【立冬・小雪2024】 Letter from farm
季節が進み、農園では秋を感じさせる花「コスモス」や「スプレーマム」が出荷されている。そして、いよいよパンジー・ビオラの出荷も始まりました。
パンジー・ビオラといえば、秋冬の園芸アイテムとして欠かせない花である。なにしろ他の植物が冬枯れの間でも、彩り鮮やかな花を咲かせてくれる。花色の多さも魅力だ。
秋田緑花農園では、『多摩の星空』というオリジナルのパンジー・ビオラを生産している。花の直径が約2センチと小さく、夜空に輝く星々をイメージして育種をしている。
育種については以前にも触れてきたので説明は割愛するが、『多摩の星空』という極小輪のビオラは、花が小さいために花粉をつける雌蕊(めしべ)も小さく、通常の受粉作業ができない。それが故の苦労話を紹介しようと思う。
10月中旬、出荷前の『多摩の星空』が並ぶハウスで親株を選抜が行う。来年の生産に向けて、種取り用の母株と花粉を取る株を選ぶのである。基準は、花の色や形、株の勢い、そして夜空に輝く星々のイメージを膨らましながら、それに合うものを探しだす。
今年の選抜時の心境としては、落胆に近いものがあった。自分の心を揺さぶるような魅力的な花が見つからない。昨年の交配の意図は、より小さい花を作ることだった。確かに花は小さくなった。しかし、魅力がない。さて、この壁をどう乗り越えるか悩む。
『多摩の星空』は、他のビオラとは異なり、「自然交配」という方法を行う。組み合わせたい母株同士を隣り合わせに置き、あとは風と虫に受粉作業をしてもらうのだ。時には意図せず美しい花が現れることもあれば、期待を裏切られることもある。すべては花と風と虫次第で、なかなか思い通りにはいかない。
秋田緑花農園
Shigeyoshi Akita