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「インタビューで話を深めるコツ」


はじめに:なぜ話を深めることが大切なのか?

私は普段、カウンセラーとして人の話を聴く仕事をしています。その経験から感じるのは、人は自分のことを話す機会が意外と少ないということです。特に、自分のアイデンティティや価値観について話すことは、日常の会話ではあまりありません。しかし、それを語ることで、自分自身を再認識し、新たな気づきを得ることができます。

インタビューにおいても同じことが言えます。単なる情報収集にとどまらず、相手が「自分はこういう人間なんだ」と実感できるような時間にすることで、より深い話が引き出せます。では、どのようにすれば、インタビューで話を深められるのでしょうか?私の経験をもとに、具体的なコツをお伝えします。


1. 信頼関係を築く

話が深まるかどうかは、最初の関係づくりで決まります。相手が「この人になら話しても大丈夫」と思えるような雰囲気を作ることが重要です。そのために、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 事前のリサーチをする
    相手がどんな人なのか、どのような経験をしてきたのかを事前に調べておくことで、適切な質問を用意できます。「あなたの〇〇の経験について、ぜひ詳しくお聞きしたいと思っていました」と伝えるだけでも、相手は自分に関心を持ってもらえていると感じ、心を開きやすくなります。

  • リラックスできる環境を作る
    堅苦しい雰囲気ではなく、できるだけリラックスした空気感を作ることが大切です。対面であれば、自然なアイコンタクトや穏やかな表情を意識し、オンラインなら相手のペースに合わせることを意識するとよいでしょう。

  • 最初はライトな話題から
    いきなり核心に迫るのではなく、まずは日常的な話題や相手が話しやすいテーマから入ることで、安心感を持ってもらえます。


2. 質問の仕方を工夫する

話を深めるためには、質問の仕方が重要です。単に「はい・いいえ」で答えられる質問ではなく、相手が自然と考え、自分の想いを語れるような質問を心がけましょう。

  • 「どうして?」を大切にする
    たとえば、相手が「私はこの仕事が好きです」と言ったとき、「なぜそう思うのですか?」と尋ねることで、より深い価値観にたどり着くことができます。

  • 「いつ・どこで・誰と・どんな風に」などの具体的な質問をする
    「そのとき、どんな気持ちでしたか?」「誰かの影響はありましたか?」といった質問を重ねることで、より豊かなストーリーが引き出せます。

  • 「もし〇〇だったら?」と仮定の質問を投げかける
    たとえば、「もし過去に戻れるとしたら、何か変えたいことはありますか?」といった質問は、相手が自分の人生を振り返るきっかけになります。


3. 沈黙を恐れない

話を深めるためには、「沈黙」も重要な要素です。相手が考え込んでいるときに、すぐに別の質問をしてしまうと、本当に語りたいことが出てくる前に流れてしまいます。根幹の大切な話は、すぐに言語化できる人は殆どいません。

  • 沈黙の時間を味方につける
    相手が考え込んでいるときは、焦らず待つことが大切です。相手が自分の言葉を選びながら話す時間を確保することで、より深い話が生まれます。

  • 相づちや表情で「聞いているよ」と伝える
    完全な無反応ではなく、「なるほど」「それは大切なことですね」といった言葉や、頷き、アイコンタクトで「あなたの話をしっかり聞いている」というメッセージを送ることが大切です。


4. 相手の言葉を繰り返して深掘りする

相手の言葉をそのまま繰り返すことで、より深い話を引き出すことができます。

  • 「それはつまり〇〇ということですか?」と確認する
    たとえば、「私はこの経験からすごく大事なことを学びました」と言われたら、「その『大事なこと』とは、具体的にどんなことですか?」と尋ねることで、より詳しい話を引き出せます。

  • 「〇〇という言葉が印象的ですね」と伝える
    相手の言葉を拾って、それに注目すると、相手もさらに話しやすくなります。


5. 聞き手としての姿勢を大切にする

インタビューでは、聞き手の姿勢も話の深まりに影響を与えます。

  • 自分の意見を押し付けない
    「それはこういうことですよね?」と決めつけず、「あなたにとっては、どのように感じましたか?」と相手の視点を大切にすることが重要です。

  • 相手の感情に寄り添う
    相手が過去のつらい経験を語る場面では、「それは大変でしたね」と共感を示すことで、より安心して話せる環境が生まれます。


最後に:相手が「自分のことを話せた」と感じるインタビューを目指す

インタビューで話を深めるコツは、「相手が自分のことを話せた」と実感できる場を作ることです。そのためには、信頼関係を築き、適切な質問をし、沈黙を恐れず、相手の言葉を尊重することが大切です。

インタビューを通して、相手が自分自身について深く考え、新たな気づきを得られるような時間になれば、それは成功といえるでしょう。カウンセラーとしての経験を活かしながら、これからも「話を深める」インタビューを探求していきたいと思います。


臨床心理士・公認心理師をしながら、ビデオグラファーとしてインタビューを軸としたドキュメンタリー映像を制作をしています。WEBサイトにて、これまでの作品集を掲載しています。是非、ご覧ください。

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