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人目を気にせず、好きなものを好きだということ


 大学の裏にある寮に住んでいたので、寮を見てみたいというクラスメイトが何人か遊びに来たことがあった。 築80年とかになる寮で、3人で24畳の共同部屋。狭いスペースと、染みついた歴史。個人のスペースには畳ベッドと机いす、本棚くらいしかなかった。

 クラスメイトの中では、かわいい子だなあと思って気になっていた子もいたので、内心緊張していた私に、その子がその本棚を見て、「節操がないなあ」と言ったのでわりと傷ついた。

 そうか、私の趣味は、世間では「節操がない」と言われるようなものなのだなあと。

 ビートルズもあれば、ZABADAKや遊佐未森もenyaもあるその棚は、確かに世間から見れば、節操がなかったのかもしれない。

 それでも、自分がいいものだと思うものを厳選していたとも思う。

 そうしてまた、私は思う。

 何かを好きであることは、他の何かを好きであることを阻害しない。


 カレーも好きだけど、うまかっちゃんも好きだ。
そうしてそのことは、私が、甘いものを好きなこととバッティングしない。

 好きなものを好きだといい、お金をためて好きな人のCDを買っていたあの頃。そうした時代があって、今の私がいる。

 節操なんて、バクテリアに分解されてしまえ(バクテリアのみなさん、ごめんなさい)。

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谷川勝彦(たにかつ)
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