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神戸新聞の記事をさらって兵庫県のSNS投資詐欺被害の傾向を調べてみた話

2024年4月30日、私はこんなツイートをしています。
「そんなこと言って、絶対やる気ないやろ」と思ったでしょ。
ええ、「やらんやろなー」と思っていましたよ。
でも、毎日毎日見ている気がするし、多重債務の相談も次から次から「詐欺被害を原因とする多重債務」ばっかりなので、ちょっと真面目に数を数えてみたくなりました。趣味です
そこで、今日は、これ(=神戸新聞アカウントで流れてくるインターネットを介した詐欺事件のツイートを拾い、傾向を分析する)を本気でやってみた話をしてみたいと思います。

ツイートを拾うのに難儀する

さて、そう決意したのはいいものの、いきなり壁にぶち当たります。私は、4月30日のころは、「見つけたツイートをリツイートしていけば、後で拾えるだろう」となんとなく思い、せっせとリツイートしていました。ところが、どうやらそれではうまく拾えないことに今さら気づいたのです。

え、ここで終了??

し、しかたがない。仕方がないので、神戸新聞社様の公式アカウントから、特定の単語で検索かけることにしました。4月30日からの当職の努力が、秒で水の泡になりましたが気にせずまいりましょう。

そこで、まず「SNS 詐欺」で拾っていきました。そんなにいっぱい拾ってもアレなので、とりあえず決意した日の翌日である5月1日以降本日までのツイートを対象にしています。
そうすると、20件でした。
・・・あ、あれ?少なくない? しかも、今朝見かけた「2090万円騙された女性」の話が入ってきていないぞ?
と言うことでよく見てみると、「詐欺」という単語を使わず、「だまし取られた」という単語でツイートされているものがそれなりにあるようです。
そこで今度は「だまし取」で検索(「だまし取る」「だまし取られた」両方を含むため)しました。そうすると、インターネットを手段としない還付金詐欺や、電話を手段とするオレオレ詐欺も入ってくるので、欺罔手段としてインターネットを利用していそうなものに限定して拾いました。
しかし、「だまし取られた」はネットよりも電話詐欺でよく使われているようであまり増えません。
最後、「詐欺」だけで検索をかけ、「他県の詐欺」「不動産投資詐欺」「リフォーム詐欺」「水原一平」などなど、山のような関係のない話をそぎ落としながら、こつこつ拾うことに。というわけで、

  • 5月1日~6月14日の期間(46日間)

  • 「詐欺」「だまし取」で検索

  • 被害者が兵庫県民

  • インターネットを利用している

以上の条件で抽出した結果、38件になりました。なんかちょっとまだ少ない気もしますが、46日間なので、ほぼほぼ毎日1件、SNS詐欺が報道されていることになります。被害者が兵庫県民に限定してこれですからね・・・ もっと言うと、私に相談をしてこられた国際ロマンス詐欺、競馬必勝法詐欺、仮想通貨投資詐欺はここに入っていません。依頼者・相談者たちは全員、私の所へ来る前に警察に通報していたのですがね。氷山の一角、ということです。

被害の傾向

件数を数えているうちに、「被害額を平均したらどうなるんだろう」「男女比はどうなんだろう」などなど、いろいろと気になってきたので、Excel使って数字を出してみました。
おかげさまで、今回のこのエントリを書いたことで

  • プルダウンの作り方

  • 中央値の出し方

  • 平均値の出し方

  • セルの値の個数の数え方

を覚えました。「お前、ついこないだまで公務員しててよくそれで仕事ができたな」というツッコミは受け付けません。
なお、X(旧Twitter)の過去ツイを遡っただけなので、ツイート内にこれらの要素を直接記載していない場合は「不明」となります。1か月以上古い場合、記事へのURLに飛んでもすでに消えていたので、たまに性別や年齢がわからないこともあります。合計の数が若干少ないのはご容赦ください。
なお、ちゃんとした兵庫県警発表の被害分析記事はこちらから。こちらは、今年1月~3月認知分です。

被害額の平均値と中央値

被害金額の平均値は2528万円中央値は598万円でした。1件だけ、6億6000万円という、ものすごい被害額の事件があったので、これが平均値を押し上げているイメージです。最少額は31万円で、大多数が3桁万円で収まっていますが、4桁万円もそれほど珍しくありません。

男女比

なんとなく、国際ロマンス詐欺なんかだと女性の方が多いのかなー、と思っていましたが、男性:女性=24:13でした。男性の方が多いのですね。でも、1000万円を超える被害額の案件に絞ると、7:5と、差が接近してきます。女性だから被害額が少ない、というわけでもないのかな。

