生きてたから今がある【③】
ある女の子の物語
新しい町に来てから
心機一転したのだろうか?
ママのお酒の飲み方も
落ち着いているように見えた
新しいお家にはお風呂が付いていて
女の子は姉と一緒に入る
お風呂が大好きだった
お風呂の後はママが作る焼きそばにご飯
とっても美味しくて
『おかわりしてもいい?』
遠慮しながらもやっと言えた一言に
新しく来たお兄ちゃんは
涙ぐみながらこう答えたという
『お腹いっぱいなるまで食べたらいい』
その言葉に女の子も姉も涙を流した
涙しながら食べたあの日の夕飯
涙と一緒に溢れ出したのは
幼いふたりのとびきりの笑顔だった
新しく来たお兄ちゃんは優しいんだ
ママだけじゃなくていいみたい
女の子は嬉しそうに
そうひとりで話していたという
いつも隣にいて
話を聞いてくれていたディアは
もうそこにはいなかった
新しいお家に来るために
大好きだったディアとさよならを
しなければならなかったからだ
女の子は信じていた
大好きなディアも新しい家族と
幸せに暮らしていると…
そして女の子の人生も
幸せという未来を描いていた
果たして本当に
女の子が思い描くように
未来は進んで行くのだろうか?