お昼寝のときの咳が止まらない

とある幼稚園健診での話です。

保育士 「先生、半年前からこの子がお昼寝の時にずっと咳をしているんですが、胸の音は問題ないでしょうか?」

私 「(聴診器をあてながら)そうですね~、胸の音は問題ないみたいですよ」

保育士 「そうですか~、おうちでは咳はでないみたいなので・・・なんでお昼寝のときだけ咳しているのかわからなくて・・・昨日なんか、息が止まるんじゃないかっていうくらい激しい咳をしてたんです・・・」

私 「お昼寝のときに使っている布団のダニ・ホコリ(ハウスダスト)が怪しいですね」

保育士 「ダニですか?」

私 「念のため、寝ているときの胸の音も聴診器で聞いてみましょう」

保育士 「お願いします。」

その後、タオルケットを敷いたマットレスに寝ている状態で、聴診器による診察を行った。

私 「やっぱり寝ているときも胸の音も問題ないですね~」

保育士 「先生!ダニが気になるって先ほど言われたので、おうちから持ってきてもらったいつものタオルケットじゃなくて、園にあるものを使わせたら、まったく咳をせずにすやすや寝てます!

私 「じゃあやっぱり掛け物のダニですかね~、ちょっとおうちのタオルケットを貸してください。(においを嗅いでみたところ)・・・ダニじゃなくて、柔軟剤ですね。」

保育士 「えっ?柔軟剤が咳の原因ですか?」

私 「はい、においを嗅いでみたらわかりますよ」

保育士 「(においを嗅いでみる)いいにおいですね・・・」

私 「そのにおいを嗅ぎながら深く息はできますか?

保育士 「(もういちどにおいを嗅いでみる)うっ・・・息が入りません・・・」

私 「はい、そういうことです」

保育士 「どういうことですか?」

私 「タオルケットに付着した柔軟剤という化学物質による過敏反応が起きてるんですよ。これじゃあ、呼吸がきつくて、咳もでますよ」

保育士 「柔軟剤って、体に悪いんですね~・・・私も使ってます・・・」

私 「そうですね~体には毒です。ましてやこのお子さんのような化学物質に敏感な人はなんらかの症状がでますよ」

保育士 「そうだったんですね~原因がわかってよかったです。半年間も続いていたので・・・」

私 「よかったですね~。このタオルケットの柔軟剤はもうとれないレベルですから、親御さんには使わないようにお伝えください」

保育士 「わかりました~」

【まとめ】
寝ているときに咳が止まらない場合、
①ダニ・ホコリ
②柔軟剤
が原因になっていることが多いです。
①は60度以上の熱処理、②は使用しないことで対処することが可能です。

嗅覚は脳と直結していますので、においをかぎながら深く呼吸ができるかどうかで、体にとっていいものかそうでないかを判断することができます。
普段使っている洗濯洗剤、柔軟剤、ボディーソープ、シャンプー、リンス、コンディショナー、化粧品、調味料などのにおいを嗅いでみると、いろんなことがわかりますよ♪

下記の論文では、界面活性剤による気道炎症のメカニズムだけではなく、ホコリに洗剤の残りがくっついているということも報告されています。
院内のホコリを掃除するときに、いつも柔軟剤のいやなにおいがしていたので、「絶対柔軟剤がホコリにくっついてるはず」と思ってました・・・。

【タイトル】
洗濯用洗剤界面活性剤はIL-33の発現を増加させ、ILC2を活性化することで好酸球性気道炎症を誘発する

【著者】
齊藤 京子 他(国立成育医療研究センターアレルギー・臨床免疫科 他)

【要旨】
はじめに: 疫学的研究により、清掃作業や清掃用品の頻繁な使用が喘息の危険因子であることが示された。洗濯用洗剤には上皮バリア開放作用があることが報告されている。しかし、洗濯用洗剤が気道炎症を直接誘発するかどうか、またin vivoでのそのメカニズムについてはまだ解明されていない。

方法: 市販の洗濯用洗剤2種と、洗浄や化粧品によく使われる界面活性剤2種(ラウリル硫酸ナトリウムとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)をマウスに経鼻投与した。肺は、フローサイトメトリー、組織学、ELISA、および定量的PCRを用いて分析した。ヒト気管支上皮細胞を洗濯用洗剤で刺激し、定量的PCRとウェスタンブロッティングを用いて分析した。酸化ストレスの関与は抗酸化剤を用いて評価した。家庭から採取したほこり試料を分析し、臨界ミセル濃度(CMC)を測定して洗剤含量を決定した。

結果: 洗濯用洗剤と界面活性剤の投与により、IL-33の発現増加と2群自然リンパ球(ILC2)の活性化を伴う好酸球性気道炎症が誘発された。Rag2-/- Il2rg-/-, Il33-/-マウスおよびNACを投与した野生型マウスでは、洗剤誘発性好酸球性気道炎症が有意に抑制された。気道におけるデタージェント誘発性IL-33発現は、in vivoおよびin vitroの両方で、NAC処理によって抑制された。CMCは、試験したすべてのほこり抽出物に認められ、家庭間で有意に異なっていた。

結論: 洗濯用洗剤と界面活性剤は、上皮細胞とILC2の活性化を介して、in vivoで好酸球性気道炎症を誘発した。また、酸化ストレスを通して気道上皮細胞にIL-33の発現を誘導した。さらに、残留洗剤はハウスダスト中に存在し、日常生活で気道に吸入されると推定された。

Allergy. 2023 Jul;78(7):1878-1892.

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