年齢

年齢分布を見てみると、40代と60代で山を2つ形成しています。
ちなみに、神戸新聞社様アカウントを遡っているとき、インターネットを使っていないので対象から落としたものの中には、70代、80代の高齢者が、電話で還付金詐欺にあった話や、不動産投資詐欺にあってこれまた4桁万円の被害にあった、という記事も目にしました。高齢者の場合はネットよりも電話で被害にあうようです。当たり前ですね。
しかし、40代が多いのは意外でした。私も40代、変な誘惑には乗らないようにしたいものです。

欺罔の名目

要するに「何といってだましてきているか」ですが、圧倒的に投資です。FX、仮想通貨、株が三大要素。あとは競馬必勝法や宝くじ、なんてものもありましたが、とにかくFXと仮想通貨と株です。私のところへ相談に来られる方の場合、だいたい仮想通貨でやられているイメージです。
最終的には投資へ誘い込むのですが、誘い込むまでの手口は①なりすまし、②国際ロマンス/出会い系、③突然やってくるプロデイトレーダーの三つくらいかな。なりすまされた有名人は、ひろゆき、倉木麻衣、ウルフ村田、村上世彰、トヨタの社長、桐谷七段などなど。当職の前職のボスはおられませんでした。
典型的なストーリーは、

  1. 端緒

  2. 投資の持ちかけ

  3. 少額取引→利潤獲得

  4. 高額取引

  5. 引き出そうとすると「〇%出さないと下ろせない」といわれる

といったところです。典型的なストーリーは各地の消費生活センターでさんざん啓発されているので、気になる方はそちらをご覧ください。

被害者の居住地

人口比の関係から、神戸市が多いのは当然なのですが、なぜか阪神間が異様に多いのです。特に芦屋市。そもそも詐欺被害が多いのか、神戸新聞阪神支局のこの方面への関心が強いのか、どういうバイアスがかかっているのかわかりませんが、神戸市が16件だったのに対し、尼崎市4件、西宮市4件、芦屋市3件。芦屋市だけ一般市で、人口も10万人弱だったことを考えると、ちょっと多いような気がします。ちなみに、尼崎市、西宮市と同じ中核市の明石市は0件、姫路市は2件でした。

おやおや、この記事を書いている最中にこんな記事が。

ここでも、芦屋市は人口比で県内2位の多さ、と言われています。
でも「特殊詐欺」って、「犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のこと」らしいので、当職が今、対象としている詐欺とはちょっと違うような気がしますね。もう定義が古いのでは・・・

自己破産実務とSNS投資詐欺被害

X(旧Twitter)でも何度か(しつこいくらいに)書きましたが、市役所からジュディケアに戻って1年少々、自己破産の原因に消費者被害あり、という案件ばかりで驚いています。私が市役所にこもる前は、まだ過払いバブルの最終盤だったので、生活費の足し借り入れた借金が膨らんで、払えなくなるパターンが大半だったように思います。そのノリでシャバに出てきてみたら、こんなにも詐欺被害(や、それに近いマルチ商法等特定商取引法関連被害)が横行しているとは。しかも、被害にあう人は、債務整理の相談に来られるまでの間に何回も被害にあわれています。
また、これは「私だからそういう事件を引き寄せている」とも言えなくもないですが、軽度~中度の知的障害がうかがえる被害者もおられます。

そういった事情があると、被害金を回復できそうな場合は必ず結構大きいめの訴訟をしないと話が前に進まず、自己破産するのも大変だなぁ、という感想です。まぁ、かつては消費者金融相手に過払い金返還請求訴訟をしてから破産申立をしていたことを考えると同じことなのかもしれませんが、過払い金が、個別事情というよりも計算方法の問題であるのに対し、消費者法関連の訴訟はそれなりに手間がかかります。私、市役所入る前は、そこまで詐欺や特商法を扱う弁護士ではなかったのですが、すっかり消費者法に漬かっています。。
でも、はっきりといえるのは、覆水盆に返らずのことわざじゃないですが、被害が100%回復することはまずありません。自分の財布から出て行ったお金を元に戻すことは、ほぼ無理だと思ってください。

また、高額の詐欺被害にあった、という事実は、「浪費又は賭博その他の射幸行為(破産法252条1項4号)」に該当するのかなぁ、という点が気になっています。投資詐欺とは、財産を費消しようとしたのではなく、むしろ増やそうとしてやっていることなので・・・って言うと競馬、競輪、パチンコも同じなのですが。でも、詐欺だし。悪いのは犯人だし。
近時、ようやく「ギャンブル依存症は病気」という認知が進んできたように思えます。しかし、詐欺被害に繰り返し遭う人と免責不許可事由との関係をどう考えたらいいんだろう、とちょっと戸惑っています。

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