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やってみないとわからないことがあるなあと(南九州新聞20220212掲載)

NPO法人ルネスかごしまとして、感染症による自宅待機を余儀なくされ、家族や親族、友人なども濃厚接触者になってしまい、毎日の食事の買い物ができない方への、食料の無料配達をおこなっている。


ひごろから、生活困窮世帯の方への食料配布などを、フードバンクや子ども食堂などと連携しておこなっているので、その延長でできるだろうと思っていた。お米やカップラーメンなどのレトルト食品、企業や農家さんから提供いただいた食材を届ければ、それでいいだろうと。

ところが、生活困窮世帯の方は、(経済的事情を別にすれば)買い物には行くことができる方で、お米や野菜などを届ければ、足りないものは自分たちで買うこともできるし、もちろん調理もできる方が多い(できない方は、ヘルパーさんなどの別のサービスが入っていることが多い)。

今回は、自宅待機(濃厚接触や陽性の)方が対象である。買い物には行かないように言われている(自治体による)ので、その方やご家族も含め全員が、一定期間(それも、どのくらいになるかわからない)、まったく買い物に行けない。となると、基本的には私たちが持っていくものが、そのご家族が食べるものほとんどすべてということになる。

調理ができるかできないか、今は元気で体を動かすことができ調理ができても、いつできなくなるかはわからない。アレルギーや好き嫌いもあるかもしれない。検査待ち、検査結果待ち、陰性だけど自宅待機を言われた方々。先も見えず不安である。

私たちが届けるのは、ものとしては「食品」なんだけど、本当に届けているのは「安心」なのではないか、そんなことを考えながら、電話を受け、配達の手配をし、スーパーに行き、栄養のバランスも考え、すぐに食べられるものや少ない手数で調理できるものを購入し、お届けをする毎日である。

ところで、私はこれまで、スーパーで買い物をする時、高くても2000円くらいまでしか購入したことが無かった。独り身であり、家に冷蔵庫が無い生活をしているため、スーパーで購入するのはその日、その時に食べるものや、コーヒー豆、ひだまりカフェのお菓子くらいのものである。だから、スーパーでカゴいっぱいに食品を入れ、10000円を超すような買い物をする人のことが、失礼ながらさっぱりわからなかった。もっとこまめに、スーパーに来ればいいのに、くらいに思っていた。

ところがですね、やってみて初めてわかったのですが、一家数人の、たとえば1週間の食事を全部まかなうとなると、簡単に10000円くらい行ってしまうのですね。今回はレトルトのものが多いということもあるけれど、これに、シャンプーや洗剤などの日用品まで入れたら、それこそ大変なことになる。一つの世帯を、維持していくことは、本当にお金の掛かることなんだなあと。

あらためて、仕事もしながら、一家の買い物をし、食事を作り、洗濯や掃除もおこなう方への、敬意をいだいたところでありました。
世の中には、やってみないとわからないことが、まだまだたくさんあるんだなあ。

お読みくださりありがとうございます。 いただいたサポートは、NPO法人ルネスかごしまが行う「生活困窮家庭・ひとり親家庭支援」に全額使わせていただきます。