「君にはもう新しい世界を作る力がある(上)」の物語を紹介していきます(2)
「はい」
鉄平がまっすぐ先生を見上げて答えた。鉄平の目には涙が光っていた。鉄平は自分の軽率を心底恥じて、俊子に済まないと思っているのだろう。こういう純な気持ちをストレートに体と心で感じる鉄平はかけがえのない奴だと聡は思う。津田先生は大きな掌を広げて両端の鉄平と恵の上腕に掛けて六人の教え子を自分の腕の中に抱きこんだ。そして普段のあの笑っている目で、一人一人の目を上からのぞきこんで、
「よし、教室に戻ろう」
と言って、皆を靴箱の方に押し出す風にして、自分は職員室の靴箱の方に行った