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新しい生活様式によって、これから当たり前になる(なってほしい)地方での働き方を考える【後編】

先日アップした記事、そこそこ反響があり嬉しいです。都市部ではテレワークが一般的になりつつあるので、少し今更感はあるかと思いますが、昨日紹介したように地方ではまだまだ進んでいません。私たちの会社では期限を設けずにテレワーク体制へと移行することになりましたが、新聞を読むと県庁などは緊急事態宣言解除後に通常勤務に戻ったそうです。やはり地方ではテレワークは「特別な勤務形態」であり、定着は難しいのでしょうか?

仕事と休暇の切り分けは可能なのか?

前編では、社会動向を扱ったネット記事などを元に、地方での事業的な観点からテレワークについて考えましたが、後編ではもう少し生活的な観点から考えてみたいと思います。

私たちの会社で管理する施設では、クリエイター向けのオフィス貸出を行っています。併設でコワーキングスペースも設けられていますが、こちらは特に利用率が低いです。設置した行政の方自身が「こんな山の中でコワーキングスペースに需要はあるのかなあ」と言っているくらいですので、推して知るべしの状態です(苦笑)

すぐ近くにクライミングセンターと温泉、宿泊施設があり、施設の中にはカフェとショップ、横を走る高速道路のサービスエリア内にはコンビニもあります。今は運休の便もありますが、名古屋との直通高速バスもあるので、これから注目される可能性があるワーケーションには最高の場所だと思います。以上宣伝でした。

ワーケーションは休暇と仕事を地続きにして、置かれる環境を変えることでリフレッシュしながら新たなビジネスに結び付けることだと理解していますが、私は長年、仕事と休暇の切り分けに悩んできました。30歳手前で営業職になって以降、昼夜関係なくかかってくる電話に追われ、検討が必要な課題が常に山積みの状態で、クライアントが休みになる年末年始以外は、心の底からリラックスできたことはありませんでした。企画職になってからも、休みの日に少しリラックスしているときに限って、悩んでいた問題への解決策が見つかったりするんですよね。携帯の電源をオフにしてスクリーンに没頭できる映画館は、気分転換には本当にありがたかったです(まさに今新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃していますが・・・)。
結局私なりに出した結論は、「リタイアするまで仕事と休暇の切り分けは難しいのであきらめる」でした。テレワークになってオフィスへ行くことが少なくなり、物理的にも仕事とプライベートの境目が曖昧になりましたが、自分の中で結論が出ていたので、意外にすんなりと対応できました。ただ経営者になって成果が全てで勤務時間の定めがなくなり、休みも自ら判断してとれるようになったからのような気もするので、この「切り分け」問題は働く人たちにはなかなか解決が難しいと思います。
ただ今後テレワークが増えていく中で、私のような「仕事と休暇は無理に切り分けない」という働き方が、決して特殊ではなくなるのではないかと思っています。そうなってくると、元々観光客向けのインフラがあり、空き家など住宅のストックが豊富でコストも低く、自然や農漁業資源が豊かな地方での長期滞在は、欧米のバカンスのような夢物語ではなくなるでしょう。

子育てはどうする?

