【読書メモ】在野研究ビギナーズ
ここ数年、私は自分がどういう方向に行ったらいいのかよくわからない(いや、「ウソつけ」とかいろいろツッコミが聞こえてきそうだけど)。ただなんとなく、弁護士で公務員になって対人援助の部署ばっかりぐるぐるしているという、他にそんなにたくさんの人が経験したわけではない仕事から見えているものを形にして伝えたい、という気持ちはなくはない。これを指して「研究」と呼べるのかどうかはさておき、どう具体化するかが全然定まらず、いっとき大学院へ行くこともそれなりに真剣に考えた。素人的に、そういうことをするには大学に所属していないといけないのではないかと漠然と思っていたから。そうしたところへ、「在野研究」という香ばしい単語をタイトルにしたこの本がTwitterで流れてきて、しばらくkindle版「ほしいものリスト積読」(注:読みたい本をその心のままに買うとお金的にもスペース的にも大変なことになるので、いったんAmazonの「ほしいものリスト」にストックして、ストックして…なかなか買わないこと)になっていた。
最近になってようやくちゃんと購入しで「既読リスト」に入ったが、いったいなぜこんなに長いことほしいものリスト積読にしてしまっていたのか、と後悔さえ感じる内容だった… いや、これ万人に当てはまるものではなく、「これまでの経験を言語化して伝えてみたい」という、マニアックな欲求を持っている私だけだと思うよ。あ、でも版元の明石書店さんのTwitter見ているとかなり売れているみたいだし、少し前はこんな本もよく平積みされていたので、世の中には「書きたい人」がたくさんいるのかもしれない。
(仕事していると、「この国はもう少し文章を書く教育をした方がいいのでゎ」と思う場面がちょいちょいあるんだけど…)
Amazonのレビューでは、「これは研究環境的に恵まれた人の話だ」みたいなのがついていた。確かにそういう側面がなくもないし、この本全体から読み取れる「研究に必要な要素」のうち、いくつかは今の私ではそろえることができない。でも、仕事しながらこんなに楽しそうに知的好奇心を満たしている人たちがいる、ということを知れただけで、読んでいてワクワクしてしまった… 仕事しながらでもできるやん。みたいな。特に私のような社会科学系って、大規模アンケートなどの調査をしようとしない限り、別に研究室とか設備とか要らんしな。「自分の経験を言語化したい」だけだし、「公務員弁護士、対人援助の現場と語る」「対人援助と法学を接続する」という競技人口の少なそうな土俵をつく話なので、文献が読めればそれでよくね?
で、この本に出てくる15人の研究者の体験談から、私の在野研究に必要な要素をひっぱってくると、文献アクセス、発表の場(ネット)、読書会・研究会あたりかな。
まず、文献アクセスだけど、今の家は神戸市中央図書館に近いので楽勝…と思っていた。「中央図書館」と言えば、前の前の前の…家が大阪市立中央図書館の近くだったのであのイメージだった。ところが神戸市は蔵書数が残念な感じで、たしかにOPACで調べても欲しいものが蔵書されている確率は5~6割といったところ。法律雑誌についても同じ。ちなみに、大阪市立中央図書館の蔵書数は約204万冊、雑誌3043誌。さらに大阪市民だと大阪市立大学の図書館も使えたりしたのでそんなに文献アクセスに困るイメージはなかった。ところが、神戸市立中央図書館は986,995冊、市立の総合大学はないし…と、図書館行政って大事だ。大阪市が分割されてしまったらこの図書館、どうなるんだろう。。とにかく、ちょっと不安な結果。
次に、発表の場の問題。さすがに査読付き学会論文を発表できるほどの実力が私にあるとはあまり思えないけれど、何かしら雑誌に寄稿する機会はほしいところ。これまでも年間3~4件ペースで寄稿はしているものの、いずれも「依頼されての寄稿」ばっかりなので自分が書きたいことを持ちこむということはしていないし、そういうのってできるのかな?(無知) また、本書の筆者たちは、ネット上で勝手に発表し、それがオフラインでの寄稿の機会につながっている。ということは、ブログ書き流していたら拾ってもらえる日がくるんだろうか。私が最初にブログに手を出したのが法科大学院2年目から司法修習が終わるまでの間。当時はブログ自体が珍しかったので、あっという間に学内の有名人になってしまったけど、いまどき玉石混交で一億総ブログ作家時代なので、ただ書いているだけではスペースデブリ状態になってしまう。あと、拡散力があるTwitterとの付き合いをどうするか。身分が身分なので炎上リスクも高く、私が令和に入るのと同時にTwitterを止めたのも、何を言っても身分が邪魔をして炎上のタネにしかならんのが面倒くさくなったからだ。しかし、私の経験上、30歳前後で急速に作り上げた人間関係の大半がTwitterきっかけだったことはその通りなので悩ましいところ。
最後に読書会・研究会。これはこの本の多くの筆者が何かしらの勉強会に参加し、研鑽を積んでおられるのを見るにつけ、思考が独善に陥らないようにするためには必須なんだろうと思う。そんでまた「探せば簡単に見つかる」的なことも書いているので試しに探そうとしてみた。
そして手が止まった。
私、なんの研究会に参加したいんだ??
社会保障法…はちょっと違う。給付行政とか年金制度のあり方とか、そういうことをしたいんじゃない。自治体法務…もなんか違う。別に指定管理制度の安定的運用とか、債権管理の在り方空き家対策とか、そういうことをしたいんじゃない。いや、そっちに近いのか? 去年、自治体法務研究会のために滋賀県まで行って楽しかったしな。。ともあれ、本当に何がしたいんだ、私。
ちなみに「読書会」で検索かけてみたところ、20~30代のサードプレイス的に、けっこう開催されている模様。でも、そういうんじゃないんよなー。別の意味で興味あるけど。
なお、よく当たる占い師に何回か占ってもらったところ、私は大器晩成で、最後は人に教えることを生業とするようになるらしい。どういうルートでそうなるのかはまったくイメージできないけど、最終形態としてわからなくもない。