【2021年最新】ICTを活用した災害ボランティアセンター運営事例(サイボウズ災害支援)
10月27日、サイボウズ災害支援チームによるオンライン報告会『ICTを活用した災害ボランティアセンターの運営事例』が開催されました。
報告会を主宰したのは、サイボウズ災害支援チームの柴田哲史(しばた・さとし)。東日本大震災以降、数々の災害支援の現場に携わってきました。
(写真=報告を行う柴田)
今年の事例を紹介しながら、災害支援現場に携わる多彩なゲストとトーク。リアルな声をお届けしました。
参加者は114人と、たくさんの方にご関心をお寄せいただいた今回の報告会、さっそくリポートします!
サイボウズが行う災害支援
サイボウズは、災害復旧・復興のために『災害支援ライセンス』を用意し、サイボウズのすべてのクラウドサービスを期間限定で無償提供しています。
災害支援ライセンス|サイボウズ災害支援
https://saigai.cybozu.co.jp/license/
さらに、柴田をはじめとした社内の有志が『災害支援チーム』を結成。被災地でのIT支援や、リモートでの情報収集、アプリ作成、データ入力、サイト制作など、発災後に支援を行う体制が作られています。
また、各自治体や社会福祉協議会の方々とは被災時に迅速な支援を行えるよう平時から連携し、連絡体制の整備や災害時の課題の洗い出しも行われています。全国で発生するさまざまな災害に対してミーティングや実証実験を繰り返しながら向き合ってきました。
今回の報告会では、今年7月から9月に発生した災害において、静岡・佐賀・広島の被災地で実際に活用されたICT事例をお伝えしました。
トークセッションにご参加いただいたのはこちらの皆さんです。
写真=左から右へ 上段から
静岡県社協の松浦さん、広島県社協の松井さん、佐賀県社協の小松さん、
オフィス園崎の園崎さん、合同会社HUGKUMIの長井さん・小島さん。
コロナ禍での災害支援ということで、新型コロナ流行前と大きく勝手が違います。その変化について現場で苦労した点や発見を交えてお話しいただきました。
コロナ禍で変化した支援のあり方
最初にサイボウズの柴田が、コロナ禍での災害支援について6本の動画を用いて紹介しました。
いずれもYouTubeのサイボウズ災害支援チャンネルにて公開しているので、ぜひご覧ください。
サイボウズ災害支援チャンネル|研修動画
①コロナ禍の災害ボランティアセンターの特長
②コロナ禍の災害ボランティア募集
③コロナ禍の災害ボランティア活動予約
④コロナ禍の災害ボランティア当日受付
⑤災害ボランティアセンター ニーズ管理
⑥災害ボランティア活動指示&報告
感染対策が欠かせない上、密集・密閉・密室の“三密”を防ぐ必要があることから、それらをクリアできる仕組みづくりなどがサイボウズのクラウドサービス『kintone』を用いて行われました。
こうした『コロナ禍で生まれたもの』として柴田が特徴的だと挙げたのが、以下の3つです。
これについて、コロナ前と後の災害支援現場を知る園崎さんは、
「特にzoom(ウェブ会議システム)の活用が当たり前になったことが大きい。コロナに関係なく、災害時に朝から晩まで目まぐるしく動いている職員やボランティアがみんなで集まることは難しく、分散している状態。それがウェブ会議によって時間を決めれば会議ができるというのがわかった」
と、大きな手応えを感じていました。
「顔を合わせて打ち合わせているのと近い効果があり、行き違いなどをなくせていて、非常に画期的」と、災害支援を行うメンバー同士のチームワーク向上にも大きな期待を寄せていました。
また、ボランティア参加者への事前登録を導入したことにも、大きな効果があったようです。
コロナ禍では参加者を1日20人に抑えるというのが重要だったため、密を避けるには、人数を調整する必要がありました。事前の予約から参加予定人数を把握することで調整できるようになった上、資材の準備もスムーズに行えるようになりました。
静岡県社協の松浦さんは、発災後のボランティア活動開始時について次のように振り返りました。
「熱海では、なかなかボランティア活動に入れなかったため、Facebookページで“なぜ活動できないのか”を丁寧に発信していました。一方、沼津での活動の方が先に始められるようになったため、ボランティアとして事前登録をしていただいた情報を元に、沼津在住の方に連絡をしてボランティア活動の案内を送ることもできました」と話していました。
状況に応じた活動に、事前予約の仕組みとkintoneでの情報管理が役立っていたようです。
広島県社協の松井さんは、受付時のQRコードの活用について話してくださいました。
「受付でピッと読み取ってもらって、そのままオリエンテーションの席について離れたまま入力してもらえたので、滞留せずにサッとできるようになりました。今までは紙に書いてもらっていた部分が変わって、スムーズになったかなと思います。」
QRコードが一般化しそうか?という柴田の問いに対しては
「広島に関しては、都市部と郡部で若干の差があるかもと感じています。ITに関する温度差によって馴染みが違うかも」と見つけた課題も共有してくださいました。
報告会後半の質疑応答で届いた「平時での備えとしての活用方法などもう少しお聞かせください」という声には、合同会社HUGKUMIの長井さん、小島さんが答えてくださいました。
まず、小島さんが訓練・体験用の画面を共有して説明。
サイボウズ研修動画の流れにそって体験できるように設定されたこちらのアプリ。
「受講者とコミュニケーションを取りながら、体験してもらうことで仕組みに慣れてもらい、それによって、自分たちの街でどのように活用してもらうか考えてもらいたいと思っています」と話していました。
長井さんは、今回紹介した仕組み導入をスムーズに行えるよう、こう呼びかけます。
「今回ご紹介したものがどんなものなのか体験していただけるアプリがあるので、ぜひ経験してみてください。また、平時利用のkintoneの活用を進めていきたいと思っています。社会福祉協議会での平時利用のアプリの開発やご提案もさせていただいているので声をかけてください。」
小島さんは、場所にこだわらず支援ができるクラウドの仕組みが、大きな広がりになることを期待していました。
「遠隔地で支援できる仲間がどんどん増えていって、お互いに支援できる関係がどんどん増えていくといいなと思っています。」
加えて、佐賀県社協の小松さんは、発災当時の様子を振り返りながら
「発災の半月前に長井さんとこの仕組みの導入について市町社協職員と研究会を立ち上げたいと話をしていたところだったので、検証・検討をする前にぶっつけ本番で活用することになってしまいました。そのため最初は、アプリを使いこなすことが中心になってしまい、センター運営が少し混乱してしまった部分もありました。なので平時から活用することでより良い災害ボランティアセンターの運営にもつながると思います」
と、実体験を交えて話してくださいました。
被災者に寄り添う災害支援へ
コロナ禍で生まれたさまざまな災害支援は、密の回避などの感染対策はもちろんのこと、支援に携わる社協の職員やボランティアの負担軽減や、時間短縮にも繋がりました。
これにより、被災者に寄り添う時間が増え、災害支援の原点に立ち返ることができるようになりました。
また遠隔支援が可能になったことで全国的な支援の輪にもさらなる大きな広がりが見えてきました。
さまざまな工夫をこらし生み出された、この支援の形を今後の災害時に全国各地で活用できるよう、サイボウズ災害支援チームは発信し、共有し続けていきます。
サイボウズ災害支援のサイトやYouTubeチャンネル、Facebookページで発信していきますので、ぜひこちらもご覧ください。
サイボウズ災害支援
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