※日経の有料記事なので会員登録が必要です。

テレワークが本格的に普及するには、日本にずっと横たわってきた「仕事と子育ての両立問題」を根本的に解決する必要があります。そうしなければ「場所に縛られず仕事と休暇を地続きにしてクリエイティブな仕事を・・・」とドヤ顔で言ったところで、それは机上の空論、一部の恵まれた人たちの特権的な働き方になってしまうと思います。新型コロナウイルス感染拡大の最中だからかもしれませんが、テレワークだと保育所で預かってもらえない、というケースもすでに出ているようです。保育所を管轄する役所は、先述の県庁の事例のようにテレワークへの理解はまだまだ高くないと思いますので、このコロナ禍が収束した後は、テレワークの普及率が高くかつ保育所のキャパシティが限られる都市部中心に、様々な軋轢が生まれることでしょう。首長などトップが自ら率先して、テレワークへ移行した子育て世代を支えて欲しいと願います。生まれたばかりの赤ちゃんと実家で格闘中の妻の様子を聞いていると、子育ては仕事の片手間や時間の合間にできるものではありません(しゃべったり走り回ったりするようになるとどうなるんだろう・・・)。ベビーシッターを雇えるなど、経済的に恵まれている場合はともかく、やはり保育所での子育てサポートがなければ、テレワーク継続は難しいと思います。すでに始まっているコロナ不況で、この先共働きになる世帯も増えるでしょうから、都市部の保育所のキャパシティは今後ますます逼迫する恐れがあります。
私の住む南砺市では、10~20代の女性や子育て世代の人口流出が止まらず、子供の数も年々少なくなっていますので、会社のスタッフに聞くと保育所は第一希望のところにほぼ確実に入れるそうです。地域の小学校は少人数学級×2クラスを何とか維持している状況で、となりの地域では小学校と中学校を統合し義務教育学校に移行するそうです。あまりにも子供が少なくなりすぎると教育的な不都合が増えるのではと心配ですが、自宅での双方向のオンライン授業や他校とのオンライン合同授業など、子供が少ないからこそできる取組があると思います。新型コロナウイルスの第二波、第三波もいつやってくるかわかりませんので、休校になっても教育を継続できるシステムを今のうちに整える必要があります。
また少子化を何とか食い止めるための手厚い施策もあり、先日我が子の出生届を出しに行ったときも中学3年生まで医療費無料になる制度など、いろいろ案内してもらいました。富山県はじめ北陸地方では今でもまだ三世帯同居が見られ、昔から共働きが当たり前だった土地柄です。料理の時間がとれない家庭のためにスーパーのお惣菜コーナーが異様に充実しているなど、一時的に独り暮らし中の身にもとてもありがたいです(笑) 以前から叫ばれてはいましたが、やはり子育てに関しては地方にアドバンテージがあると思います。

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5/12に生まれた長女です。3月に妻が里帰りしたあとに緊急事態宣言が出たため、いまだにテレビ電話越しにしか会えていません。テクノロジーがなければ寂しくて辛くて仕方がなかっただろうと思いますので、テレワークのインフラは我が家の暮らしを支えてくれています。富山に戻って外に出られるようになったら、キラキラ光る用水路や、田んぼや森を吹き抜ける風を感じさせてあげたいなあ。

地方でのこれからの働き方(考察まとめ)

前後編にわたって長々と書いてきましたが、私の得た結論は「地方でもテレワークは可能であり、都市部より導入しやすい面も多い」でした。ただそれにはいくつかの前提条件があり、それを考慮しないまま拙速に導入すれば、生産性の低下や様々な軋轢を生むことになってしまいます

【今後地方の企業に求められること】
・オフィスでしかできない仕事とそうでない仕事の選別、優先順位づけ
・労働時間やコミュ力だけではなく成果を測れる人事評価制度の確立
・テキストベースでのコミュニケーション能力の強化
・社内SNSや各種クラウドサービスの日頃からの活用、それが可能なハード環境の整備
【今後自治体や地域社会に求められること】
・ワーケーションや二拠点居住など多様な働き方への支援
・インバウンドや団体客依存から脱却し長期滞在を促す観光政策
・テレワークを行う子育て世代への制度面での手厚い支援とインフラ維持
・オンラインを活用した教育環境の整備

あと平日にゴミ出しや散歩に行くと、時々近所の方から訝しがられるので(笑)、自宅で仕事をすることへの理解がもっと拡がるといいなあ、と思います。ただこれらの変化を求められても、多くの企業や地域はすぐには対応できないと思います。感染者がほとんど出ていない地域ではなおさらでしょう。その点、感染状況が厳しかった都市部の企業は、働き方自体の変化を迫られているところも多いでしょうし、それができなければ優秀な人材の流出や市場での競争力低下などを招きかねません。そういった都市部の企業とタッグを組み、社員の地方での長期滞在や定住、さらに地元に住んだまま都市部の企業に就職することを促す取組などが、地域側が今後とれる有望なルートのように思います。私たちの会社でもその視点からいろいろな事業を展開していきたいです。

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あちこちで田植えが始まり、水鏡に映る景色に毎日癒されています。

2012年に、京都から富山県の南砺市城端(なんとしじょうはな)へ移住してきました。地域とコンテンツをつなげて膨らませる事に日々悩みながら取り組んでいます。 Twitter⇒https://twitter.com/PARUS0810