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生徒指導提要とマルチレベルアプローチ
生徒指導提要のポイントのポイント
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令和4年に改定された生徒指導提要では,図のような重層的支援構造が示されました。この図において最も重要なことは,全ての児童生徒を対象とした「発達支持的生徒指導」が強調されたことです.
スクールカウンセラーをしていると,1週間に一度の勤務を待ち望んでいたかのように面接の予約がいっぱい入ってきます.期待されて相談されるのはありがたいのですが,一日中カウンセリング面接をすると相当に疲弊してしまうのも事実です…
スクールカウンセラーに相談にくる児童生徒は,上記の図で言えば「困難課題対応的生徒指導」の対象だと言えるでしょう.今の学校では,スクールカウンセラーに相談したり担任やサポーターなどが個別に関わったりしなければならない児童生徒が本当にたくさんいます.
当然,教員の数は限られているわけなので,スクールカウンセラーである私が疲弊するのと同様に,担任の先生やサポーターなど学校にいる大人がどれだけ大変な思いをしているかは簡単に想像できると思います.
なので,困難な課題をどうやって支援し適応に向かわせるかが様々な教育関係者の間で議論されており,学校以外の場(不登校特例校やオンライン環境も含む)の整備なども進んでいます.(個人的にはこの流れを良くないと思っています)
ここで,私は声を大にして言いたい!!
なぜ,困難な状況に陥ってしまうのか?
どうすれば困難な状況を予防できるのか?
…をもっともっと考え,取り組んでいく必要があると!
今回の生徒指導提要の改訂が示した「発達支持的生徒指導」の重要性とは,まさにこの部分を強調しているものと言えます。つまり,子ども達が困難な状況に陥ってしまわないように,まだ問題を抱えていない子どもも含めてすべての子どもを対象に発達支持的な生徒指導をたっぷりと(図の水色部分の分厚いこと!)取り組んでいく必要があるということです.
生徒指導提要を具現化するマルチレベルアプローチとは?
生徒指導提要で「発達支持的生徒指導」が強調されたことは大変意義深いことだと考えています.もちろん,これまでの学校教育において,このような子ども達の成長・発達を支持するような実践が行われてこなかったわけではないと思います.ただ,残念ながら十分ではなかった…
では,「発達支持的生徒指導」をその目的を十分に果たせるように実践するには,何をどうすればいいのでしょうか?その答えを示しているのがマルチレベルアプローチなのです.
マルチレベルアプローチは,アメリカを中心にアジア各国も含めた諸外国において主流となっている包括的生徒指導・教育相談(Comprehensive School Guidance & Counseling Approach: CSGCA)の理論と実践を,日本の教育に合う形に改良し開発された生徒指導・教育相談の理論と実践を示したものです.
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図にある通り,マルチレベルアプローチでは生徒指導提要で示された重層構造と同様,生徒指導を一次,二次,三次の3層で捉えています.
一次的生徒指導は発達支持的生徒指導に相当し,すべての子どもを対象に「自分で解決し成長する力」を育てることを目的としています.
二次的生徒指導は,実はここが1番のキモなのですが,「子ども達同士のつながりの力」を育て,子ども達同士が互いに支え合って成長することを目指します.
今学校現場では人手不足が深刻な問題となっています.忙しい日々の業務に加え,様々な課題を抱えた児童生徒への対応にも追われ,先生達は多忙を極めています.”もう少し人材がいれば…”というのは日本中の学校でつぶやかれている言葉ではないでしょうか?
私は,学校には大量の人材(リソース)が存在すると思っています.それは…そう!子ども達自身です!!
子ども達同士が互いに支え合いともに成長していく学校では,指導や支援が届かず図にある雨漏りのように困難な状況へ落ちていく子どもを,仲間が支えすくい上げていくことができるのです.
これが,マルチレベルアプローチです
具体的には,次の4つの教育実践プログラムを柱として,相互にリンクさせながら,集団に貢献しようとする個を育て,個を支え成長させることのできる集団を育成することを目指します.
SEL(Social & Emotional Learning:社会性と情動の学習)
PBIS(Positive Behavioral Interventions & Supports:ポジティブな行動介入と支援)
ピア・サポートプログラム
協同学習
これら一つ一つについての詳しい説明は,これから少しずつ進めていくこととして,今回は最後にこれだけを伝えておきます.
マルチレベルアプローチに取り組めば,学校に子ども達同士が支えあう風土が醸成され,様々な課題があってもそれを仲間とともに乗り越えることが可能となり,困難な状況が激減して,子どもも先生も楽しい学校が実現するのです