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飯塚雅俊さん『闘うもやし』

買って、8年ちかく寝かしてしまっていました、、、すみません。

とても励まされます。

わたし自身、カッコつけて言えば「個人事業主」であり、包み隠さず現状を言えば「ニート」みたいなもの。
廃業までしていないけれど、ほとんど廃業状態。

以前は作りかけている映画を完成させて、「一発逆転」と思っていた時期もあったけれど、今は「完成させずに終われない」から、ずるずると廃業しないだけに過ぎないのです。

ずっと「信念」をもって作品づくりをしてきました。
負け惜しみではなく、「どうやったら売れるか」は、だいたいわかるつもりです。
ハデなもの、わかりやすいもの、煽情的なものをつくる。
弱者、マイノリティ、女性の権利など、流行りのテーマを取り上げるなど。

でも、それをすることで作品の質(内容)を変えたくはない。
いや、「そういうものを前景化させる」「主義主張の旗をふる」力学自体に対して、抵抗してきたところがあります。
(※「そういうものをテーマにすること自体が悪い」とは思いません、そのテーマに必然性があるならば。単に「客よせ」のようにそういうテーマが選ばれ、「支持者を喜ばせるプロパガンダのように、そのテーマが扱われること」に疑問があるだけで。実際、そういうテーマでも、高く評価している作品はいくつもあります。)

わたしは「小さいもの」「誰もが見向きもしないようなもの」「政治的な右とか左とかじゃない生活者の視点(その中にある社会性)」などをテーマにしてきました。

でも、当たり前ですが、そういう地味なものは売れない。

「良いものをつくっていれば、必ず認められる日がくる」、そう思ってやってきましたが、そんなに甘くなかった。
(もちろん、単純に自分の能力が足りないだけかもしれませんが。)

埼玉県深谷市にある、いちもやし屋さんも、グローバリズムの中で、ほんとうに似た、全く一緒と言ってもいいくらいの葛藤の中でもやしを作っている。

【俺の父や俺がなにと闘っているかが明白になる。最大の敵は、まず間違いなくグローバリズムである。
 こちらのほうが儲かります。味がどうとか、そんなポリシーを持っていたって一円(本音は一セント)のトクにもなりません。さっさとこちらのもやしに切り替えてください。やつらはそう言ってきたのである。飯塚商店はそれを拒んだ。その結果、排除された。】

わたしは二項対立的に世界を視ることにも抵抗してきたから、この部分を取り上げるのにも躊躇がありました。でも、ほんと、お金儲けじゃない基準で信念を貫くというのは、まさにこういうことで。

「その苦境から、どうやって脱したか」という成功譚が書かれているわけではないんです。
もちろん、「それで廃業した」では本にならないので、「葛藤を抱えながらなんとか活路を見出そうとしているモガキ」が、そのまま記述されています。「光が見えてくる」ところで、この本は終わっています。

この本の出版から8年。飯塚商店を検索すると、無事にと言っていいのか、今でも営業を続けているようで、こころからホッとしました。

この本を読みながら、何度も泣いてしまいました。
お父さまやお母さまが抱えていた歴史の重層性もすごいですし。
そして、ここに書かれていることが「わがこと」でもあるからです。

「世の中の基準と違う価値観」を貫いて生きようとしている多くの人に読んでほしい本です。

わたしは隣の熊谷市に住んでいるので、なんとか探して飯塚商店のもやしを食べてみようと思っています。

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