天の祝福 〜マタイ傳福音書五章四十五節による〜

マタイ5章45節と「放蕩息子」の物語をもとにした、以前創った七五調の今様の詩を謡曲風にまとめてみました。小鼓や能管などの音が欲しかったところですが、鳴り物はボンゴとシェーカーで代用です。

Lyrics

その日その時その昔
不孝息子ぞ居たりける
日々を怠惰に芸術と
酒と女に狂ひけり
口を開けば酒を喰ひ
口を閉づれば人を喰ふ
野良仕事をばその兄に
押しつけ己は働かず
語る弦楽四重奏
止まらぬ衒学二枚舌

不孝息子はある日には
父に身代求めてし
その身代をかつさらひ
遠国ゆきてじやぶじやぶと
酒を流して金ぞ尽く
やがて淀むは彼生くる
この世の流れ世の流れ
飢饉起こりて彼などの
戯言(たはごと)聴くは居らざりき
ここに彼言ふその心(うら)に
「我の罪をば我が父と
 天に赦しを求まんや」

父のもとにし戻りたる
彼の赦しを父聴きて
言ひたりけるはかくなりき
「あなや我が子や我が子よや
 天なる神は汝をば
 祝し給ふぞ我が子よや
 いざや畑に出でたりて
 その恵みをば受くべしや」

不孝息子は畑(はた)に立ち
鍬(くわ)を諸手に日輪の
光を受けて神拝す
「あなや我が神我が神や
 罪なる我にかくまでに
 垂れ給ふかな恵みをば
 空より注(そそ)ける天(あま)つ日の
 光受けてし地の物は
 我らの糧となりたりて
 小鳥は歌ひ清らかに
 けふのこの日を讃美せり
 我もこの日を讃美せん
 君が妙(たへ)なる創造の
 その御業をば我が神よ」

かくして彼は空よりの
雨に打たれて打ち泣けり
天の父なる主なる神
善きも悪しきも祝し給ふ

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