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3月展示会ご案内 アキノアキ 個展 『Impermanence』
『その絵に囲まれた時、あなたは何を感じるだろう』
みなさん、こんにちは。
1日1日と暖かさが増し、本格的に春がやって来ましたね。
毎年この時期は服装選びに悩みます。
朝はちょっとヒンヤリだったからと思ってコートを着て外出すると、日中は暖かさを通り越して暑かったりと…
軽やかなカーディガン姿の人もいれば、まだ厚いコートの人もいる、この時期特有の光景ですね。
近所の公園でも、春の花が咲き始めました。
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タネノスでは、3月6日〜28日まで
アキノアキ『Impermanence』展 を開催しています。
Impermanenceとは『万物の無常性』とか『永続するものは何もない』という意味合いです。
タイトルからして、何となく不穏な空気感。
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作者のアキノアキさんは、最近古い建造物に対し執着にも似た興味を抱く様になったと言います。
そして過ぎゆくモノたちを記憶したいと、強く願うようになったそうです。
今まで当然のように存在していた物や場所が、ある日突然姿を消したり姿を変えたり。
近所の突然出没した更地を見て「あれ?ここって何があったけ?」なんて首を捻った経験は、誰もがありますよね。
野鳥の住処だった原っぱに大型のマンションが建ち、子供の頃に通っていた駄菓子屋がコンビニに代わっていたり、誰も住む事のなくなった家や遊ぶ人のいなくなった遊具。
切なくて物悲しくて、なぜか急に愛着を感じたり…
心をざわつかせるのは『終わり』を感じさせるからでしょうか。
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街も人も全ては、破壊と再生を繰り返しながら時は流れて行きます。
形ある物もそうですが、今自分が感じたその『物悲しさ』や『懐かしさ』という自分の中にあるはずの感覚や感情ですら、次の瞬間には時の流れと共に後へと流れ去り、わたしたちは感じた事すら忘れ去っていきます。
アキノアキさんの作品の前に立ち、そんな自分が忘れて来た何かを強烈に意識させられ、首筋がスースーするような心許ない気分にさせられました。
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そして何より目を引くのは、人物たちの周りを漂う不思議な色の帯でしょう。
ゆらゆらと漂う物は、作家の揺れる心情の表れかもしれませんし、目に見えない不確かな時の流れかもしれません。
人物という確かな存在と、何かなのすら分からない不確かな物が混ざり合う世界に、その温度差が返って混沌とした不安定さを感じさせます。
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そんなわたしの感想に対し、他のスタッフの第一声は「色が凄く綺麗だね」でした。
おお、そうなんだね!自分とは異なる感想、頂きましたよ!
そう、色も特徴的。
奇妙に混じり合う緑や紫や青、他の柔らかな色合いですら、夜とも不安とも孤独ともつかない世界に充満し、畝る色の帯は全ては時の流れの彼方へと消えて行く流れの様。
『Impermanence』の名の通り色においても、わたしにはザワザワとした不穏さを感じさせました。
綺麗というより…心をざわつかせる何か。
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アートとは本当にさまざまな要素が合わさって出来上がる物ですね。
作品を見ている人それぞれの見え方・感じ方・解釈の違いがあり、それが作家側の発するメッセージと混ざり合い、1人1人の中に全く違った世界を見せてくれるんのだと、改めて感じる事が出来ました。
みなさんはこの作品たちを目にした時、どんな感想を抱くのでしょうか。
是非、その違いを楽しみに来て頂けると嬉しいです。