ヘブン
小鳥が死んだ。
目を閉じてもう開かない。
小さな頬に小さな涙。
真珠。
小粒の真珠みたいな涙が小鳥の周りにいくつもいくつも転がって清潔な眩しい光を放っている。
小鳥が泣いてる。
命が消えてしまった後も小鳥の心は泣いている。
悲しい。
本当に悲しい。
小鳥の小さなからだの上を冷たい風が通り抜けていく。
音も立てず、何も残さず、辺りを冷やし、通り抜けてく。
小鳥の命。
救うことができたのは小鳥が愛して た旋風だけだったのに。
旋風は小鳥が止まったシイの木と小鳥の仲を疑って小鳥を救う力が自分にあるとは信じられなくなってしまって遠い街に飛んで行ってしまった。
小鳥はそれに絶望し何も食べられなくなって命を落とした。
小鳥の旋風への想いは本物だったのに。
小鳥の命。
小鳥の涙。
旋風は何も知らずに遠い街を吹き抜けて空高く飛び、塵芥を吹き払い、けど彼は、小鳥のことを忘れておらず吹き荒れながら泣いていた。その涙は誰にも見えなかったけれど、小さな小さな真珠になって旋風の中に内包され磨かれて眩い光を放ち続けて旋風を生かす確かな力になっていた。
彼は小鳥の死を知らず、泣きながら吹き荒れて内包された真珠を抱いて虚空を飛んで吹き抜けてゆく。
眠るように横たわる小鳥。
小さなからだ。
小さな姿。
柔らかで滑らかできれいな羽根に包まれて、静かに横たわって。
それでも小鳥の内側にはまだ彼女の魂が宿り、まだ彼女の旋風への想いは強く強く生き続けていた。
彼が好き。
彼だけが好き。
旋風と一つになって暮らしたい。
彼に溶けたい。
そして生きたい。
小さな羽根で羽ばたいて、自分の歌を歌いたい。柔らかな優しい歌を小さな声で静かにそっと。
その歌は彼の心に染み込んで潤して温かな優しい雨になり乾いて硬い地面の上に降り注ぎ、新しい命を育てる元になる、はずなのだ。
続きはまた。
お楽しみに!