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「年」の表記

大変しょーもない話をします。
突然ですが、みなさん今日の日付を表してみてください

  1. 令和6年7月28日

  2. 2024年7月28日

  3. 令和6年(2024年)7月28日

  4. 2024年(令和6年)7月28日

どれが一番しっくりくるでしょうか。
弁護士が、裁判所に向けた文書(訴状、準備書面、陳述書等々)を書く中で、必ずこの日付が問題になります。よく、離婚相談などで、「配偶者がこのあいだ浮気をして帰ってきた。それいらい、しょっちゅう外泊する。」といったお話をされることがあります。でも、弁護士が裁判所に不倫を認めてもらうためには、この「このあいだ」とか「しょっちゅう」の日付を特定する必要があるのです。誰かを訴えようかな、と思ったときには、日付を特定できるように、記録につけておいてくださいね。
という話はさておき、とにかく日付を書く機会が大変多い。

この時、書いていて、あるいは読んでいてイラっとするのが「年」の表記です。

実は、公用文を書く際には、「年」の表記方法も含めた非常に細かいルールが定められています。この「公用文」って何ですか、となると、この範囲は明確に決まっていないようなのですが、一番狭い定義でいくと、「国の府省庁で業務上作成される文書の総体」となるようです。なので、私たち弁護士の世界では、裁判所が書く判決文なども公用文に含まれます。
そうすると、公用文のルールに則るのが一番確かなのですが、公文書の年表記に関する規則によると、

「公文書の年の表記については、原則として元号を用いるものとする。ただし、西暦による表記を適当と認める場合は、西暦を併記するものとする。」

こうなっているため、公文書の年表記は元号表記なのです。
しかし、元号表記(和暦)って面倒くさいじゃないですか(# ゚Д゚)
私が弁護士登録した当初(2009年(平成21年))でも、過去50年以内に「昭和」と「平成」があるんですよ。和暦だけで準備書面を書いていると、「事実A」と「事実B」の間が何年あいているか、すぐに計算できません。
そこで、もともと所属していた事務所では、上記の公文書のルールも踏襲しつつわかりやすいように、「西暦(和暦)年」の表記にしていました。今日時点の表記だと、「2024年(令和6年)」という感じ。

その後、私が2015年(平成27年)に市役所へ入庁すると、公用文メインの世界に入ります。基本、和暦オンリーの世界です。やむを得ず、和暦表示のお仕事にならざるを得ませんでした。まぁ、間違っちゃいないんですけどね。規則に書いてありますから。

ところが、です。
そんな市役所でも、和暦表示ができない瞬間が訪れます。
そう、「平成から令和に代わる直前の数か月」、具体的に言うと、2019年(平成31年)1月1日から3月31日です。このころ、同年5月1日に変更される元号が、4月1日に発表される、という状況でした。なので、1月1日時点では「次年度の和暦年が確定していない」という状況でした。
そこで、この3か月の間に、職場では西暦表記で記載せざるを得ない状況が続きます。さっきのルールの「ただし書き」にあたる「西暦による表記を適当と認める場合」がやってきました。

その後、2019年(平成31年)4月1日に、次の元号が「令和」と決まったことで、「じゃあ和暦表示に戻すか・・・」と思いきや、そうはなりませんでした。
過去50年の間に、「昭和」「平成」「令和」と、元号が3種類出てくるわけです。もうこりゃ和暦のみの記載だと、事実経過がわけわからん・・・と思ったのかどうかは知りませんが、その後、市役所の内部文書の日付表示は、「西暦(和暦)年月日」となりました。
少なくとも、私が退職するまではそうなっていましたが、さっき市役所のHPを見に行くと、「和暦(西暦)年月日」に変わっていました。
あら、そのうち規則に合わせるように戻していくのかしら・・・

さて、今は私は公務員ではないので、「元号で書かなければならないルール」に拘束はされていません。自由に書けばええわ、ということで、現在はこだわりをもって「西暦(和暦)年月日」にしています。冒頭の選択肢で行くと「4」です。
訴訟メインでお仕事をしている弁護士の場合、最終的に公文書ど真ん中(だから絶対に和暦表記)の判決文でコピペしてもらうために準備書面を書く、ということを考え、文書作成ルールを公文書に合わせる方が多いように思います。なので、全部和暦で準備書面を書いてこられるのです。でも、ほんとうに、いやまったくもって、わ・か・ら・ぬ!! 
そもそも、「昭和」と「平成」だけでもわかりにくかったのに、公務員やってる間にもう1人「令和」ちゃんが登場すると、ますます大混乱でした。もーむり。さっきも言いましたけど、「事実A」と「事実B」の間が何年あいてるか、和暦ではわからん。いちいち西暦変換しながら読まないといけないのが面倒なんだよ!
最近は、東京弁護士会様が開発した弁護士業務サポートアプリ「べんとら」を使うと、このあたりのストレスをかなり解消してくれるようになりました。(東京弁護士会様、タダ乗りしてごめんなさい。いつも助かっております)

というわけで、私の日付表記のこだわりを宣言してみました。
和暦だけで書かれた準備書面をイラっと読みながら。。(仕事しろ)

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