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車窓から見える世界

世界はいろんな色が溢れている。
目に映る景色は、一体何色でできているのだろう。
今年の夏は、山、湖、村、街の景色をこの目で見てみたいと思い、旅の行き先をスイスに決めた。
これまでの海外旅行で国内の移動を伴っての旅は、意外としたことがなかった。大体が、同じホテルに連泊して、そこを拠点に近郊を見て回ることが多かった。
大きめの登山用のリュックサックを購入し、バックパッカーとして旅に出た。
もう若者ではないけれど、リュックサックに必要なものを詰め込んで旅に出ることは、なんだかこれから冒険に出かけるみたいでワクワクした。
必要なものだけを背負い込んで旅する姿が、私の人生そのものを表している感じがした。
結局、いつも通り自分の「好き」を詰め込んだ旅になってしまったけれど、旅の記録を残しておきたい。 

スイスの交通事情

旅は自己決定と選択の連続である。
「どこに行って、何をして、どんな旅にしたいのか」
今回は電車で毎日移動して自然も街も見たかったので、スイスに何度も行ったことがある方のアドバイスももらいながら、自分でもおおよそのプランを立てた( Google Gemini(AI)にも助けてもらった)
今回、旅全体を通して【SBB Mobile】というアプリが大活躍した。スイスの交通機関は発達していて、国民のほとんどが車より電車を利用しているようだ。オンタイムで電車・バスが来るし、どこのプラットホームにいけばいいかリアルタイムでアプリに出るし、移動で手こずることがほとんどなく、個人的には日本の交通機関よりも断然利用しやすかった。案内や駅・電車内もユニバーサルデザインが浸透していたところも良かった。

SBB Mobileアプリにプランを保存しておくと便利
子どもが遊べる車両もあり、バリアフリーが進んでいた

1週間くらいスイスを回る予定にしていたので、今回スイストラベルパスを購入した。
主要都市の市内交通や全国約500カ所の美術館・博物館が無料になるほか主な山岳交通の半額割引などの特典もついている。

私は旅行会社のサイトで6日間・2等席のチケットを購入。わりと高額だけど、美術館・博物館を沢山見たい人にはおすすめで、なんと言っても毎回チケットを買う手間を省けたので購入して良かった。
駅の改札はなく、車内でQRコードのチェックが時々入るという仕組みだった。

チューリッヒ&ベルン


チューリッヒ空港に着いて、早速向かったのがザンクト・ガレン修道院。
修道院附属の図書館はスイス最古の図書館で、バロック様式の装飾がとても美しい空間だった。
その後チューリッヒ中央駅の目の前にあるスイス国立博物館へ。
海外の美術館や博物館も大好きだけれど、なんせ規模が大き過ぎてじっくり見たいのであれば丸1日くらいかかってしまう。国立博物館は、展示の仕方がアーティスティックなところも魅力的だった。
チューリッヒ美術館は時間がなかったので、国立博物館近くの歴史博物館へ。
あと、後日に行ったけれどリンツのチョコレート工場もチューリッヒから行きやすい場所にある。博物館ツアーチケットは売り切れでチョコのお土産だけ購入。
チューリッヒからベルンまでは、電車で約1時間半。
旧市街地である首都ベルン。
個人的にはすごく好きな街だった。
日中は日差しが強くて外を歩きづらかったので、朝の涼しいうちに街を散策した。中世ヨーロッパの街並みがそのまま保存されている。建造物も川も美しい。街を散策した朝方のあの空気感は、ずっと心に保存されるような気がした。

ラウターブルンネン

ユングフラウ地方の入り口、インターラーケンへ移動。ベルンから約1時間半で到着。
登山はせずに、スイスの村の風景を見たいと思ってやって来た。
ブリエンツ湖を渡る船に乗った。山と湖の色がとても色鮮やかで、これまでに見たことがない風景が続いた。
スイストラベルパスは、船の乗車も含まれる。
韓国ドラマ『愛の不時着』のロケ地に使われたイゼルトヴァルトの桟橋も見てきた。
とても静かでゆったりと時が流れる。
湖を眺めながら1日何もせずに過ごしたいなと思える場所だった。
船の他にバスも乗って、木製玩具を作っている工房に行ったりもした。
インターラーケンには2日間滞在して、2日目はグリンデルヴァルトに行く予定だったけれど、前日夜の集中雷雨で電車やゴンドラがキャンセルになってしまったようだったので、予定を変更してラウターブルンネンへ。
広大な自然に圧倒される。
人間の存在など塵のようだと思うくらい、山の迫力がすごかった。
山脈の間にある村を見下ろしながら、木陰のベンチに座って昼食をとった。

リヒテンシュタイン

オーストリアとスイスの間にある小さな国リヒテンシュタインへ移動。
移動は約4時間。ちなみにスイストラベルパスはリヒテンシュタインでも使用できる。
入国の手続きは不要だけど、首都ファドゥーツにある観光案内所で入国スタンプを押してもらえる(有料)
こじんまりした街だったけれど、ここでも美術館や博物館を楽しんだ。私は、切手が大好きなのでフリーで入館できる郵便博物館が、なんだかんだ一番楽しんでしまったかもしれない。お土産にかわいい切手も買った。
今も王家が住んでいるファドゥーツ城は、天空の孤城という雰囲気でかっこよかった。
小さい国だけど、とても裕福な国だそうで車道は高級車がバンバン走っており、高級国観光という新鮮な体験ができた。

ルツェルン

約3時間かけて、スイスのルツェルンへ移動。
車窓に流れる街並みを楽しんでいると、あっという間に次の目的地に着く。スイスでの移動は、長距離であっても全く退屈しなかった。
ルツェルンは「水辺の古都」と呼ばれる街で、水の透明度が高くて本当に綺麗な景色を眺めることができた。
湖の周りをひたすら散策。
ベルンに続いて、自分は中世の建築物がそのまま保存されている街が好きなんだなと思った。
ヨーロッパに来るとベンチやお店のテラス席が多いことに気づく。
ひとりの人、ふたりの人、3人以上の人、ペットといる人。
ベンチは腰を下ろして休憩する場所であり、考える場所であり、話す場所であり、何もしない場所でもある。
止まる場所があるから進んでいける。改めて、ベンチっていいなと思った。
テラスでランチしたり、ベンチに座ってコーヒーを飲みながらずっと湖を眺めていた。

ミラノ

今回、帰路はミラノからのエアチケットを取っていた。
建築さんぽのためだけにミラノへ。
特筆すべきことは何もないくらい、街並みが素晴らしかった。
でも、ミラノは観光客でごった返していて観光地はちょっと騒がしくて落ち着かなかった。
物価の高いスイスでは適当な食事をしていたので、イタリアでは美味しいピザやジェラートを食べられたのが良かった。
今度は時間をとってイタリア周遊の旅もしてみたいなと思った。

旅全体を通して、今回もよく歩いた。
丸い地球の上をどこまでも歩いていける気がした。
生きているということは地面に足が着いていること、死ぬということは地面から足が離れてしまうこと。
旅をすることは、生きていることそのものだ。
美しい景色の中に身を置くと、自分がその中に溶けて一体になるような不思議な感覚がある。
ここ数年で、旅は「非日常」なんかではなく”日常の中で見る短い夢”だと思うようになり、家に帰ってきてからも、さらに普段の日常を愛おしく思えるようになった。

次はどんな夢を見ようか。
楽しい夢の時間を、これからも自分で作っていこうと思う。

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