その店は、街のはずれにある。 バス通りに面していて、人の通りもそこそこあるから、決して立地が悪いわけではなさそうだ。 だがその店には、赤提灯も看板もなく、窓ガラスに大書された店名は薄れかけていて、要するに「見つかってほしくない」と思っているようなのだ。そして店内は外からはまったくうかがい知れず、漏れてくる灯りも薄くて、まるで「中に入ってきて欲しくない」と主張しているようでもあるのである。 数日前に発見して気になっていたその店に、本日、息子を伴って二人で突入した。 引き戸を明
目がしょぼしょぼして、目やにも出ているので、目薬を差そうとドラッグストアへ買いに行った。船橋駅前のマツモトキヨシである。 なんで船橋駅前にいるのかというと、今日は船橋にある某所でインタビューだからだ。 マツモトキヨシの開店は9時である。 ドラッグストア業界は今とても面白くて、1位がイオンが買収したウエルシア。2位がツルハでマツキヨは3位だ。スギは6位である。これに何が面白いかというと、再編含みのごたごたがくすぶっているからである。 主役はウエルシアの株主でありながらツルハにも
東大がチャットGPTを引き合いに出して「人類はこの数ヵ月でルビコン川を渡ってしまったのかも」と述べたのに対し、ネットでは単に「ルビコン川」という言葉を使いたかったからではないかという指摘がある。 そもそもルビコン川とは何か。どうやらイタリアにある川らしく、たいした障害もない小さな川のようだ。それなのにどうしてこんなしょぼい川が、どえらいことの例えのように使われているのだろうか。 だいいちルビコン川を渡るといいことがあるのか。それとも悪いことが起きるのか。 昔、JR東海がリニア
虎ノ門で飲むのは初めてである。 都心の完全なオフィス街にもちゃんと居酒屋はあって、立ち寄ったのは実に昭和な店。広い店内には6人がけのテーブルがぎっしりと並び、大勢の人たちがワイワイガヤガヤと飲んでいる。 もちろん路面店。地下などではない。私は地下の店と高層の店が大嫌いなのだ。路面店こそパラダイスである。 今私はワイワイガヤガヤと書いたが、実際はそんなことはない。実に穏やかで行儀よく、あえて言えば上品に飲んでいる客ばかりだ。大声を上げる客など皆無。喫煙が許されているのか、たま
そば殻枕に変えた。とても快適である。 私は硬くて高い枕が好きなので、低反発の低い枕はあまり合わなかった。よく眠れるからというサイトの声を信じて8000円もする低反発枕を使っていたのだけれど、2000円の安いそば殻枕のほうがずっとよく眠れる。 枕は高ければいいというものではないようだ。この場合の高さとは、もちろん価格のことである。 実はここのところ眠りがあんまり上手にできない。 どういうことかというと、寝て4時間くらいしてトイレに起きたあと、再び寝ようとしても寝付けず、そのま
「ミス・スリム」を意味する造語をタイトルにした荒井由実の2枚目のアルバム「MISSLIM」は、たいへんな傑作である。収められている曲の多くは、ユーミンが十代のときに書いたものだ。 次の3枚目「コバルトアワー」からユーミンの作風はがらっと変わる。セールスを意識してよりポップな曲作りをするようになったためだ。同時にもはや自分自身に十代の感性は失われ、二度と「MISSLIM」のようなアルバムはつくれないという自覚があったことも理由だ。 そのため「MISSLM」までの2枚のアルバム
おっと危ない。代表の試合をスルーするところだった。オレとしたことが。いや、別にオレとしなくてもいいのだが。 対戦相手はチュニジアだ。息子に聞いたらアフリカの北の国だという。 「北の国」といったら、さだまさしだ。あの高い商魂と低い志、そして底辺の音楽性はどうにかならんのか。 腹が立つなら見なければいいのだが、たまたまつけたNHKの歌番組で、ウクライナ戦争に乗っかった曲を歌を歌っていて、さすがに乗っちゃだめだろうと思ったわ。 乗ったわけじゃないどうしたこうしたという言い訳はある
某メガバンクグループの役員にインタビューする。 業界の課題は何だという私の問いに対して役員は答える。「FDだ」と。 この答えに私は一瞬、けっこうな違和感を抱く。 FD、すなわちフェデュラリー・デューティが言われたのはかなり前ではなかったか(後で調べたら2016年とか、そのあたりだった)。そもそも顧客の利益を最優先に考える、つまり顧客第一という発想はどんな商売にも当然のことではないのか。それなのに金融業界は5年も6年もたっても、そんな簡単なことがまだできていないというのか。
