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青春の野球場

7月31日。
体調不良で実家に収容されていた僕は、急に「鎌ヶ谷ファイターズスタジアムに行こう」と思い立ち、
そのままノリで行ってきた。

正面入り口(大西撮影)

鎌ヶ谷ファイターズスタジアムは、北海道日本ハムファイターズの二軍の球場である。
見ての通りで、様々な看板選手たちが、掲示されている。
有名どころで行ったら、ダルビッシュ有や大谷翔平の名前もある。

二軍の役割は選手の育成と調整だ。
一軍にはみ出てしまった選手たちは、この地で力と技を磨き、必要とされたその日が来るのを待つ。そしてその日がくれば、
ある時は東京へ、ある時は札幌へ、そして今は北広島へ旅立っているというわけである。

なにせここが「青春の野球場」なのかと言えば、
僕は中学生の頃、ここに足繫く通っていたのである。

僕は地域の公立中学の出身で、野球部にいたのだが、
まあ自分の野球部は本当につまらなかった。
全員やる気がないのだ。熱量が合わせれない。

一生懸命やろうとすると、自分がバカを見る。そういう世界だった。

見かねた顧問が、当時では珍しかった外部コーチを雇った。
このコーチもまたカス野郎だったのだ。根性論の塊で、「野球を教える」という行為がそもそも出来ない。
野球に対しての基礎知識が全くない。
これはこれで、トラブルを招き入れるだけの人であった。
(この人は結局、2つ下の私の弟が、"コーチが辞めないなら僕が辞めます"と言い放ち、大騒動に発展。最後はクビになった。)



そんな中で、唯一といってもいいだろう。
野球の中で面白さを得られていたのが、この鎌ヶ谷ファイターズスタジアムだった。

当時の鎌ヶ谷は、なんでもありだった。
二軍とはいえプロ野球選手、子供たちからしたらスターに違いないのだが、
普通にチャリで移動していたりする。
自販機でジュース買っていたりする。

スターが、そこらへんで、我々と同じ生活を送っている。

まあ今考えたら自販機くらい使うだろという感じなのだが、
当時の僕からすると本当に衝撃的な世界だったのだ。

一塁側フェンス裏の坂。
小遣いが払えず入場料が出せなかった当時の僕は、このコンクリートの上でよく寝ていた。

二軍の野球は、自分の人格形成に影響していると思う。

二軍の選手は、常にクビと隣り合わせにあるのだ。
秋口になると、翌年の身の振り方を考えないといけない人が多数出て来る。
それぞれ、もともとは各地域のスーパー野球エリートである。
野球しかやったことのない彼らが、全く何のサポートもないまま社会に放り出されて、大変な苦労をしたり、ひどい場合だと居場所をなくして犯罪を犯したりもする。

だから、クビになりたくない。
そのためには、成功するかわからないけど、努力するしかない。

頑張っても報われるかどうかはわからない。
でも頑張らないとどうにもならないことがある。

ゆるやかでのんびりした世界の裏で、残酷でシビアな競争がある。
でも、彼らはそれを面前に出さないのだ。
ファンである我々の前では。

イースタンリーグ 日本ハム対ロッテ
40度に近い温度の中、見てるだけでもきつい。
野球をやるとはこれいかに。

二軍の選手は、大まかに「育成」と「調整」に分かれる。
「育成」は、まだ若手の選手が、基礎を知る機会として二軍を利用する。
「調整」は、一軍からあふれた実績のある選手が、感覚を維持したり自分の課題に向かうために二軍を使用する。

先発投手の上原健太は、「調整」の選手だ。
新庄一軍監督から、四球を出さないように手厳しく言われ続けている。
逆にそれが空回りして、無駄な四球を出して痛打されているようにも見えてしまっていた。

空回りだろうが何だろうが、監督の言うことは絶対だ。
課題をクリアしなければ、一軍で使ってもらえない。

この日の上原は、その回答を「緩急」にセットしているように見えた。
おそらくチェンジアップだ。甘めのストライクゾーンから、速い球と遅い球を上手に組み合わせ、ロッテ打線を調子を狂わせているように見えた。


外国人のスティーブンソンも「調整」の選手だ。
もともとはバリバリのメジャーリーガー。

だが、日本の投手の変化球に全くあっていない。
佐々木朗希が先発のゲームをマリンで見たのだが、正直目も当てられなかった。

以降、鎌ヶ谷に幽閉されているのだが、
いつも全力プレーで、朗らかで、声も出ている。

言っちゃ悪いが、おそらく今オフ、高確率でクビになる。
一軍では、現役ドラフトで入団した水谷が、予想外の大活躍を見せており、もうポジションがない。

でも、スティーブンソンは腐っていない。
明らかにしっかりした心身の準備ができている。

活躍できる場所は日本ハムではないかもしれない。
でも、この彼の姿を見ている人が、世界のどこかに間違いなくいる。
プロ野球はそういう世界なのだ。

この日、日本ハムが勝利し、ヒーローインタビューに上がった宮崎は、
「好きな選手はスティーブンソン選手です」と言っていた。
同じ外野のライバルに、こういう言葉をかけられる。
スティーブンソンはそういう人なのだ。

自分はどうだろう。
他の人に良い影響を与えられているだろうか?
不貞腐れた態度を取ったり、準備を怠ったりしていないだろうか?
こうやって、自分を見つめ直す機会になるのも、またファームの見方である。

ちなみに、観戦中、スティーブンソンの奥さんとお子さんをスタンドで発見した。
異国の地の40度近い鎌ヶ谷まで応援に来てくれているのだ。
本当にご苦労様です。

鎌ヶ谷は、ここ数年で北海道に機能を移すという報道も出ている。
球場の老朽化の問題もあるようだ。
理屈はついても、青春の球場がなくなる可能性があるというのは、寂しいものである。

行けるうちに、また行きたいな。
でも、今度は暑くないときに…ww

行った試合の中継↓


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