ロールモデル
生き方がかっこいいなぁ、と思う人がいる。
生き方というと抽象的で、具体的に何がと問われればことばにしにくい。
その人の性格や人生のすべてを知っているわけではないけれど、その人の全身から滲み出る何かを感じ取って、自然と惹かれてしまうという感覚だ。
容姿とか肩書きとか外見的なことではなく、子どもの頃テレビで見たプロスポーツ選手や部活の先輩に憧れをもつこととも少し似ているかもしれない。
でも、ただ単に技術が高いとかみんなから人気があるとか、そういうものではない。
私が惹かれてしまうのは、どこかこの人は本当の孤独を知っているんじゃないだろうかと思う人だ。人には見せない苦労や傷つきや悲しみを自分のものとして大事に守り続けている人。
だけどそれをあまり表に出さず、自分のやるべきことを淡々と行い、どこか達観している空気感がある。
きっと見えないところで戦い傷ついて、想像できないような努力を積み重ねている。
そういう人にしか放てない光というものが、確かに存在するような気がする。
いつ、どのタイミングで、誰に出会うか、は本当に人生に影響を与える。
大人になればなるほど、縁は本当に不思議なものだと思う。
出会いは偶然でできているようで、必然なのではないだろうか。
この人に出会わなければ、私はここにいなかっただろうなという出会いが突然訪れる。
人の力なんて微力で、大したものではないだろうと昔は思っていたけれど、社会人になれば特に組織の上の人たちの考え方や作られた理念や方針は物凄い影響力があると知った。
世界中を見てもたった1人の力で、人を生かすことも殺すこともある。ミクロもマクロも変わらない。「責任」というものの重圧を知った。
海の底に沈みかけていた時に出会った今の職場の上司が定年退職された。
「人生を楽しむ」をモットーにした生き方がかっこいいな思う人だ。
人生には、きっとこのタイミングだから出会えたという奇跡のような出会いがある。この上司は、自分にとってまさにそういった出会いだった。
職場全体に、これからもその人が作り上げてきた大切なものをひとりひとりが大切に守り抜こうという意識があることはすごい。人徳がある人、人格者ということばは、こういう方のためにあるんだろうと思った。
ちがう畑から来た、業界の経験もない私を採用してくれたのがしばらく不思議だったけれど、働きはじめてから数ヶ月後の面談で「私は最初からこの人しかいないと決めていましたよ」と、言ってくださったことばは一生忘れない。
この季節になると、色んな出会いと別れがあったなと過去に思いを馳せる。
それでも出会わなければよかった出会いなど無かったように思う。
色んな出会いが「私」を形作ってくれて、私は私を知っていくことができる。
そして今日も明日も生きていこうと思える。
まわるまわる 時代はまわる
別れと出会いを繰り返し
喜び悲しみ繰り返し