トン・コープマン チェンバロ・リサイタルに行きました。
数日前、ロナルド・ブラウティハムさん(70歳)のフォルテピアノ・コンサート(ベートーヴェン・ピアノソナタ名曲集)に行ったばかりだったので、【オランダ】【古楽器】という繋がりに、縁を感じます。
若いころ、1ヶ月+1ヶ月、田中未知さんの手伝いでオランダに滞在したことがあったので、そういう意味でも、やっぱり縁があるのかな。
フォルテピアノを生で聴くのもはじめてで、その当時の調べ、その繊細さにうっとりすると共に、ロナルド・ブラウティハムさんの演奏力でもあり、ヴェートーヴェンのダイナミズムでもあると思うけれど、時にグランドピアノに負けないようなスケールの大きさにも唸りました。
そこから数日後、トン・コープマンさん(80歳)。こっちは、バロックなど、さらに前の時代の音楽を、チェンバロで。
トン・コープマンさんを生で聴くのは、3~4回目だと思う。
演奏前や演奏後も、いつもニコニコしていて、こんなにチャーミングな人はいないと思う。
アンコールはいつも大サービスだし、サイン会でも、めっちゃ笑顔。
今回も「パンフレットにもサインもらったら負担になるかな、、、」と思いながら、スタッフの人に聞くと快く「いいですよ」とのことだったので、パンフレットにもしてもらって、、、自分のイヤらしさを痛感するのです(笑)
しかも、こちらから手を出していないのに、握手までしてくれて。あ~なんたる、なんたる。感謝。感謝。
演奏は、いつも通り朗らかな、その人間性が音になったような、すばらしいものでした。
特に【J.S. バッハ:協奏曲ニ短調 BWV 974(原曲A. マルチェッロ:オーボエ協奏曲)】は、とてもとても好きな曲なので、本当に感激しました。
なんでこの曲を好きになったかというと、アレハンドロ・ホドロフスキー監督『ホドロフスキーの虹泥棒』(1990)という映画のテーマ曲だからというのもあり。
映画の曲はトランペットなんですけどね。「モーリス・アンドレの演奏なんじゃないか」と以前ネットで読みましたが、真偽はわかりません。
この曲は、ハインツ・ホリガー(オーボエ)とか、いろんな人がやっていて、そういうのも好きで、とにかく何度も聴いているから。
他にも、馴染みがある曲が何曲もあって、とてもよかったです。
生演奏に「知ってる曲」も何もないと、ずっと思ってきたけれど、
やっぱり「知ってる曲」「何度も聴いている曲」だと、他の演奏者との違いがよくわかるから(わたしは譜面が読めないので、譜面との違いとかまではわからないけど)、やっぱり深く味わえますよね。
(なにか、この辺は、ジャズとはちょっと違う気がする。まだうまく言葉にできないけれど。)
そうそう、話が戻って、2016年に、トン・コープマンさんがアムステルダム・バロック管弦楽団と来日した演奏を観に行ったんですが、
その時、トン・コープマンさんは笑顔でタクトを振っていたんですよ。
それに応えるように楽団員も笑顔で演奏していて。
そんなコンサート、クラシックでは初めて観たから(アンコールで「無礼講」みたいになってそうなることは稀にありますが、これは本編で)、衝撃でした。
たぶん、あの時、観客もみんな笑顔になっていたのだと思います。
「音楽」って、「音を楽しむ」と書くけど、しかめっ面してやるばかりが能じゃないんですよね。
いや、厳格な、極寒のロシアの冬みたいな演奏も好きなんですけど(笑)
「音」「音楽」と「人間性」は別と言われることが多いけれど、
やっぱり人間性って音に出るなと、「場」に溢れるなと、
トン・コープマンさんの演奏を聴くと、いつも思うのです。
愛に溢れているというか。
ありがとうございました。