男運が壊滅的過ぎて縁結びの神社に連れて行かれた女の話①
まともな男と付き合ったことがない。
高校生で初めてできた彼氏からは「大学受験を頑張りたいから電話もメールもしないで。そういうのは大学入るまで待って欲しい」と言われた。高校1年生で。
デートをすればマクドナルドに連れて行かれてクリスマスにはなぜかもこもこ靴下を貰った。別に冷え性ではない。
高校卒業から大学2年生まで付き合った彼氏はとにかく愚痴を言う人だった。8割愚痴である。異様に付き合っていることをアピールしたがって、SNSにメンヘラクソ女が書くようなことを書かれたこともある。
彼とは遠距離恋愛だったため、泊まりに行っては買い物・掃除・洗濯・料理となんでもした。私のちっぽけな見栄と関係を良好なまま保ちたいという思いが、私をセックスのできる彼のお母さんにした。
ダメンズウォーカーはダメンズメーカーなのである。
結果不正出血を起こして産婦人科に掛かったし、そのことを話すと開口一番「妊娠してなくてよかった」と言われた。
その次に付き合った人は一見本当にまともに見えた。
けれど人の気持ちが分からない人で、セクシャリティに関わる話を子どももいる昼間のレストランで大きな声でされたり、「僕は尽くすのが好きなんです」と言っては機械のように私の言うことに「メロさんがいいなら」としか言わなかった。
20歳も過ぎて未だにママと同じ寝室で寝ていて、お箸の持ち方も変だった。同じベッドで寝た夜は「離れてください」と言われて背中を向けられた。
シングルベッドでは無理がある。
とにかく男運が壊滅的に悪いのだ。
共通して大事にしてもらった思い出が数える程しかない。大抵の場合「ああこの人は私に興味が無いんだな」と諦念の感を抱かせてくる人ばかりで、かと思えば別れ話を切り出すと「メロちゃんと一緒にいるだけでいいんだ。心から素でいられるんだ」と泣いて言われる。
誰かの努力や我慢の上に成り立つ、素でいられる関係って何だろう。今でも私には分からない。
私は恋愛対象を異性に限定していない。
女の子を好きになって人知れず悩んだ夜もある。
けれど男運でこれである。加えて、面倒な女ミス・ユニバースグランプリと呼ばれる私が女の子の繊細で細やかな心の機微に気づいてあげられるはずがない。
上手くいく方がおかしい。
結果、今夜もひとり床で眠れぬ夜を過ごしている。
「お前、縁結び神社に行った方がいいぞ」
F原さんからLINEが届いたのは、8月の半ばだった。
私には「東京のパパとママ」と呼ぶ先輩カップルと、F原さんという、元バイト先の先輩達がいる。
彼らは私がバイト先を辞めた今でも可愛がってくれていて、頻繁に遊んでくれている。
特にパパとママに関しては、私の荒みに荒んだ生活を実の両親のように心配していて、定期的に「家までごはんを食べに来い」と言って新品の炊飯器で炊いたお米を味見させてきたり、「お前は何か植物を育てた方がいい」と言って大根栽培キットを渡してきたり、何かと構ってくれる。決定的に何かがズレているとは思う。
一度、「ディズニーが怖い。ランドに2回しか行ったことがない。なんならシーには行ったことがない。」と言ったら、サプライズでディズニーシーに連れて行かれたときは、本気で驚いた。
F原さんに関しては、ただただ面白いのだ。
あんなにクレイジーな社会人を私は見たことがない。
人の気持ちが分からない彼氏と別れてから早半年。
酔っては「好きって何?」なんてクソ面倒くさいことを言うようになった私は、F原さんから遂に「縁結び神社」の存在を知らされることになる。
こうなったら行ってみようか。
「パパとママも誘うからF原さん車出して」
「なんでだよいいけどさ」
長くなるので次回へ持ち越し。