタートする。
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カヤック乗り場を起点として、反時計回りに進んでいく。
遊覧船が停泊している。今日も運行しているものもあるが、昨日で繁忙期も終わったので休んでいる船体もあるのだろう。
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湖側にわき目を振って進んでいると、分かれ道に差し掛かった。
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専用のジョギングコースだ。もちろんこちらを進んでいく。
アップダウンもなく、しばらくは信号もない専用コースを進んでいく。走りやすい。
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進んでいくにつれ湖側に障害物がなくなり、景色がきれいになっていく。
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すれ違うランナーや人もほとんどいない。やはり、世の中は今日から通常営業のようだ。
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諏訪湖をちょうど半周したあたり、水門に行き着いた。ここで海面の調整を行っているようだ。そういえば、先ほどのカヤックのインストラクターから「諏訪湖には多くの川がつながっています。一方で出口は天竜川一本です。」と聞いていた。
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残りの半周も軽快に進んでいく。
ところどころ路面工事中で迂回しながら進む。
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そんなこんなで、一周16kmの諏訪湖を走破した。なかなか体力のある私。
諏訪湖はアップダウンがなく、とても走りやすかった。工事が終わったらもっとよいコースになるだろう。
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スタート地点のカヤック乗り場に戻ると、なんと今日の営業はすでに終了していた。
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私が予約さえしていなければ、今日は終日休業だったのだろう。若干の申し訳ない気分と、そんな状況でも嫌な顔ひとつせずに対応してくれた感謝を同時に感じたのだった。
気持ちを切り替えて、諏訪湖間欠泉センターに向かい林檎ジェラートを食べる。
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そして、2階にある『諏訪圏フィルムコミッション』によって誘致した映画やTVドラマ作品の展示を見学し、
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3階にある諏訪湖大花火大会の展示を堪能した。
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間欠泉の噴出は中止しているが、これらの展示を見るだけでも訪れる価値はある。大満足。
さて、そろそろ汗を流したいところだ、近隣の立ち寄り温泉を探す。片倉館に行こう。
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ここは、昭和3年に竣工された『千人風呂』が売りの宿泊施設で、国指定重要文化財の建物である。ここで汗を流すとしよう。
天井が高く広々とした浴室で疲れを癒した。二階の休憩室で水分補給して、次の目的地に向かう。
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通り掛かった川一面を、蓮が覆っている。高田で見たものと同じ光景だ。
歩くこと15分、今日のランチスポットに到着した。
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長野県民、その中でも特に諏訪市民のソウルフード『みんなのテンホウ』だ。諏訪市出身のオリラジ藤森おすすめのお店でもある。
席についてさっそくビール&餃子をオーダーする。そしてメインディッシュは『チャーメン』。
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漢字では「炒麺」と書き、野菜炒めに麺をからめた汁なしラーメンだ。チャーメンといえば長崎が有名だが、向こうは硬い麺を用いているのが主流だ。一方テンホウのチャーメンは、太めのソフト麺を使っている。これによって具が絡みやすくなっており、野菜から出たエキスをまんべんなく麺が回収することに成功しているのだ。
腹も満たされたところで、上諏訪駅に向かうことにした。
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諏訪で最も有名な諏訪大社のにまつわるオブジェが目に付く。
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今年は寅年と申年のみ行われる御柱祭の年。花火大会は中止になっても、この祭りは予定通り開催されるのだ。
上諏訪駅に戻って電車を待つ間、ホームに設置されている足湯で時間を潰す。
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この旅を振り返りながら、今までの旅の中で成しえなかったイベントを漏らすことなく体験できた達成感に全身が包まれていく。あとは各駅停車を乗り継ぎ、東京に戻るのみだ。
最後の一枚は、乗り継ぎのために降り立った小淵沢駅でパシャリ!
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「長期休暇を使ったこのような旅をすることはもうないのだろうな」と思いながら、今まで果たせなかったことを拾い集めるような伏線回収旅は、これにて終了となる。
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【追記】
距離的には東京と近いが心理的には遠かった長野県とここ一年ちょっとで縁ができ4回も訪れてしまった挙句、この10月から半年間を長野市で過ごすこととなりました。
この連載本編でも最終回に訪れた長野。これも運命の悪戯か、はたまた赤い糸なのか? せっかくの縁なので、存分にしゃぶり尽くしたい所存であります。皆さま、ご支援いただければ幸いです。(この連載も細々とは続けていきます。)
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