それは神戸からの帰りの新幹線であった。 ちょっと事情があって、私が座っていたのは自由席だった。3人がけの窓側である。 ちなみに新幹線の座席はこの3人がけの窓側に限る。富士山が見えないというデメリットはあるものの、中央が空席でゆったり座れる確率が高いからだ。窓際ならハンガーもコンセントも使い放題である。トイレに立つときにちょっと面倒だが。 ともかく私はいつものように3人がけの窓側に座っていたわけだ。 大阪駅ではほとんど客が乗ってこなくて、ゆったりしたままだった。 次の京都駅で
「ボクはアーティストなんだ」とイキがって「リぃぃぃー」とか叫んでいた頃から打って変わり、郷ひろみが「そうか、オレは大衆のおもちゃでいいんだ」と気づいたのは「あーちち、あーちち」と歌ったときだそうだ。 それはそれでなかなかに好感の持てるエピソードではあるのだが、だからといって「じゃんけんぽん」はないだろう。やりすぎだ。置きに行って、思い切り外した感がハンパない。 そんなことを言いながらNHKの「うたコン」を観る。次は誰だ。 読売新聞のテレビ欄には「布施は君バラ」とあったから、
J1からJ2に降格することを「沼に落ちる」と言う。一度落ちたらなかなか浮かび上がれないという意味だ。 そんなことないだろうと思われるが、千葉やヴェルディを観ていればこの言葉の恐ろしさがよくわかる。20チームが40試合以上も戦って、上位2チームしか昇格できないという実に恐ろしい沼なのだ。世界一難しいリーグとさえ言われる。 なんとアルビレックスもこの沼に落ちて5年もたってしまった。だが今日やっとJ1復帰を決めた。ついに沼から出ることができたのだ。 実は「沼に落ちる」にはもう一つ
70年代の1位が「また逢う日まで」で、80年代は「ルビーの指輪」だ。何かというと、ミュージックマガジンが発表した年代ごとのJPOPベスト100である。 その90年代版が先日発表された。1位は「接吻」である。 は? せ、せっぷん? 何それ。 お答えしましょう、OriginalLoveが93年に発表した歌であります。 続いて2位が「Automatic」、3位が「ロビンソン」、4位「スウィート・ソウル・レヴュー」、5位「今夜はブギー・バック」。 うーむ、5位はわからん。以下100
我が家から100mのところにウエルシアがある。ドラッグストアだ。 子供服の西松屋が撤退したあとに居抜きで入ったのが1年ほど前になる。このへんは住宅と畑ばかりで近所に店がまったくないから、ウエルシアは大歓迎。とても重宝している。 ティッシュやシャンプーはもちろんのこと、ビール、酎ハイ、お茶、お菓子なども買っている。電球が切れたときも100m歩いてウエルシアだ。 最近のドラッグストアはコンビニ化しているので、スギ薬局派の嫁も「牛乳忘れた」といってはサンダルでウエルシアである。
藤子不二雄Aが亡くなったことが大きく報じられているが、私にとっては4月7日に中川イサトが逝ってしまったことのほうが衝撃だった。 中川イサトはギタリストである。 出発点はあの五つの赤い風船。つまりは昭和のフォークだ。 グループ解散後は、ソロギタリストとしての道を歩く。スタジオミュージシャンになったら稼げるのにといろいろと声もかかったらしいが、頑として断ってソロギタリストとしての道を歩く。生活費はギター教室の講師などで稼いだそうだ。 そんな道をとぼとぼと歩いていた70年代後半
本日は共通テストである。 共通一次試験とかいう制度すらなかった時代に大学を受験した昭和の私は、今もってこの共通テストの仕組みがよくわからない。 これを受けておかないと、大学受験そのものができないということなのか? そもそもいったい何のためにあるのだ? そのあたりから理解できていないのだ。 まあ、よい。私が受験するわけではない。受験するのは娘なのだ。娘に任せておけばよい。 それに我が家には東大現役合格で今は塾講師のアルバイトもしている息子がいる。わからないことがあれば全部息子
フリーランスになりたての頃のことである。 ある建築家のもとへ仕事で訪れた。その建築家もフリーで、自宅で仕事をしていた。 彼は私に向かって「仕事しながら飲んでる?」と聞いてきた。えっと思って問い返したら「いやあ家で一人で仕事してるとつい飲んじゃうよねえ」と、“君もそうでしょ?”という口調の答えが返ってきた。 昼間っから、しかも仕事をしながら飲むなんてとても考えられなかったから、というより飲み始めたら絶対に仕事なんて放り投げてしまうから、私は曖昧な薄笑いで「飲まないっすねえ」な