すだまさし
おっと危ない。代表の試合をスルーするところだった。オレとしたことが。いや、別にオレとしなくてもいいのだが。
対戦相手はチュニジアだ。息子に聞いたらアフリカの北の国だという。
「北の国」といったら、さだまさしだ。あの高い商魂と低い志、そして底辺の音楽性はどうにかならんのか。
腹が立つなら見なければいいのだが、たまたまつけたNHKの歌番組で、ウクライナ戦争に乗っかった曲を歌を歌っていて、さすがに乗っちゃだめだろうと思ったわ。
乗ったわけじゃないどうしたこうしたという言い訳はあるのだろう。だが結果として乗っちゃってるし、キーウから遠く離れた街で商売してるし。ゴールデンタイムの全国放送で。しかもそれが音楽的に陳腐すぎるとしか言いようのないレベルだし。SMAPが2006年にリリースした「Triangle」のほうが、何十倍も素晴らしい反戦歌だ。
いかんいかん、さだまさしを前にするとつい怒りで我を忘れてしまう。くまだまさしの方がよほど世の中を平和にしているぞ。
ちなみに息子の高校時代の友達に、すだまさしというのがいたそうだ。彼は周囲から常に「どっちなんだ」と突っ込まれ続けていたらしい。
その息子にチュニジアは強いのかと聞いたら、FIFAランキングでは格下だという。では格下に負けたということか、我が日本は。いや、別にオレのものではないが。
などと言いつつ、実はこのゲーム、ほとんど見ていない。すっかり忘れていた。キリンカップを。
例によって弟からのLINEで試合を知って、そしてその時点で既に0-2と負けており、オレがちゃんと見たのは試合終了間際の3失点目だった。
もうチュニジアの勝ちは決まっている。だから一人でゴールに迫ったチュニジアの選手も、大きくゴールを蹴って時間稼ぎできれば十分と思っていたはずだ。宇宙開発でいいんだ、と。
そんな気楽さがいい具合に働いて力が抜けたのだろう、ミドルシュートが日本のゴールにきれいに決まったのだ。時間稼ぎのシュートのつもりが見事なゴールになったのだから、チュニジア人は大儲けだ。
問題は日本の守備陣だ。ディフェンス2人がチュニジアに併走していたが、左右にいたフリーの相手が気になったとは思うものの、ちっとも体を寄せず、自由に打たせてしまっていた。きっと「どうせこれは時間稼ぎの宇宙開発」と決めつけていたに違いない。困ったもんだ。
困ったついでに2失点目をリプレーで見てみたら、これも明らかに守備をサボっているではないか。
プレスしない、人任せにしている、声をかけない。
アマチュアかよ。素人かよ。まったく情けない守備だった。
いやいや、攻撃も酷かったぞ。ってこれは久保君を名指しなのだが。
終盤ボールをもらった久保君は、焦っているのだろうか、無理矢理中央に切れ込んでボールをロストしていた。仲間を使うことを知らないのか、しないのか。このワンプレーを見ただけで、とても代表選手としては使えないと思ってしまったね、オレは。
いや、オレが思っても、森保が使いたいと思えば使われるのだが。久保君は。
迷惑そうだったのは三笘で、スペースを消されまくって苦笑いである。
「森本二世かもな」という息子の予言が当たらないことを祈るのみである。
さて、そんなふうにさらっと日本代表の抱える闇を指摘した後、オレがここに持ち出すのが昼メシ問題である。
今日オレが昼メシに向かったのは本郷の大阪王将である。オーダーしたのは大阪チャーハンに餃子というセット。ジャンクすぎるメシで、決して食いたいと思ったわけではなく、半分ネタで頼んだのだ。
そし出てきたそれは、とんでもない量のチャーハンだったのである。具にはウィンナにナルトにエビ天ぷら。一体何が大阪なのかよくわからないが、とても下世話な食い物だということはよくわかった。
もちろん64歳が食い切れるものではない。運ばれてきた瞬間オレは、やらかしてしまったことを悟り、ひゃーごめん、たぶん残すと中国人の店員に口走ったほどだ。そして当然のように半分残してしまったのである。
いや、旨かったよ。見たまんまの味で、タマネギのよく効いたチャーハンは美味だった。しかし量がとてつもないという話だ。
これで990円。学生ならペロッと平らげるのだろうが、64歳としては量は半分にしてもらって700円ぐらいで設定してもらったら嬉しかった。
そしてこの昼メシ、一緒に行ったウッチーがおごってくれたのである。おお、ありがたや。ウッチーはいつもこうして気前よくおごってくれる。感謝である。
この昼メシ問題について、先日、ある現場で話し合ったことがある。
オレに仕事を発注した制作会社の担当者が「社内規定が変わってお昼代を払えなくなりました」と申し訳なさそうな顔で言ってきたのである。
以前は1000円以内という縛りはあったものの、確かに昼メシ代は払ってくれていた。コストダウンを進めていくため、それが払えなくなったというわけだ。
まあ、1000円以内というのもいまどきはちょっと微妙で、ラーメンなら食えるが餃子のセットは厳しいというラインだ。大阪王将ならいけるが。
もちろん昼メシ代が出ないからといって、そんなことでオレは暴れたりしない。穏やかに、気にしないでください、大丈夫ですよーと答えたのである。
担当者は「でも、他社はどうされているんですか」と聞いてきたので、払ってくれるところもあれば払ってくれないところもありますよと正直に答える。
そして、どっちでもいいけど正直に言うなら、ファイナンスはそっちの仕事だろと思いますねと伝える。
そうである。制作会社だろうが広告代理店だろうが、間に立って中抜きしている立場の会社は、ファイナンスすべてに責任をもつべきである。だからメシ代ぐらい払うのが当たり前だろうというのが昭和なオレの考えだ。
担当者はそれを聞いて「うーん、そうですよねえ」と思案顔。オレはあわてて、でもメシ代の出る出ないでパフォーマンスに差が出るなんてことは絶対ないですからと付け加える。
担当者はやはり「うーん、そうですよねえ」と答えるのだった。
間に立って中抜きしているのは、いったい何のために中抜きしているのだ。抜いた金の使い道はちゃんと考えているのか。
オレはそう思うのだが、しかしそういう態度を出すのは物欲しげで下品でタカリのようであるから、心の中に押しとどめているのである。だが本心ではそう思っているのだ。メシ代を出すのだって仕事のうちだろう。
もちろん現場の人たちはだいたいが気持ちよく払いたいと思ってくれている。「会社の規定で」と口にするときは、だからとても申し訳なさそうだ。
その点ウッチーは自分の考えが会社の規定そのものだから、ためらうことなく払ってくれる。こちらも心置きなくごちそうさまと言える。ありがたいことなのだ。
昼メシが旨いと午後も元気に働ける。またよろしくお願いしますね。(2022.06.15)
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