進捗を一目で把握!バーンダウンチャート・バーンアップチャートの特徴と使い分け
この記事では、プロジェクトの進捗状況を管理するためによく利用される、「バーンダウンチャート」と「バーンアップチャート」について紹介します。似ているようで、若干異なる2つのチャートですが、それぞれの特徴と使い分け方について見ていきます。
プロダクトマネージャーと進捗管理
こんにちは。株式会社Mobility Technologiesで、タクシーアプリ『GO』の法人向けサービス『GO BUSINESS』のプロダクトマネージャー(PdM)を担当しております。Tannyです。
私が一緒にお仕事をしている開発チームでは、常にさまざまな新規機能や改善機能を開発しています。開発の進捗状況はプロジェクトマネージャー(PjM)が管理しています。だからといって、PdMは開発の進捗を把握しなくても良いということではありません。進捗に余裕がある場合は追加の機能を入れられるかもしれません。逆に開発が遅れていて、スケジュールに間に合わない場合は、優先度の低い機能の実装をあきらめる、といった判断が必要になる可能性があります。
リリースの直前に開発の遅れに気づいて慌ててしまう、といったことがないように、PdMが日々の開発状況を把握しておくことは重要です。プロジェクトの進捗を的確かつ簡単に把握するために役立つチャートが「バーンダウンチャート」または「バーンアップチャート」です。
これらのチャートは、少しだけ役割が異なりますが、それぞれを比較して紹介している記事はあまり無いようです。この記事では、それぞれの特徴と上手な使い分け方法について説明します。
バーンダウンチャート
まずは「バーンダウンチャート」について紹介します。このチャートは、スクラム開発において用いられることが多いようです。(私も、認定スクラムマスターの研修で初めて知りました。)
概要
まずは、プロジェクトの期間(開始日・終了日)を決め、プロジェクトで完了する予定の工数(総工数)を見積もります。工数は、日数・時間・ストーリーポイントなど、開発チームの見積もりで利用している単位を使います。
次に、X軸に期間、Y軸に残工数をとり、残工数を毎日プロットしていきます。そうすると、以下のようなグラフができます。
「理想線」は、同じペースで残タスクを完了した場合の理想的なグラフです。例えば、期間が10日間、総工数が80時間の場合、1日あたり8時間分のタスクを完了することが理想ですね。
見方と特徴
残工数が理想線より上にある場合は進捗の遅れを、下にある場合は進捗の進みを示します。上のサンプルの例では、前半は少し遅れがありました。しかし途中でペースを上げて、最後は余裕を持って全工数を完了できたことが分かります。
もし、遅れを取り戻せないことが分かってきた場合は、タスクを減らす、人員を投入する、期間をのばす、などの方法を検討します。なお、一定のペース・人員で開発を行うスクラム開発の場合は、基本的には残工数を次のスプリントに繰り越します。逆に、順調にタスクを完了できそうな場合は、追加タスク実施などを検討します。
このチャートでは、「期間の終了までに残工数を0にできるか」に着目します。そのため、プロジェクトの期間が明確に決まっていて、開始時に総工数が見積りできている場合に有効です。
なお、このチャートだけでは、「なぜ遅れが生じているのか」という理由までは分かりません。チャートで遅れや進みを可視化した後は、日々のMTGなどで、その要因をメンバーと共有するようにしましょう。
バーンアップチャート
残工数ではなく、完了した工数に着目するのが「バーンアップチャート」です。期間内の総工数が増減する場合によく使われます。
概要
まずはバーンダウンチャートと同様に、プロジェクトの期間と工数(総工数)を決めます。
次に、X軸に期間、Y軸に完了工数をとり、完了工数を毎日プロットしていきます。そうすると、以下のようなグラフができます。
バーンアップチャートでは、「総工数」のグラフを記載することができます。ここには、その日の残工数と完了工数の和を記載します。見積もりの見直しなどで残工数が増減すると、総工数も増減します。
見方と特徴
バーンアップチャートでは総工数を記載するため、見積もりの見直しなどが発生した場合もゴールの変化を把握しやすくなります。この例では想定より実装が大変なタスクがあり、途中で総工数が80時間から100時間に増加しました。これを見て少しペースを上げたことで、最終的には期限通りに全てのタスクを消化できました。
このチャートでは、どちらかというと「総工数の変化」に着目します。そのため、プロジェクトの期間中に工数が変化する可能性がある場合に有効です。また、お問い合せ対応や品管テストの対応など、総工数が積み上がっていく場合にも活用できます。
チャートの使い分け
バーンダウンチャートとバーンアップチャートの特徴と使い分けについて、以下の表にまとめました。
バーンダウンチャートはスクラム開発に最適な一方で、バーンアップチャートは色々な場面に適用しやすいと思います。どちらも作成手順はほとんど変わらないので、利用シーンに応じて、最適な見せ方を考えるのが良さそうです。
チャートの作り方
最後に、実際の業務におけるチャートの作成方法について紹介します。
まず、いくつかのプロジェクト管理サービスでは、チャートの作成機能が備わっています。それを活用すれば、自動的にチャートを作成できます。
表計算ソフトを用いたチャートの作り方
これらのサービスを利用していない場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートを利用してチャートを作成できます。
以下は、Googleスプレッドシートでバーンダウンチャートを作成した例です。(太字の箇所が手入力部分です)残工数の箇所に、その日の終了時点での残工数を記載します。
理想線は、以下のような考え方で算出できます。
次に、バーンアップチャートの作成例です。その日の終了時点の完了工数と総工数を記入します。なお、「総工数 = 完了工数 + 残工数」の関係が成り立つので、完了工数と残工数から総工数を計算することもできます。
バーンアップチャートの場合はゴールである総工数が変化するため、理想線の計算が少し複雑になります。以下のように「現時点での理想的な残工数を、残りの日数で完了させる」という計算を行います。
これにより、総工数の増減によって、理想線の傾きが変わります。(上の例でも、総工数が増加したタイミングで微妙に傾きが強くなっています)
なお、ここに記載した以外の指標をチャート上に表示する場合もあります。事前のタスク実施計画に基づいた「計画線」を記載する方法や、「当日の完了工数」(グラフの減少・増加量に相当する分)を棒グラフで記載する方法などです。分析したい内容に応じて、チャートに表示する内容を検討して見てください。
おわりに
この記事では、バーンダウンチャートとバーンアップチャートの特徴と使い分け方について紹介しました。一般的にはバーンダウンチャートの方が有名なようですが、プロジェクトの形式によってはバーンアップチャートの方が適している場合も多いように思います。着目したい内容に応じて、どちらを使うか検討するのが良さそうです。
なお、表計算ソフトでシンプルにチャートを運用する場合は、工数を毎日計算して手入力する必要があるため、ちょっとした手間がかかります。この次の記事では、Google App Scriptを活用して、Asanaから自動的に工数を連携する方法を紹介する予定です!