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【十一日目】狐の首を絞める術

 昨夜に引き続き、雑誌『心霊界』から。同誌には全国の「心霊科学研究会」の会員から、「自分はこんな話知ってんぜ!」という聞書や自身の不思議な体験談が多く寄せられていました。
 次の話もそんな投稿の一つです。

 寛政頃、肥前国で実際にあった話だそうだ。
 農家の女房が、医者を出迎えに行き、二人で山道を歩いていた時のこと。

農婦「あ、狐がいますね」
医者「いますね」
農婦「ちょっと、あの狐の息を止めて見せましょうか」
医者(え・・・・??)

 医者が不審に思って農婦の様子を見ていると、彼女は狐をじっと見つめたまま、自分の手で自分の首をグイグイグイと締め上げる。
医者が「この人やばい」と思って見ていると、道端にいた狐がいかにも苦しげに手足をもがきだし、地面を七転八倒しだした。まさしく、息ができない様子だった。
 医者は驚き呆れて、しばらくその様子を見ていたが、
「狐かわいそうだから、もうやめてあげて」
と言ったので、自分の首をグイグイ締め上げていた農婦はふっと力を抜いて喉笛から両手を放した。
途端に狐は自由になってその場からすごい勢いで逃げ去っていった。

――なかなか味なことをやる女房であるが、これは一種の暗示術らしい。

『心霊界』2巻1号(1925年1月)をもとに編訳。

 昔話では人を化かすことの多いイメージのある狐が、今回は完全に被害者です。女性の方がとんだサイコ農婦でした。

 投稿者は「一種の暗示術」と言っていますが、世代的に奈良シカマルの影真似の術を想像してしまいますね。

 首を絞めあげている時は、農婦自身も苦しいのか、それとも狐だけが苦しい状態なのか、また同じことが人間相手にも出来るのか、などなど、色々と興味はつきません。 (2025年2月20日)

【今日紹介した話】
・譚空ID.19747(No.15563)「狐の喉を締める」(『心霊界』2巻1号、1925年1月号)。


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